問題が解けないときにやって欲しくないこととやって欲しいこと
私が講座を担当する日商簿記1級や建設業経理士1級は、試験範囲が広い上に問題自体も一筋縄でいかない問題も多く、多くの受験生が苦戦しながらも勉強を続けているかと思います。
その試験勉強の過程で、テキストに準拠した問題集や過去問題、模擬試験などを解く機会は山のようにあるはずですが、3級や2級のときと異なり、思うように解けない、解けたと思ったら間違えていたという場合が格段に増えて、その度に思い悩む受験生も多いのではないでしょうか。
そんな「問題が思うように解けない」というご相談もたくさん頂くのですが、お話を伺っていると、問題が思うように解けないときにやって欲しいのに、多くの受験生が実はやっていないのではないかと思う"ある行動”があります。
そんな"ある行動"について、簡単に書き記して起きたいと思います。
ちなみに、この記事の内容は、私が講義を担当する簿記や建設業経理士を前提にしています。なぜなら、それらが「計算や思考を伴う試験問題」だからです。
日本史の人名や英語における単語などの勉強など「単純な知識を問う問題」にはあまり当てはまらないと思っていますので、あらかじめご理解ください。
絶対にやって欲しくないこと
やって欲しいことを書く前に、その対比として重要な"絶対にやって欲しくないこと"を先に示しておきます。
それは「解答・解説を見ること」です。
正確に言えば、「解けないと思ったときに、即、解答・解説を見ること」です。
意外とこの行動を取ってしまう方が多い印象がありますが、実は簿記や建設業経理士の勉強においては、良い行動ではありません。
簿記や建設業経理士、特に私が講座を担当する1級のように上位級の試験になると、単なる知識を問う問題が少なくなります。
その代わりに、問題文や資料を適切に読み取り、状況に合わせて処理を行ったり、計算をしたりという思考力を問うタイプの問題が増えます。
こうした思考力を問う問題も、もちろん前提となる知識や計算方法は覚えて置かなければなりませんが、単に「覚えて終わり」ではなく「覚えた知識をどのように使うのか」というところがポイントになります。
このような「覚えた知識をどのように使うのか」を問われる試験勉強において、問題を解いたときに分からないからといって、いきなり解答・解説を見てしまうのは悪手となってしまいがちです。
なぜなら、解答・解説を見た瞬間に「覚えた知識をどのように使うのか」というプロセスをすっ飛ばして「その問題の答えや解くための手順を手っ取り早く覚えてしまおう」と考えてしまう心理が働いてしまうためです。
それ自体も決して悪いことではないのですが、ある問題の解き方だけを覚えても、どうしてその解き方になるのかが分からないままでは、別の問題に挑んだ瞬間に「あまり使えない記憶」となってしまいがちです。
「初めて見る問題になると解けなくなってしまう」というお悩みもご相談でよく頂くのですが、お話を伺っているとこのような状況になってしまっているのではないかと思われるケースが多々あります。
もちろん、これからお教えする「絶対にやって欲しいこと」をやってもなお解けないときは解答・解説を見るしかないのですが、いきなり解答・解説を見るということは、できる限り避けて頂きたいというのが本音です。
絶対にやって欲しいこと
では、本題の絶対にやって欲しいことは何かというと、問題が解けないなと思ったときに「テキストや講義資料を見ながら解いてみる」ということです。
学習相談などで、「問題が解けないときは、テキストを見ながら解いてもいいですよ」というと驚かれる事が多いのですが、これは多くの受験生が「問題は何も見ずに解くもの」と思っているからかもしれませんが、少なくとも簿記や建設業経理士の試験勉強では、この思い込みは捨ててしまいましょう。
前述のとおり、簿記や建設業経理士の学習は「覚えた知識をどのように使うのか」という力を身につけていくという性質が強いものです。
そのため、この学習において"問題を解く"という行為は、「ある知識を覚えているか」ということの確認のほかに、「知識を正しく使えるか」ということを実践を通じて習得したり、それが可能かを確認するという2面性があります。
この2面のどちらか1つが欠けてしまえば問題は解けないものなのですが、多くの受験生はその原因を「覚えていないから」だと決めつけてしまいがちです。
ですが、仮にある知識を覚えていても、正しく使えなければ解けないのが簿記や建設業経理士の試験ですから、「知識を正しく使えるか」という点も問題演習を通じて確認していくべきです。
その際、もし本当に知識が正しく使えるのであれば、テキストなどを見ながらであれば正解を導き出せるはずですし、もしそれで導き出せるのであれば、後は「忘れずに覚えておこう」ということだけに注力してしまえばよいのです。
逆にテキストを見ても分からないものは、このまま無理に押し通そうとしても、理解できていないので、結局記憶に残らない可能性が高いので、意を決してテキストなどを読み直すなど、1段階戻る学習をしたほうがよいと判断できるでしょう。
また、テキストを見ても分からない・解けないからということで解説を見たとしても、ただ解説を見るのではなく、テキストで学んだ(はずの)知識との関連性を意識しながら解説を読むことができるはずなので、その分、理解に繋がるはずです。
いずれにしても、"知識を使う練習"も問題演習の目的の1つだと認識すれば、より中身の濃い学習ができるはずですから、問題が解けなくて悩んでいる方は、是非実践してみてください。
補足
なお、このような勉強の仕方は時間がかかります。
ただ、時間がかかるからと言って避けたとしても、その先の学習で行き詰まる可能性が高くなるだけなので、早めに苦労の目を摘むためのものと考えた方がよいでしょう。
また、問題を速く解くことを最初から意識しすぎる方もいらっしゃり、そういう方は「テキストを見ながら解く」ということに対して違和感を覚えるかもしれません。
いずれは速く解ける必要はあるかもしれませんが、まずは問題が解けること(正しい答えが導けること)があって、はじめて解くスピードを意識しないと意味がないということは、誤解しないようにしましょう。
フルマラソンの42.195kmを走り切る体力がないのにタイムだけ気にしても、あまり意味はなく、まずは42.195kmを完走できるようにしてから、はじめてタイムを意識する必要があるのに似ているかもしれません。
あくまでも個人的な考えですが、参考になれば幸いです。
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