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「訪問看護師とポリファーマシー」


1、訪問看護ってなんだ?
訪問看護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者のご自宅に赴き、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行います。(点滴、清潔援助、リハビリ、排泄介助など)利用者さんの薬については、「医師の指示通りに内服できているか」、「お薬を服用した結果、どの様な影響を与えているか」を診ています。
訪問看護で伺った際に、「気持ち悪い」、「ふらつく」、「めまい」などを訴える方に出会います。元々お持ちの病気の症状か、それともお薬の副作用なのか、判断しかねることがあります。
また、「なんでこの薬を飲んでいるかわからない」と言い、沢山の薬を服用されている方に出会います。
「お薬の副作用が強く現れている状態」、「本人がお薬の利点を感じず、漫然と使用している状態」を「ポリファーマシーの問題」と考えます。

2、お薬の良いこと。悪いこと。
医師は生活習慣、遺伝要因などにより発症する病気の方(高血圧、高血糖、骨折や関節痛など、がんなど)に対して、病気の改善や健康寿命を維持・向上するために、薬剤を使用し自身の体調を良い方向へ管理していくことを求められます。また、重症な病気を発症すると、さらに多くの薬剤を使用することになります。

ヒトに投与された薬は肝臓や腎臓で分解・排泄されて体の外に出ていきます。薬の種類が多くなると、内臓に負担をかける(肝機能障害、腎機能障害を起こす)ことがあります。また、これらの臓器は加齢と共に機能が低下するため、同じ薬を続けていても薬の分解や排泄が遅くなり、次第に効きすぎてしまうことも考えられます。「入院中で6種類以上の薬を服用している患者さんでは、5種類以下の患者さんと比べて薬の副作用が起きやすい。転びやすくなる」などの研究報告もあるので、「薬が増えること」が「デメリットが増えること」につながることも否定できません。
 しかし、注意していただきたいのは、多くの種類の薬を必要とするケースもあります。一種類の薬で効果不十分な場合には、異なる効き方をする薬を組み合わせた方が良いとされており、メリットがデメリットを上回ることも多いです。

3、訪問看護利用者さんの抱える本質的な課題
『お薬の種類、内容を把握していない』方。もちろん、信頼する主治医が処方する薬を指示通りに飲むことはとても大切です。が、ご自身のお身体を整える、使用する薬の必要性を再認識してみましょう。まずは利用者ご自身で主治医に「お薬の必要性を尋ねる」ことをお勧めしています。訪問看護師は使用する薬の意図を一緒に確認します。そこで、「なんでこの薬剤が使われてるのだろう」と利用者本人が関心を持ち、お薬を理解する機会が必要だと思います。

4、訪問看護や社会資源を活用しよう!
・訪問看護師による定期的な薬の作用・副作用の確認
・訪問介護による内服の促し
・訪問薬剤師による内服の説明や飲み忘れ防止対策
在宅生活を継続する上で、皆様のお役に立てる社会資源が整備されています。訪問看護師は、利用者さんに関係する医療・介護関係者と協力し、ポリファーマシー問題解決に取り組む役割を担っています。

このチラシを手に取った皆様が、今一度、内服する薬剤の必要性を再確認し、疑問があれば主治医や関係する医療・介護関係者へ相談するきっかけとなれば幸いです。


参考資料
1.日本老年医学会雑誌第56巻第4号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/56/4/56_56.442/_pdf/-char/ja#:~:text=%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%EF%BC%88%E4%BB%A5%E4%B8%8B%E5%8E%9A%E5%8A%B4,%E7%99%BA%E3%82%92%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%EF%BC%8E
2.厚生労働省「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000763323.pdf
3、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課ポリファーマシーに対する啓発資材の活用について
https://www.jvnf.or.jp/newinfo/2019/200324tsuchi.pdf
4、ファルマシア・52巻・2号・161頁
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/52/2/52_161/_pdf

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