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「機械に強い≒初見の問題に強い」という仮説

「どうしたら、初見の問題に強くなりますか?」

というお悩みを簿記検定や建設業経理検定のWEB講座の講師をやっていると、受講生の方からたくさん頂きますが、正直なことをいえば、なかなか難しい問題です。
「初見の問題」の持つ性質があまりに多種多様であるため、特定のテーマに対する苦手意識、例えば「連結会計が苦手」とか「CVP分析が苦手」というお悩みとはお悩みの方向性が違いすぎて、具体的に「〇〇するといいよ」という説明が見つからない、一筋縄ではいかないお悩みです。

ただ、ある日、ふと私は思いました。

「世の中には、初めて触る機械を難なく使いこなす人とそうでない人がいる。その違いがヒントになるのではないか…?」

自分でいうのも気が引けますが、私はどちらかといえば機械に強いタイプです。
そんな私から見て機械に強いタイプの人とそうでない人を比較したときに気づく特徴が、実は初見の問題に強い人とそうでない人の特徴に近いかもしれないと思いまとめてみたのがこの記事です。

この記事は、あくまでも私個人の考えや仮説にすぎないものでますが、興味がある方はお読み頂けると幸いです。

機械に強い人と弱い人

機械に強い人は、不思議なことに初めて見る機械や世に登場したばかりの機械ですら、案外スラスラと使いこなすものです。

例えば、ある年齢層以上の人(私も含みます)にとってスマートフォンは"大人になってから登場した機械"で、学生時代にコンピューターやプログラミングを学んだ人であっても、スマートフォンそのものの使い方であったり、スマートフォンのアプリやSNSの使い方、スマートフォンを前提とした生活や仕事の仕方というものは、当然ながら誰もしておらず、大人になってから習得していくもので、本来であれば、使いこなせるか否かは平等ともいえるのではないでしょうか。

にも関わらず、なぜか年代に関係なく「スマートフォンを使いこなす人」と「そうでない人」に分かれてしまいます。スマートフォンや新しいアプリも難なく使いこなせる人もいれば、使い方を習得するのに苦戦する方もいます。

「初めて使う機械やアプリのはずなのにスラスラ使いこなせる不思議な人」が周りに1人や2人、いらっしゃらないでしょうか。

なぜそんなことができるのか、機械に強い人とそうでない人にはどんな違いがあるのか…。私なりに考えた結果、いくつかの要素が関係するのではないかという仮説に至りました。

① 説明や表示をよく読むか否か

機械に強い人は、機械や画面に記された説明や文字、マークなどをしっかりとよく読んでいるように思います。
反対に、機械の操作が苦手な人ほど、あまり説明や表示を気にしなかったり、または文字ではなく色や場所でボタンの位置を覚えてしまっているため、違う機械やアプリのバージョンアップで画面配置が変わったりしたときに、「何がどこにあるのか分からない!」となってしまっているのではないかと考えています。

② 説明や表示に登場する語句やマークの意味を知っているか否か

①に関連していますが、説明や表示をよく読んでも、そこに記された単語やマークの意味が分からなければ、当然ながら操作は分からないままになってしまいます。
機械に強い人やプログラミングなどをかじったことがある人は、初めて目にする機械や登場したばかりの機械であっても、事前に意味を理解している単語やマークが多かったり、そこから類推できる幅が広かったりするために、機械の操作に強いのかもしれません。

③ 前後の操作や挙動が推測できる

私自身が学生時代にプログラミングの勉強をかなりの期間やっていたせいか、「どんな入力や操作をする必要があるのか」ということを、自分がユーザーになった場合でも、どうしても考えてしまう傾向にあります。
ただ、そのおかげか、初めて操作する機械やアプリなどでも、「次にこんな入力が求められるのではないか?」や「こんな確認メッセージが出るのではないか?」とある程度推測できてしまうことが多々あります。

もしかしたら、この性質も機械の操作に強いか否かを分けているのかもしれません。

反対に、機械の操作が苦手な人に操作を教える場合、私自身が当然のように推測している次の操作や挙動が予測できていないんだろうな…と気づく場面があるので、案外大切な要素なのかもしれません。

初見の問題を解けるようになるには…

この記事は「機械に強くなろう」という目的のものではなく、簿記検定における初見の問題への対応力に関して考察しようというのが目的です。

ここで、本題に近づいていきましょう。

上の節で挙げた、(私個人の勝手な仮説ですが)機械に強い人の特徴である

  1. 説明や表示をよく読むか否か

  2. 説明や表示に登場する語句やマークの意味を知っているか否か

  3. 前後の操作や挙動が推測できる

という3つの性質は、実は簿記検定の初見の問題が解けるようになる秘訣にもつながっているのではないかというのが、私の仮説の核心です。
順を追って見てみましょう。

① 説明や表示をよく読むか否か

初見の問題が苦手な方からよく聞くコメントが「問題文の言い回しや資料の形が変わると解けなくなる」というものですが、これは、問題文をよく読んだり、資料の見出しなどをよく見たりしていないことの裏返しかもしれません。
なんとなく「この辺にある資料」とか「この単語の後にある数字」みたいな覚え方をしていても、その問題は解けても他の問題で解けなくなってしまうのは、ある意味当然のことと言えます。

機械の操作が苦手な方が、スイッチの色や形・場所だけで操作を覚えているために応用が利かせられないのと同様に、どれだけ問題を解いても、本来は問題によって変わるかもしれない問題文の表現や資料の表面的な部分だけしか見えていないために、初めて見る問題への対応が難しくなっているのではないでしょうか…。

② 説明や表示に登場する語句やマークの意味を知っているか否か

簿記の問題にマークはほとんど出てこないですが、問題文や資料に登場する用語は正しくその意味を理解しておかなければ、問題文や資料の意図を正しく読み取ることもできませんが、問題に解き慣れてしまった方ほど、機械的に解いてしまえるためか、語句の持つ意味などの確認が疎かになってしまうリスクが高くなってしまいます。

いくら問題をよく読もうと思っても、書かれている用語の意味が正しく分かっていないと、当然ながら正しい計算や結論を導き出すのは困難ですから、なんとなく読んでいるけど実はよく分かっていないかもしれない用語の意味も、機を見てきちんと確認するとよいのかもしれません。

③ 前後の操作や挙動が推測できる

機械でいうところの「前後の操作や挙動が推測できる」という要素は、実は私のように検定対策を生業にしている講師と受験生の間の大きな差かもしれません。
初めて見るような問題ですが、実は「講師も初めて見る」というケースが大半だったりもします。つまり、どれだけ過去問や模擬試験を仕事でたくさん見ている講師だったとしても、受験生と同じタイミングで初めて見る問題に遭遇するということは結構あるのです。

ただ、それでも講師は解答速報を作成したり解説したりと、「初めて見るから解けない」なんてことは言っていられません。

では、講師と受験生で何が違うのか…と考えたとき、実は「前後の流れややるべきことを事前にある程度推測できているか」という点ではないかと思い、それが機械の操作が得意かどうかにもつながるのではないかと思ったのです。

初めて見る問題でも、解説を聞いて「あぁ、なんだそういうことか…」という思った経験はないでしょうか。
実はシンプルな計算だったり、きちんと学習している内容だったりするのに、問題文に遭遇したときに解けないというお悩みを頂く方のお話を伺っていると、「まっさらな状態から考えようとしているのではないか」と思うような例が多数あります。

先入観を持たずに問題を読むことは大切ですが、1から組み立てようとすると、ものすごく時間もかかる上に、正解にたどり着くのが困難です。
また、「どんな資料が必要か、どんな条件に注意すべきか」もまっさらな状態から読み取ろうとすると、意外と見落としてしまうリスクが高くなります。

他方、(私だけかもしれませんが)講師目線で解く場合、最初はもちろん、まっさらな気持ちで問題を読み進めますが、ある程度概略が掴めた時点で、今まで解いてきた問題のストックや基本の計算パターンから「近そうな問題」を列挙して、当てはまりそうなものを考えます。その際、その計算で必要な資料や注意すべき事項もあらかじめ頭の中でリストアップしておきます。
その際にリストアップするものは、複雑な本試験レベルの問題ではなく、テキストに紹介されているような、できるだけシンプルなものの方が、実は応用させやすくて便利なものです。

そうやって、ある程度流れを推測することで、答えに早く辿り着ける確率が高くなる上に、事前に流れを想定しているため、資料や指示の見落としも少なくできることが期待できるのですが、これは上述のように、機械の操作に明るい人が機械を操作するときに考えていることに近いのかもしれません。


こんな感じで、ちょっと無理があるかもしれませんが、実は「機械に強い人」と「初見の問題に強い人」には似たような特徴があるのかもしれないというのが私の仮説です。

もちろん反論や不備もあるかもしれませんが、なぜこんなことを書いたのかという理由も最後に書いておきましょう。

「初見の問題に強い人」の真似をしようとしたり、その人の様子を観察したり、話を聞いたりしようと思っても、そんな人は周りにいないことのほうが多いでしょう。
しかし、「機械に強い人」は家庭や職場、友人関係に1人や2人はだいたいいるもので、その人をじっくり観察したり話を聞いたりするのは、「初見の問題に強い人」を見つけるよりも遥かに簡単なはずです。
もしくは、もともと機械に強い自覚がある方は、自分が初めて触る機械の操作を考えることをイメージできれば、自ずと初見の問題へのアプローチも身についてくるかもしれません。

こんな風に、試験勉強だからと特別なことのように考えすぎず、身近に試験対策のヒントになりそうな人を別の角度から見つけることが、試験対策の突破口になるかもしれないと考えると、「機械に強い人」に注目するのは、案外現実的ではないかと思います。
唐突にこんな仮説を作ったには、そんな背景もあります。

この記事を読んで「確かにそうかも…」と思った方は、身近にいる機械の操作が得意な人を観察してみるのも、試験対策のヒント出会えるチャンスかもしれません。


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