わすれもの

定期入れをなくした。

昨日の夜、酔っ払って電車で寝過ごしてしまった。
終着駅から最寄りへ戻る列車がないので、タクシーを使った。ごくまれにだが、金曜の夜はそういうこともある。にゃんにゃん。

今朝起きると起床予定時刻を過ぎていた。毎朝寒いので布団から出られない。
午後から用事があるのに困る。慌てて引き出しの一番上にあったプルオンのパーカーを着た。ポケットに手を突っ込む。あったかい。
上からコートを羽織り、定期券入れを探すと見当たらない。
デスクの下もライトで照らしてみるが、落ちていない。

定期入れの中身は身分証、保険証、メインのクレカ、定期券、図書館の利用者証、その他雑多なカード類。
高校入学時に父親と揃いで買った定期入れだった。

酔っ払って覚えていないが、電車には乗れたのだから、タクシーに忘れたかもしれない。
しかし、昨日乗ったのは個人タクシーで、名前を覚えていない。現金で払い、レシートももらっていない。

個人タクシー協議会のホームページを見る。
遺失物は警察に届けるように会員に指導していますと書いてある。運転手は善良そうな人だった。是非そうしてほしい。 

駅に向かいながら警察署に電話をかけて遺失物届を出し、クレカのアプリでカード利用を停止する。ハイテクだ。クレカは再発行申請をしないといけないが、夜帰ってからもう一度落ち着いて部屋の中を探し、見つからなければカード会社に連絡することにした。

Suica定期券がないので、券売機で往復乗車券を買う。普段は定期券併用なので数百円で済むが、フルで買うと高い。

身分証も保険証も入っているのだから、きっと手元には戻ってくるだろう。問題はいつ戻ってくるかだ。
高校の頃に秋葉原で筆箱を落としたことがある。翌朝には万世橋署に届いていて、受け取ることができた。

警察に届けられたら平日に取りに行く必要がある。有給をとらないといけない。どこに届けられるかにもよるが半休で済むか微妙だ。所轄の警察署は辺鄙なところにある。長い散歩だと思えば家から歩けないことはない。

友人と会い、定期入れをなくした話をすると、大変だね、と同情される。

用事を済ませて帰路につく。自宅に帰り、部屋でコートを脱ぎ、パーカーのポケットにふと手を突っ込むと硬い感触がある。

取り出すと探していた定期入れだった。

灯台下暗し。全く記憶にないが、無意識に入れていたみたい。
トレーナー代わりのバーカーのポケットに物を入れるのはやめようと思った。