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令和元年度特許出願技術動向調査ー宇宙航行体ーのまとめ

 特許庁は新市場の創出が期待される分野、国の政策として推進すべき分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、特許出願技術動向調査を実施しています。その中から、令和元年度特許出願技術動向調査ー宇宙航行体ーを取り上げ、その結果をご紹介します。


1.はじめに

 近年、宇宙ビジネスという言葉が頻繁に聞かれるようになり、宇宙産業は急速に成長しています。日本もこの成長を牽引する重要なプレーヤーとして、宇宙基本法を制定し、宇宙航行体技術の開発に力を入れています。しかし、その一方で、知財戦略の面ではいくつかの課題も指摘されています。

2.日本の現状と課題

 日本の宇宙航行体関連の特許出願件数は主要国と比べて少ない状況です。特に、海外からの特許出願が非常に多く、これは将来的に日本の企業が日本で事業を行う上での障壁となる可能性も孕んでいます。例えば、米国、欧州、日本の主要宇宙機関の予算当たりで特許出願件数を比較検討した結果を見ると、日本は米国に対して上回る水準である一方、欧州に対しては一部を除き下回る水準でした。また、日本のプレーヤーによる日本への特許出願割合は55.9%と、全技術分野平均の約80%に比べて低い結果となっています。 特に、米国、欧州からの出願が多いことが分かります。
 従来、宇宙航行体分野では、特許出願が積極的になされないと考えられてきました。その理由として次のようなことが考えられます。国家安全保障の観点や、製造物が宇宙にありリバースエンジニアリングができないため技術漏洩リスクが低いこと特許侵害訴訟を提起され難いことなどです。
 しかし、これらの認識が日本の宇宙航行体技術の知財戦略における課題を生み出している可能性があります。

3.知財戦略の重要性

 宇宙産業は従来のように自社や自研究機関だけで完結する時代ではなくなりました。 ベンチャー企業の参入も活発化し、競争は激化しています。このような状況下では、適切な知財戦略を策定し実行することが日本の宇宙産業の成長にとって極めて重要になります。海外からの特許出願増加は日本のプレーヤーの事業活動を阻害する可能性があります。日本の宇宙産業が世界をリードしていくためには適切な知財戦略が不可欠です。

4.具体的な知財戦略

 それでは、具体的にどのような知財戦略が必要なのでしょうか? 3つの観点からの技術について早期の特許出願や権利範囲の広い特許取得が推奨されます。
  1つ目は他プレーヤーとの接点がある製品・技術です。
 2つ目は第三者/取引先が容易に見られる、リバースエンジニアリングできる製品・技術です。
 3つ目は近い将来に実現性の高い技術です。
 特に、近い将来に実現性が高い技術はノウハウとして秘匿する方が良い場合もあるため、特許出願を行うかどうかを判断する知財戦略が必要となります。また、継続的な特許調査も重要です。海外企業の特許出願状況を常に把握することで、自社の知財戦略に役立てることができます。

5.今後の展望

 これらの技術分野は今後の宇宙産業を大きく変える可能性を秘めています。日本がこれらの分野で世界をリードしていくためには、積極的な研究開発と、それを支える知財戦略が不可欠です。

6.おわりに

 本記事は以下内容を参考に構成しました。
 出典:特許庁 令和元年度 特許出願技術動向調査 結果概要 宇宙航行体 https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/2019_04.pdf

 上記内容を参考に動画も作成しております。こちらからご覧ください。


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