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建設業経理士1級の論述問題対策『浦島太郎学習法』について


建設業経理士1級を受験される方にとって、おそらく最大の難関になっていると思われるのが、3科目通じて第1問で必ず出題される論述問題ではないでしょうか。

建設業経理士2級の試験で出題されない形式であるほか、日商簿記や全経簿記の試験でもあまり出題されない形式であり、手書きの文章を書くという経験自体が久しぶりという方も多いことから、何から手を付けていいのか、どうやって対策すれば良いのかということが分からないという質問やご相談をたくさんいただきます。

そんな方々に向けて、WEB講座の無料説明会で私が毎回のように提唱しているのが、タイトルにも書いた『浦島太郎学習法』です。

建設業経理士試験の論述問題と浦島太郎との間に何の関係があるのか、さっぱり分からないと思いますが、やってはいけない学習法とともに、論述問題の趣旨と浦島太郎学習法の真意についてまとめてみたいと思います。


やってはいけない勉強法

特に独学の方で多いようですが、最もやってはいけない勉強法は「模範解答の丸暗記」です。

通常、大人になればなるほど学生の頃のような丸暗記は苦手になっていく代わりに、意味や背景、周辺情報などと結び付けながら覚えていく暗記は逆に得意になっていくと言われていますが、「模範解答をとりあえず覚えておこう」という方法は、社会人の方が多い試験の受験生の大半にとって、苦手なやり方で乗り切ろうとする悪い勉強法と言えます。

ですから、「記憶力に自信がない」という方は、暗記のみに頼る対策は論述問題に限らず避けた方がベターです。

とはいえ、中には「1度見たものは絶対に忘れない」というくらい記憶力に並々ならぬ自信がある方もいらっしゃるかもしれません。そういう方は、論述問題以外は意外と暗記で乗り越えられるかもしれませんが、論述問題だけはそうもいきません。

なぜなら問題、つまり問いかけは必ずしも1パターンという訳ではないからです。

論述問題は、いわば「コミュニケーションのテスト」です。
公式に公開されているものではありませんが、特に中小の建設会社は経理などの事務方から社長を輩出する訳でもないところが多く、また、教育制度も大手企業のようにしっかりしていないことも多いため、会計に関する社長からの疑問や新人教育を1級合格者に担って欲しいという想いが、この試験の論述問題に託されていると私は考えています。

必ずしも1パターンとは限らない社長や新人の疑問に対し、丸暗記の模範解答で返答してもコミュニケーションは成立しません。

そういった観点を踏まえて、実際の採点も「模範解答に近い表現をしているか」よりも「問いかけに対するコミュニケーションとして適切か」ということが重視されているのではないかと考えています。

例えば、「部門別計算における直接配賦法の短所」に関する問題の模範解答を覚えていても、実際の試験の問題が「部門別計算における直接配賦法の長所」であったり、「部門別計算における直接配賦法と階梯式配賦法の相違」であったりした場合、覚えていた短所を説明する模範解答をそのまま書いても、問いかけに対する答えとして不適当ですから、実はあまり点数がもらえないのではないかと思います。

それよりは、模範解答のような堅く、格式ばった表現でなくても、問いかけに対して自分の言葉で真摯に答えようとする解答の方が、おそらくもらえる得点も増えるのではないでしょうか。

丸暗記していなくても話せる昔話をヒントに

ただ、自分の言葉で解答するといっても、いきなり簡単にできるという人は少なく、やっぱり丸暗記していたものを書いた方が気が楽という人が多いのではないでしょうか。

ただ、一度試験から離れて考えてみると、別に丸暗記していなくてもある程度自分で言葉を組み立てて話せる(説明できる)ものがあるはずです。
その代表例が昔話で、その昔話の中から浦島太郎をピックアップして、タイトルにもある『浦島太郎学習法』というのを提唱しています。

浦島太郎の物語はほとんどの方がご存知ではないでしょうか。
また、その導入部分は童謡の『浦島太郎』の歌詞で覚えている方も多いかもしれません。

むかしむかし浦島は
助けた亀に連れられて
龍宮城へ来て見れば
絵にもかけない美しさ

童謡『浦島太郎』1番(作詞・作曲 不詳)

ただ、この童謡『浦島太郎』も2番以降はあまり知られていないでしょうし、『浦島太郎』の絵本を丸暗記したという方もほとんどいないでしょう。

ですが、「浦島太郎の物語について説明して下さい」と言えば、ほとんどの方がそれぞれの表現で話せるのではないかと思います。

おおよそ以下のようなストーリーを上手く自分なりに組み合わせて、最終的な物語の結末まで説明できるかと思います。

  1. 浦島太郎が浜辺で亀を助ける

  2. 助けた亀がお礼に浦島太郎を竜宮城に連れていく

  3. 竜宮城では乙姫たちが浦島太郎をもてなす

  4. 浦島太郎が元の場所に帰る際、乙姫から玉手箱を渡される

  5. 乙姫は「この玉手箱は絶対に開けてはならない」と説明する

  6. しかし浦島太郎は玉手箱を開けてしまい、中から出てきた煙でお爺さんになってしまう。

細かい表現などは覚えていなくても、ストーリの大枠、つまり概要が分かっていれば、意外と自分の言葉でも説明できることは浦島太郎で体験できるはずで、これと同じようなことを建設業経理士1級の内容でもできるようになれば、論述問題は恐れる必要はないはずなのです。

しかも、このように話を組み立てる練習をしておけば、どんな内容が問われても、意外とどうにかなるものです。

例えば、以下のような浦島太郎に関する問題が問われても、(文体を気にしなければ)おそらく正解できるはずですし、頭から物語を思い出さなくても、必要な部分だけを考えて答えることができるはずです。

  • どうして亀は浦島太郎を竜宮城に連れて行ったのでしょうか?

  • 乙姫は玉手箱を浦島太郎に手渡すとき、どんな注意をしたのでしょうか?

しかも、こうして概要から「自分だったらどう説明するか、どう伝えるか」を考えるだけであれば、筆記用具なども必要なく、ちょっとした空き時間や移動時間にも簡単にできます。
このような言葉を操る経験値が論述問題の対策には不可欠なので、何をやっていいか迷っている方は、ぜひお試しください。

『浦島太郎学習法』の注意点

まったく暗記しなくてよいという訳ではない

ただし、「丸暗記は意味がない」とはいっても、「全く何も覚えなくていい」という訳ではなく、最低限の(専門)用語などは覚えておきましょう。

浦島太郎でも、さすがに浦島太郎(これを間違える人はいないでしょうけど)や乙姫玉手箱といった語句を忘れてしまうと、ストーリーの説明として不十分な感じが否めません。

また、「タイやヒラメの舞い踊り」のタイやヒラメは物語にそれほど重要でもないでしょうから、忘れてしまったり、他の魚の名前を代用しても違和感が無いはずですが、が物語のカギになることは押さえておく必要があるように、絶対に落としてはならないキーワードは必ずあるものです。

そういうものは、テキストで色文字・太文字になっていることも多いものなので、必ず押さえておくようにしましょう。

最初はテキストなどを見ながらでもOK

いきなり論述問題の模範解答のようなことを考えるのはハードルが高いですし、そもそもきちんと覚えていなかったり、勘違いしていたりしたままでは、適切な説明を考えることができないはずです。

ですから、自信が無かったり、記憶があやふやだったりするうちは、テキスト等を見ながらでも構いませんので、書いてある説明や計算例の手順などを自分の言葉で説明してみると良いでしょう。

試験勉強といえば、テキストなどを見ずに問題を解くというイメージが先行しがちですが、論述問題の対策の第一歩で本当に大切なのは、覚えているかどうかではありませんので、むしろ少しハードルを下げた状態でも良いので、言葉を操る経験値を早いうちから積めるようにしていきましょう。

スキマ時間を有効活用する(=スキマ時間以外ではやらない)

前述のとおり、この学習法は筆記用具や電卓を使わないので場所を選ばないですし、ちょっと考えてみる程度であれば、短い時間でも実行することができるので、いわゆる移動中や外出先だったり、お仕事などで忙しい日に少しだけ勉強するスキマ時間を有効活用する方法として非常に有意義です。

むしろ、スキマ時間でできることと言えばこれくらいなので、自宅などでじっくり腰を据えて勉強できるタイミングでは、浦島太郎学習法でご紹介したものではなく、そのタイミングでしかできない計算問題の練習などに時間を費やしましょう。


学生のとき以来に試験問題で文章を書くという経験をされる方も多いのが、この試験だと思います。

手書きである点はパソコンなどを多用する昨今を考えると非常に異質ですが、説明すること自体は、実は日常的によくやってきているはずです。

その経験を上手く活用して、とにかく適切なコミュニケーションを心がければ、建設業経理士1級試験の論述問題は過度に恐れる必要はありませんので、決して捨て問題とはせずに、部分点を稼げるようにしてください。


なお、私が講師を務めるネットスクールの建設業経理士WEB講座では、上記のようなことを踏まえて、もっと具体的な論述問題の書き方を解説したり、添削サービスを提供したりしています。

興味がある方は、ぜひWEB講座もご検討ください。
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