黄色と赤が目立つやつ。
「CDが売れる時代は終わった。」
誰かが言った言葉は、ミリオンセラーが上位に犇めくのが当たり前だった時代を過ごしてきた僕には、信じたくない言葉だった。しかし、その言葉は正しくその通りで、初動の売り上げは2桁も少なくなっている。
オリコンチャートを見るのが好きだった。テレビで、今日は○○年〇月の週間チャートと過去を振り返るコーナーが好きだった。ほとんど耳にしていた曲ばかりだし、なんなら口ずさむこともできるような曲ばかりだった。
「昔は良かった。」だなんて言葉は、自分が年を取ったようで、おじさんになってしまったかのようで好きではないが、あのころは良かった。音楽番組も多かったし、誰もが聞いていた曲が街中に溢れていた。
今はどうか。もちろん素晴らしいアーティストがいるのも、百も承知だ。しかし、オリコンチャートをみても曲が浮かばない。アイドルやジャニーズ、アニソンは否定するつもりは毛頭ないが、特典だらけで、握手券求めて大量購入しているのを目の当たりにすると、どっちがおまけかわからない。
それでもこの売れない時代において、その売れないを売りにしている会社がある。タワーレコードだ。
この時代背景に直面したCDショップは、軒並み閉店に追い込まれたし、当時地方に住んでいて存在も知らなかったが、渋谷のHMVが閉店したニュースの衝撃さは未だに記憶に新しい。
その中でも例外ではなく、タワーレコード(以下タワレコ)も閉店する店舗も増えた。でも、タワレコは今もCDショップとして全国に溢れている。
店内で展開されているCDの宣伝は、店員の手作りだ。手作りには愛があるだなんてことを強要するつもりはないが、ここには愛がある。好きが好きを呼ぶ空間だなといつも思う。大好きなバンドが紹介されていると、つい写真を撮ってしまうし、気になっていたバンドにはつい読み込んでしまう。そういう出会いはインターネットでは、そうそう訪れない。
新譜が出ると、CDショップで手にとって家のコンポで初めて聞く。その瞬間が大好きだった。どんな曲なのか、フルで聞けるのはいつもCDが先行していた。今は、YouTubeでいつでも新曲が聞けるし、サブスクリプションで気軽に聞ける時代になった。実に便利だ。少しでも気になれば、いつでもすぐに聞くことができるし、右側にお勧めしてくるのをクリックすれば自分好みのアーティストに出会えることも増えた。
自分の好きが、見つかる瞬間が増えたのは自分にとってもアーティストにとっても良いことだと思う。知られずに辞めてしまった人も多いだろう、辞めてしまってから評価されても遅い。
だけれど、僕はCDを買う。億万長者だったら、お年玉で100億円配れる余裕があれば、毎回CDを買うことができるが、生憎月に限られたお小遣いで生活している僕にはその余裕はない。それでも、僕はCDを買うのだ。
ショップで展開されているCDをみるのが、好きだ。CDジャケットをみて、何か細工されてはいないかと探るのが好きだ。歌詞カードを見ながら聞くのが、好きだ。
CDには音源だけではなく、ジャケットや歌詞カードなどあらゆる場面でアーティストの拘りが詰まっている。昔CDショップで全く聞いたこともないのでジャケット買いしたバンドがいた。10年以上経った今も、そのバンドが大好きでライブも見に行く。
出会えるのは、インターネットだけではないのだ。古い、めんどくさい、お金がない。否定的な意見が占めるのも、想像できる。それでも、こういった人と人が繋がることができるこの場が好きなのだ。そういう好きを好きでいさせてくれるタワレコが僕は好きだ。
いつだって当たり前だなんてものは、失ってから気が付くことが多い。バンドは、その中でも続けている方が少なく、いつだって新曲が聞ける保障なんてどこにもない。
だからこそ、推しは推せるときに、推せるだけ推そうと思う。
YouTubeでいいねを押すのもいい、Twitterでつぶやくのもいい、サブスクリプションで聞くのもいい、ライブに行くのもいい。そして、CDショップでCDを買うのもいい。