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第211回全経簿記上級 工業簿記・原価計算 雑感

第211回全経簿記上級試験を受験された皆様、お疲れ様でした。
現在、ネットスクールでは特設サイトにて解答速報や講評動画、解説動画を配信中です。

その中でもいろいろとしゃべっていますが、先日の日商簿記1級と同様に、改めてnoteでも、今回の工業簿記・原価計算の問題で感じたこと、思ったことを簡単に書き記しておきたいと思います。
何かヒントになるものでもあれば幸いです。

工業簿記

問題1

問題1は等級別総合原価計算と、総合原価計算における正常減損・異常減損の処理が問われた問題でした。

実際のところ、等級別総合原価計算までしっかり対策できている方、特に本問で問われている(ネットスクールでいうところの)第3法の考え方による処理を完璧にしていたという方は、それほど多くないのではないかと見ています。

しかも、本問は等級別総合原価計算の第3法の処理が分からないと、部分点すらままならない問題であったため、問題1は解けた受験生とそうでない受験生との間で、大きな差が生まれたのではないかと予想しています。

計算方法が分かって解けると思った方は解いておきたいですし、そうでない方は、早めに見切りをつけて、ひとまず別の問題で高得点を狙うような戦略に切り替えた方が、全体の得点は高くなったのではないでしょうか。

ただし、問5の記述式の問題は等級別総合原価計算の計算方法とは関係なく解答できる内容であったため、部分点狙いで何かしら書いておきたい問題でした。

問題2

問題2は個別原価計算を中心に、基準操業度の算定、高低点法による原価の固変分解、個別原価計算における正常仕損の処理、作業くずの処理、製造間接費配賦差異の分析など、様々な内容が組み合わされた問題が出題されました。

受験生によって見慣れた内容か否かが分かれるため、それによって出来栄えにも差は生まれるかと思いますが、全体を通じて計算そのものはそれほど難しいものではないため、(特に問題1の自信が無かった方は)多少時間を掛けてでも問題2で高得点を狙いたい問題と言えるでしょう。

なお、No.2の正常仕損の処理に戸惑った方もいらっしゃるかもしれませんが、解答用紙の原価計算表の〔  〕、つまり金額を記入すべき欄の指定を見ると、No.2で仕損品の売却額(仕損売却益)を記入するようになっていることから、No.2で正常仕損費を計算し、その金額をNo.2-2に振り替えるのだと判断することになります。

また、問5のような製造間接費の勘定記入が問われた場合、差異の記入を貸借間違える方が少なくないので、冷静に仕訳と転記の関係性を考えながら記入する必要がありました。

問6の記述問題はしっかりとした答案を作るのが難しかったと思いますので、ある程度は部分点狙いのような記述になっても致し方ない問題だったかと見ています。

原価計算

問題1

問題1は直接原価計算を前提にした予算実績差異分析が問われました。
問1の解答用紙にある予算・実績差異分析総括表を見ると、売上高差異を2つの差異(価格面の差異と数量面の差異)に分解していることが分かるため、ここから本問の差異分析が総額分析(項目別分析)によっていることを判断する必要がありました。

そこさえ間違わなければ、計算そのものはそれほど難しいものではないため、できる限りの高得点を狙いたい問題です。

ただし、問2の問題文にある「作業効率が悪かったことに起因する差異」の「作業効率」が何を意味するのか、その判断は難しかったかと思います(実際、私も非常に悩みました)。

作業時間のことのみを指すようにも思えますし、広く考えれば「材料を効率よく使えるか」も作業効率の一種と考えれば、材料の消費量も「作業効率が悪かったことに起因する差異」と見ることができるはずです。
解答速報では材料の消費量差異も含まれるものとして計算をしていますが、この辺りは問題文の表現が判然としない印象もあるように見えます。

問題2

問題2は設備投資の意思決定に関する内容が出題されました。

問1で税引後利益が問われているため、問2で求める年々のキャッシュ・フローは「税引後利益+減価償却費」で計算すると効率的に解答できました。

問4は少し考えさせられる問題であり、戸惑った方もいらっしゃるかもしれませんが、それ以外は基本的な計算が多いので、この問題もできる限り高得点を狙っていきたい問題でした。
(割引計算があると細かい数字の計算が多くなるので、時間が許す限り慎重に計算したいところです。)

問題3

問題3はミニ・プロフィットセンター制に関する文章の空欄補充問題です。

この内容をしっかり学習していたという受験生はかなり少ないと思われるため、解けなかったという受験生も多いと思いますが、おそらくこの問題で合否を大きく分けるといった可能性は低いものと思われます。

ただ、空欄EやHのように前後の文脈である程度推測でき、かつ、これといった専門用語ではないため、他の言葉に置き換えることもできる空欄もありましたので、こういうところはダメ元でもいいので、埋めておきたいものです。

なお、2行目に「権限」が普通に書かれているのに、空欄Eも「権限」が入る文章となっていて、その点は非常に不思議な問題でした。


現在、7月11日(火)に配信した中村先生と熊取谷(ひしや)先生による全経簿記上級受験者のための日商簿記1級&税理士WEB講座無料説明会のアーカイブ配信も行っています。

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