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第217回全経簿記上級 原価計算・管理会計 雑感
第217回全経簿記上級試験を受験された皆様、お疲れ様でした。
現在、ネットスクールでは特設サイトにて解答速報や講評動画、解説動画を配信中です。
https://www.net-school.co.jp/event/zenk/kaitou/
また、試験当日の夜に収録・公開した解説動画でもいろいろとしゃべっていますが、改めてnoteでも、今回の原価計算・管理会計の問題で感じたこと、思ったことを簡単に書き記しておきたいと思います。何かヒントになるものでもあれば幸いです。
原価計算
※YouTubeで配信している解説動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=v-jHKX0aO7w
問題1
問題1は等級別総合原価計算に関する問題でした。
この問題は第199回の(当時の)工業簿記で出題された内容にかなり似ており、過去問題集を対策に取り入れていた方にとっては、それほど苦労せずに解答できたのではないでしょうか。
本問は組別総合原価計算に近い方法(第2法)でしたので、比較的解きやすいパターンと言えるでしょう。
比較的素直な問題ではありますが、3種類の等級製品があるため、計算量はそこそこ多く、また、問1で問われている当月製造費用の按分でミスをすると、連鎖的にすべての計算結果が違ってしまうため、焦りは禁物です。
相対的に見ると、この原価計算の第1問が最も得点しやすい問題といえたでしょうから、受験戦略的に考えて、この問題を優先的に、かつ、きちんと時間を確保して焦らずに解答しておきたい問題と言えたと思います。
なお、解説動画でもお話していますが、問5の記述はどんな内容を書くのかなかなか悩ましいところです。
ただ、「本問の計算を踏まえて」といった表現もなく、また、敢えて"正常"の文字を入れずに「減損費」とだけ書いていることから、解答速報では異常減損費・正常減損費の処理方法に関する一般的な取り扱いを記しています。
問題2
問題2は直接原価計算と固定費調整に関する問題でした。
固定費調整に関する仕訳が問われてびっくりした方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは第205回の(当時の)工業簿記で出題された内容とほとんど同じでした。
そのため、こちらについても過去問題を対策に取り入れていた方は、その時の記憶を呼び起こしながら解けたのではないでしょうか。
詳しい解き方や考え方は、上述の解説動画でお話していますが、仮に仕訳ができなくても、固定費調整の知識があれば、問4で問われている全部原価計算の営業利益を答えることはできましたので、仮に問2・3の仕訳ができなくても、落ち着いて問4の問題は解答しておきたいところです。
管理会計(前回までの原価計算)
※YouTubeで配信している解説動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=JSITuIb2WUE
問題1
問題1はCVP分析と事業部制に関する内容を組み合わせた問題でした。
計算していて端数が出て焦ってしまったかもしれませんが、端数が出る問題でした
ただし、問題文の指示で端数処理に関して「切り上げ」とありますから、きちんと切り上げ処理をする必要があります。
四捨五入や切り捨てをしてしまった方は、いらっしゃらないでしょうか…。
本問のように、明確に指示がある場合、端数処理の誤りによる間違いは✕になると思いますから、今後、同じようなミスはしないように気をつけましょう。
問3・問4は事業部の廃止に関する意思決定についての問題です。
よく見かける、廃止した事業部の個別固定費が全額回避可能になる訳ではなく、事業部を廃止したとしても、個別固定費の一部がそのまま発生し続けるというそんな問題でした。
注意深く考える必要がありますが、どちらかというと、今回の問題のようなケースのほうが実務的かもしれません。
個別固定費の中には、その事業部の従業員の給料なども含まれているでしょうから、「事業部を廃止したら個別固定費が0円になる」というのは、今まで働いていた従業員を全員残らず解雇していることが前提になります。
そのような大規模な人員整理はなかなか現実的ではないですから、配置換え等で雇用し続けるのであれば、その分の固定費は(会社のどこかで)発生し続けるという本問のような仮定の方が、もしかしたら現実的でしょう。そうした意図があっての設問だったのかもしれません。
問5の理論問題は、事業部長の評価をするのに管理可能性を考慮していないことに気づけたかどうかがポイントです。
問題2
問題2は仕損の計算とマテリアルフローコスト会計に関する内容が出題されました。
前回に引き続いてのマテリアルフローコスト会計に関連する出題で、かつ、前回は基本的な用語の空欄補充問題だったのに対し、今回はがっつりとした計算問題が出題されました。
今回の問題に関しては、なかなか問題文の解釈で悩ましいところが多く、解答作成にも苦労をしており、その苦労についても解説動画の中でお話していますので、よろしければぜひご覧ください。
ただ、前回の出題の趣旨で
問題3は,マテリアルフローコスト会計に関する問題である。これは,比較的新しい管理会計の論点であり,最近注目されている論点である。そこで本問では,テキストで説明される範囲でこの論点を問うている。
とあるように、前回が公式テキストを見れば解ける程度のレベルにしていたのに対し、今回の試験は公式テキストを見ても解答が難しいレベルまで一気に上がっており、ほとんどの受験生にとって手応えのない問題となったのではないでしょうか。
数ある上級の出題内容の中で、これだけを2回続けて出題するというのも、なかなか突飛なことだと思いますし、そもそも全経協会が公表している出題区分表を見ても、マテリアルフローコスト会計が出ると読み取るのはかなり困難で、出題されているのが、「出題範囲にあるから」ではなく「公式テキストに載っているから」という側面が強いため、今後の試験対策で重視すべきかどうかと言われたら、個人的にはかなり疑問に感じています。
※マテリアルフローコスト会計そのものの重要性が低いという訳ではなく、あくまでも「試験対策として」の話である点は誤解なさらないようにしてください。
ですから、もし今後の受験をお考えの方は、そこまでガッツリと対策をしなくてもよいのではないかと思います(少なくとも、もっと他に対策すべきものがあるはずです)。
問題3
問題3は、原価企画に関する正誤判定問題でした。
形式的には財務会計の問題1と同じで、文章を読んで正しい内容であれば◯を、誤っていれば✕を記入するとともに、その理由を記入する問題でした。
なかなか見慣れない表現だったり、かなり細かい内容まで踏み込んだものもがあったりということで、戸惑った受験生も多いと思いますが、よく読むと、①と②は基本的な内容で解答が可能な内容でした。
また、③の文章も説明の内容が「製品別」の原価改善なのか、「期別」の原価改善なのかという2択で考えたときに違和感のある内容でしたので、その辺から(記述は厳しくても)◯✕の判断はできたのかもしれません。
なかなか難しいかもしれませんが、1点でも多く得点しようと思ったとき、このような思考が必要になる場面は今回の問題に限らず、これからもしばしば訪れるものとお考えください。
という訳で、試験からなるべく時間を空けずに、私自身が解答速報の作成や解説動画の収録のために問題を解いた感想や感じたことを文字に記してみました。
もしかしたら間違いがあったり、単純な個人的な思いに過ぎないものもあったりするかもしれませんが、なかなか感想を共有できる人がいないのも、上級試験の大変なところだと思いますから、「あぁ、やっぱりこういう風に思うものなんだ」といった感覚が共有できればなによりです。
なお、このあとに税理士試験や日商簿記1級試験を控えている、または今後目指したいという方もいらっしゃるかもしれません。
そういう方は、今回の試験を踏まえて、次のステップに向けて1歩踏み出していただければと思います。
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