第165回日商簿記検定1級 工業簿記・原価計算 雑感
第165回日商簿記検定1級を受験された皆様、お疲れ様でした。
現在、ネットスクールでは特設サイトにて解答速報や講評動画、解説動画を配信中です。
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特に、試験当日(11月19日)の夕方6時から配信した『解答速報会』では、講師目線での今回の試験の難易度や感想もお話ししていますので、ぜひご覧下さい。
その中でもいろいろとしゃべっていますが、改めてnoteでも、今回の工業簿記・原価計算の問題で感じたこと、思ったことを簡単に書き記しておきたいと思います。
受験された皆さん、これから日商簿記検定1級を受験予定の皆さんにとって、何か1つでもヒントや気づきがあれば、幸いです。
工業簿記
全体的な難易度・感想
今回の試験問題の問題は、長い目で見た平均的な問題のレベルやボリューム感と照らし合わせて考えると、やや易しめといったところでしょうか。
シングル・プランによる勘定記入やロット別(個別)標準原価計算など、標準原価計算の中では手薄になりがちな内容を織り込んだ問題になっていますが、標準原価計算の基礎がしっかりできている人にとっては高得点が狙える問題でした。
細かい話
原料Bが工程の60%点で投入されるため、月初・月末仕掛品の中には原料Bが投入されないものもあります(月初仕掛品のロット119と、月末仕掛品のロット123)。ただ、問1の文章で月初仕掛品のロット119に費やされた原料Bがゼロ円であるというヒントが示されているので、そこに気付いておきたかった問題でした。
問2ではシングル・プランによる勘定記入が問われているため、仕掛品勘定の借方に記入する当月投入標準原価の計算が必要です。ロット別個別原価計算でも、本問のように同一の製品を作っている場合は、生産データを整理しておくと解きやすくなります。
問3の直接材料費・数量差異は原料A・B両方の数量差異を求める必要があります。
問3で計算した差異を合計すると15,000円の借方差異(不利差異)になりますが、これは問4の損益計算書に印刷されている標準原価差異の金額と一致します。ここから、問4の標準原価差異は売上原価に加算すべき借方差異(不利差異)だと判断できます。
④の空欄が2つあって、私も初めて見たときに「??????」となりましたが、答案用紙をよく見ると「適切なものを2つ○で囲むこと」とあって納得しました。答案用紙も問題の一部であるということを、改めて実感させられる問題でした。
試験には関係ないですが、多額の購入原料価格差異を出した購買部の責任者は、このあとどうなるんでしょうね…?心配です。
原価計算
全体的な難易度・感想
今回の試験問題の問題は、長い目で見た平均的な問題のレベルやボリューム感と照らし合わせて考えると、やや易しめといったところでしょうか。
キャッシュ・フローを再投資して終価を求める計算はあまり対策していない方が多いでしょうから難しく感じたかもしれませんが、それ以外の部分は基本に忠実であり、かつ、問題文が計算を誘導していたので易しい問題と言える内容でした。
ただし、問題文が誘導する形式であるために「問題文の指し示すとおりに計算しなければならない」という制約もあり、そこに戸惑ってしまった受験生がどれくらいいらっしゃるのかが気になるところです。
細かい話
キャッシュ・フローの計算で考慮すべき内容が少ないため計算しやすそうに見えますが、現価係数の桁数がやたらと細かいことが気になりました。現在価値を求める際に計算ミスをしてしまったという人がいないことを願うばかりです。
終価係数は初めて出題されましたが、終価係数の存在を知らなくても、「×1.05」で終価(将来価値)の計算ができれば同じ答えになるような資料になっていたのは、受験生への配慮ではないかと見ています。
「再投資せず、金庫にいれておく」という部分は、私も解いていて、最初は戸惑いましたが、冷静に考えれば分かることで、金庫に入れていてもお金は増えないので、各年度に稼いだキャッシュ・フローをそのまま(貨幣の時間価値の説明であるようには増えずに)2027年度末まで持ち越すものと考えることになります。
空欄a~dの用語は語群が無い分、どこまでが許容範囲なのかは正直微妙なところです。話せば長くなりますが、書くともっと長くなりそうなので、気になる方はネットスクールの解説動画をご覧下さい。そちらで説明しています。
試験直後の記憶が残っているうちに、第165回日商簿記日商簿記1級の工業簿記・原価計算の問題を実際に解いてみて、また、解説動画を撮影してみて感じたことや気づいたこと、できれば受験生の皆さんにお伝えしたいことをパパッと書いてみました。
第165回の試験を終え、また次なるステップをお考えの方も多いかと思います。
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