私が学んだ取締役の資質について書いてみよう
日本人で取締役候補として指名されて辞退する人はどれくらいいるのだろうか、と考えてきました。
なぜ、このような疑問をもっているかといえば、現在の状況をみるにつけ、自らが取締役に適任だ、と思って取締役に就任しているのだろうか、と思うからです。
また、社外取締役は、どのような姿勢で就任しているのだろうか、という疑問がわきます。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は、30日の記者会見で、損保ジャパンの桜田謙悟会長兼最高経営責任者(CEO)について、「コーポレートガバナンス(企業統治)がしっかりとしていなかったという判断をされたと理解している」と述べています。
桜田氏は昨年4月まで同友会の代表幹事を務め、他社で不祥事が起きた際に、ガバナンスのあり方について指摘していた人物でした。
このようなことをみるたびに、私の疑問は深まるばかりです。
取締役に必要な資質を、私が学んだ範囲で書いてみれば、次のようなものでしょうか。
第一は、他人と議論したりすることが嫌いではないことでしょうか。すぐに怒る人は問題ですが、取締役には意外とこの手のタイプが多い気もします。
短気な人をみてきましたが、まわりの人たちは、結構萎縮していました。
取締役は、他人を説得する能力が必要でしょう。
経営全般のいろいろなことについて、他人と議論しながら、なにか新し
いものを作り上げていくといったことができなければなりません。
また、いろいろな角度から問題点を把握し、その解決策を提示しながら、議論を一つのものにまとめ上げていくことができる人が、取締役には向いているのかもわかりません。
第二に、創造力や問題提起能力が求められそうです。
他人から言われた通りにするのがいいということでは、取締役の仕事に向かないのですが、やはりこのタイプの人も多そうです。
本来、自立した自分、あるいは自我をもち自分で何をやるかを考え、問題を見つけ出し、何かを創造することが求められるのではないでしょうか。
第三は、仕事熱心、勉強熱心、研究熱心であり、リーダーシップを発揮でき、根気のいる仕事も進んでやることができる人でしょうか。
第四は、物事を冷静に分析し、組織の人々を監視・監督する能力です。
不正やトラブルがあったとき、手心を加えて見て見ぬふりをすれば、企業の経営は、かえって傷口を広げていき、より深刻な事態をまねきます。
組織機能の全般的なチェック能力をもっている人といえそうです。
第五に、強い責任感が求められますが、この点では、やはり不正行為が続く現状をみると疑問がつくところでしょう。
自分の担当分野に限らず、幅広い問題意識をもって会社を経営していこうという姿勢が求められます。
理想でしょうか。
第六は、取締役は、当たり前なのですが独立心(独立自尊)をもっていなければ務めるめることはできません。
取締役は再任される保証がありませんし、いざとなったら社長と対立する立場になる職務です。
代表取締役に一切異論が唱えられないのでは、監督義務 (362条2項 )などの職務をまっとうできるはずがありません。
これも私の理想でしょうか。
このように考えてみると、取締役を辞退する人たちが一定程度いる社会のほうが健全ではないでしょうか。