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天道蟲

朝起きたら身体中に天道虫が這っていて、ぼくはそれを一匹ずつ手に取り床に放り投げる。床には放り投げられた虫がうじゃうじゃと、それこそ絨毯にまかれたスパンコールみたいに煌めいているので、ぼくは吐き気を通し越して無心になる。震えがする。いや、死んでるかも。

虫の身体は暗いところで光るような発光体で、明かりのついた部屋でも薄黄みどりの発光色、薄い水色を混ぜたような蛍光ペンみたいに、きらきらと輝くので、気持ち悪いのに美しい。

自分の顔を毎朝鏡で見て、醜いなと嘲り笑って悲しくなる。元々持っているデフォルトの設定なら、良くも悪くもない、なにも感じない素材にしてほしかった。

朝駅で通り過ぎる造形美の豊かな女性は、にこやかに微笑むだけで元気になれるけれど、ぼくの笑顔は作り笑いで醜くて見てられない。眉は太いし鼻は変に高いけど頰はこけて最近肌も荒れてるし、髭は人類から無くしてほしいし顎も小さくしてほしい。ドラえもんのレーザー。

こだわりのある美しいもの、自分がそんなものであれば良かった、自傷行為みたいに手首の傷を増やすみたいに、心に刺していく言葉の棘、抜けずに残った痛みみたいな、茨、イバら。

落ち込んでいる理由は、暗い理由は、自分に自信が、いやそんな言葉ではない、自分の価値が、いま乗っている城が、拠点が、居場所が、つまり自分自身の見た世界に、

相対しているこの視点が、自らを美しくないと認めて、それを持って、それを抱えてもまだ生きていけるかと自分に問うた時に、

やってられないと投げ捨てるような、そんな自暴と自棄を抱えている。

自分のことばかりだけれど、拠点がまともでもないのに、あなたのことは構えない。かまってあげられないし、かまって差し上げることもできません。まずこの瞳に生気が宿りません。


まだ書けそうな気がするけれど、
長くなりそうだからやめておく。
写真は無料素材の参考資料です。
読むときの手助けになれば。

またね。

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