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航空無線通信士の科学 #1 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

 航空無線通信士の試験科目には英語があります。そのうちの一つの設問は航空宇宙に関わる記事が出題されます。その内容には科学の知識が詰まっており、受験しない方にとっても魅力的なものです。そこで、航空無線通信士の試験問題を引用し、そこに登場した話題を紹介していきます。今回は2022年8月期の試験に出題された『ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』です。


1.問題の解答解説

 設問1は「何がトーマス・ズルブッケンを感動させたか?」と問うています。正解は選択肢。『望遠鏡の展開プロセスの完了、偉大な節目を迎えたこと』です。ズルブッケンは「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の鏡が展開されたことに対して感動した」と述べられています。
 設問2は「望遠鏡を正しく説明しているものはどれか?」と問うています。正解は選択肢。『望遠鏡は宇宙の最初の星や銀河からの光を検出する力を持つはずである』です。問題文には、ウェッブ望遠鏡が137億年前に形成された最初の星や銀河からの光を観測する目的で設計されたと述べられています。
 設問3は「NASAの新しい望遠鏡を宇宙に運んだロケットはどこから打ち上げられたか?」と問うています。正解は選択肢。『南アメリカ大陸の打ち上げ場所』です。問題文には、ロケットが南アメリカから打ち上げられたと明記されています。
 設問4は「望遠鏡の完全な運用力を確立するための次の段階は何か?」と問うています。正解は選択肢。『分割された鏡を一つとして機能させること』です。記事には18個の鏡のセグメントを調整し、一つに焦点を合わせる必要があると述べられています。
 設問5は「科学者たちは望遠鏡の展開完了後、何をするのか?」と問うています。正解は選択肢。『彼らは宇宙が誕生から1億年未満であったときのように宇宙を見るために、望遠鏡を最終的な位置に移動させるだろう』です。問題文には、科学者たちがビッグバンから1億年以内に宇宙を観測することを目指していると述べられています。

2.ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とは?

 それでは、問題文やNASAによる紹介も参酌しつつ、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とは何かを見ていきましょう。

2.1.概要

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は137億年前にできたファーストスターの光を観測するための宇宙望遠鏡です。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使うことで、ビッグバンから1億年以内の宇宙の状態を観測できるものと期待されています。2021年12月に南アメリカのフランス領ギアナから打ち上げられました。
 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はゴールデンアイと呼ばれる主鏡を備えています。この主鏡はベリリウム製の18個の六角形セグメントから構成され
ています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は折りたたまれた状態打ち上げられたため、この主鏡にて光を観測するためには、宇宙空間で折りたたまれた状態から観測可能な状態に展開される必要がありました。
 問題では、この展開の成功がNASAの職員を感動させたことについて触れられています。

2.2.主鏡の展開

 主鏡の展開については冒頭の画像(出典引用:NASA)が参考になります。観測を行うためには画像左下の状態になっている必要があります。打ち上げ時点では折りたたまれた状態であり、それを段階的に広げていき、最終的に観測可能な状態になる状況が示されています。

2.2.第一段落

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の展開が完了したことが述べられています。これを見たNASAの責任者であるズルブッケン氏が感動したと述べています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡よりも強力な性能を持っています。ゴールデンアイと呼ばれる主鏡によって、137億年前にできたファーストスターの光を観測することができるのですが、2週間前に南アメリカから打ち上げられたときには、この主鏡は折りたたまれた状態でした。

2.3.第二段落

 主鏡の右側が所定位置に配置され、コントロールルームは沸き立ちました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡はベリリウム製の18個の六角形セグメントから構成されています。今後、この18個のセグメントは星や銀河の観測のために調整が必要です。

2.4.第三段落

 ウェッブの主鏡はベリリウムでできています。ベリリウムは軽量でありながら丈夫で耐寒性のある金属です。18個のセグメントはそれぞれ、赤外線を高度に反射する超薄型の金層でコーティングされています。 六角形のコーヒーテーブルサイズのセグメントは、今後数週間で、星、銀河、生命の兆候となる大気の兆候を持つ可能性のある異世界に焦点を合わせることができるように調整する必要があります。

2.5.第四段落

 ウェッブは打ち上げられてからすでに100万キロメートル以上離れた場所まで到達しており、さらに2週間で160万キロメートル離れた目的地に到達すると見込まれています。この夏に科学観測が開始される予定です。天文学者は宇宙形成のビッグバンから1億年以内に遡って観察しようと期待しています。

3.ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に関する記事

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡については、以下のような記事があります。どうやら、この試験問題はこれらの記事が出典元ではないか、と考えられます。

2022年1月8日 The New York Times
A Giant Telescope Grows in Space
https://www.nytimes.com/2022/01/08/science/james-webb-telescope-nasa-deployment.html

2022年1月8日 VOA
Webb Space Telescope's 'Golden Eye' Opens, Last Major Hurdle
https://www.voanews.com/a/webb-space-telescope-s-golden-eye-opens-last-major-hurdle/6388457.html

2022年1月8日 AP
Space telescope’s ‘golden eye’ opens, last major hurdle
https://apnews.com/article/space-launches-technology-science-business-south-america-2bed9ec4c6bc04d462c38084bd009ce3

2022年1月9日 The Mainichi
Space telescope's 'golden eye' opens, last major hurdle
https://mainichi.jp/english/articles/20220109/p2g/00m/0sc/024000c

4.試験問題を解くために

 航空無線通信士の英語試験にはこのような科学的な話題が出題されることがあります。英語が得意ではなくとも、このような知識を持っていれば問題を解きやすくなるのではないでしょうか。
 この問題のようなことを日本語で出題されれば読み解けるとは思いますが、知らないことは日本語で問われてもわからないことがあります。英語で問われたならなおさらそうです。しかし、自分の知っていることであれば、多少わからない箇所があったとしても、読み解けることがあるのではないでしょうか。例えば、フランス領ギアナにフランス国立宇宙センターにロケット発射基地があることを知っている、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の役割、主鏡の構造を知っている、そうすれば問題文はかなり読みやすくなるのではないでしょうか。

5.出典など

 本記事は2022年8月期航空無線通信士「英語」の内容を出典とし、解答解説を加えるとともに、NASAのサイトを参考にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の説明記述を加えました。

NASA James Webb Space Telescope
https://science.nasa.gov/mission/webb/

タイトル画像は以下に示す利用規約に基づいてNASAのサイトより引用して利用しました。
NASA Images and Media
https://www.nasa.gov/nasa-brand-center/images-and-media/


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