AV新法概論
AV新法の全体像を解説します。
同人AVの制作者向けです。
AV新法の趣旨
AV新法の趣旨は「性に関する自己決定権を守ること」です。
この趣旨を実現するために、AV新法では、
・説明書面を渡し、一般的情報を提供する
・出演契約書を渡し、制作物ごとの情報を提供する
・公表後の影響を踏まえて再度判断できるように、公表後も一定期間解除可能とする
ことが定められています。
AV新法の構成
AV新法を所管するのは内閣府男女共同参画局です。
内閣府男女共同参画局は、AV業界が消滅するならそれでよいと考えています。
この点が、警察庁が所管し、風俗営業の健全化を掲げる風営法との違いです。
内閣府男女共同参画局はAV業界を指導したり監督したりしようとは考えていないので、AV新法には営業停止等の行政的なペナルティはありません。
そのため、AV新法は以下の2種類のルールで構成されています。
①刑事罰なしのルール
②刑事罰ありのルール
「①刑事罰なしのルール」の代表例はいわゆる「1か月4か月ルール」です。「1か月4か月ルール」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
AV新法を理解するためには、「①刑事罰なしのルール」だけではなく、「②刑事罰ありのルール」を把握することが必要です。
刑事罰ありのルール
AV新法で刑事罰の罰則を定めているのは20条、21条、22条の3つです。
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20条は「嘘をつかない、威迫しない、困惑させない」という内容です。
20条違反の法定刑は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科」です。AV新法で一番重い法定刑ですが、この条文で摘発された事例は聞いたことがありません。
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21条が、AV新法で最も重要な条文です。
なぜならAV新法違反で逮捕者が出る事件は、ことごとく21条がらみだからです。
AVに携わる人は、とにかく21条を理解してください。
21条には、2つの内容が書かれています。
1つは、説明書面を渡すこと。
もう1つは、出演契約書を渡すことです。
出演契約書には、正直な内容を記載してください。
例えば、契約当日に撮影して1週間後に販売するのでしたら、そのとおり書きます。
もちろん「1か月4か月ルール」があるのですから、契約から撮影までは1か月開けた方が望ましいですし、撮影後4か月以上経過してから作品を公表した方が良いです。しかし「1か月4か月ルール」違反には刑事罰の制裁がありません。そのため、説明書面と出演契約書を渡すことをまずは優先させるべきです。正確な内容が記載された説明書面と出演契約書を出演者に渡すことは、「性に関する自己決定権を守る」というAV新法の趣旨に合致します。
説明書面と出演契約書の渡し方については、こちらの記事を参考にしてください。説明書面のひな形はこちら、出演契約書のひな形はこちらです。
21条違反の法定刑は「6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科」です。
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22条は、20条違反や21条違反があったときの法人に対する両罰規定を定めています。
まとめ
AV新法で最も重要な条文は21条です。
21条は、説明書面と出演契約書を渡すこと、および違反した場合には刑事罰を科すことを定めたルールです。