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第6期科学技術・イノベーション基本計画のまとめ
日本の各省庁においては様々な政策研究会が開かれ、今後の政策が議論されています。そうした議論を経て戦略として公表されるものの中には、広く一般には報道されないものも多数あります。ここではそうした戦略を紹介していきます。今回は2021年3月に公表された第6期科学技術・イノベーション基本計画を取り上げます。第5期科学技術基本計画はこちらをご覧ください。
1.はじめに
世界は米中対立の激化、気候変動問題、新型コロナウイルス感染症の拡大といった大きな変化に直面しています。
第5期科学技術基本計画ではSociety 5.0 という未来社会のコンセプトが提唱されましたが、第6期科学技術・イノベーション基本計画では、この5年間の国内外の情勢変化を踏まえ、Society 5.0 をより具体化し、実現のための具体的な政策が盛り込まれました。
2.基本的な考え方
2.1.現状認識
世界秩序は米中対立などにより混迷を深めており、科学技術・イノベーションは国家間の覇権争いの中核となっています。
気候変動問題は現実の脅威となり、「気候危機」として認識されています。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、国際的なサプライチェーンの脆弱性を露呈し、社会の在り方そのものを変えていく契機となりました。
2.2.「科学技術・イノベーション政策」としての第 6 期基本計画
第6期科学技術・イノベーション基本計画は、25年ぶりの科学技術基本法改正を受け、策定されました。
Society 5.0 という未来社会の実現に向け、国⺠の安全と安⼼を確保する持続可能で強靱な社会、⼀⼈ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会を目指します。
2.3.Society 5.0 という未来社会の実現
Society 5.0 は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会です。
Society 5.0 の実現のため、以下の6つの重点項目に取り組みます。
【サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値の創出】
ここには、データ連携の推進、デジタルツインの構築、次世代インフラの整備といったことや、経済安全保障の確保と戦略的な国際連携の強化が含まれます。
【グリーンイノベーションによる持続可能な社会の実現】
ここには、循環経済への移行、気候変動対策、脱炭素化などが含まれます。
【レジリエントで安全・安心な社会】
ここには、⾃然災害への対応、インフラマネジメント、サイバーセキュリティなどが含まれます。
【価値共創型の新たな産業を創出する基盤となるイノベーション・エコシステムの形成】
ここには、スタートアップ支援、オープンイノベーション促進、人材育成などが含まれます。
【次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開)】
ここには、スマートシティの展開・実装、データ連携基盤構築などが含まれます。
【様々な社会課題を解決するための研究開発・社会実装の推進と総合知の活用】
ここには、社会課題解決に向けた研究開発、AI、バイオテクノロジー、量子技術等の推進などが含まれます。
3.科学技術・イノベーション創造立国の実現
3.1.基盤となる「知」の創出
我が国は多岐にわたる社会課題を抱えており、科学技術・イノベーション政策に対する期待は高いです。
しかし、研究力やイノベーション力の低下が課題となっています。そのため、世界トップレベルの研究大学群の形成、国⺠の期待に応える国⽴研究開発法⼈を目指します。
3.2.知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究⼒の強化
多様で卓越した研究を生み出す環境の再構築を実施します。例えば、研究者の処遇改善、若手研究者支援、女性研究者活躍促進などを行います。また、⼤学等における研究環境整備、研究時間の確保、事務手続きの簡素化なども行います。さらに、人文・社会科学の振興と総合知の創出を行います。
新たな研究システムの構築(オープンサイエンスとデータ駆動型研究等の推進)を実施します。例えば、研究データの適切な管理・利活用、研究DXを推進します。研究データ基盤システムの整備、データマネジメントプランの導入を目指します。研究設備・機器の共用化、スマートラボの普及を進めます。また、データ駆動型研究の推進、AI駆動型研究を促進します。
大学改革の促進と戦略的経営に向けた機能拡張を行います。大学の個性と強みを活かした多様な大学群を形成します。国立大学のガバナンス改革、財政基盤の強化を実施します。また、民間資金の活用を促進します。
3.3.⼀⼈ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦を実現する教育・⼈材育成
社会全体の「知」の循環を促進し、新たな価値の創造につなげます。
未来社会を担う人材育成のため、教育システムの改革を進めます。例えば、STEAM教育の推進、探究力の育成強化を行います。リカレント教育の拡充、学び続ける環境・文化の醸成を行います。大学・高等専門学校における多様なカリキュラム、プログラムの提供を行います。
4. 科学技術・イノベーション政策の推進体制の強化
4.1.知と価値の創出のための資⾦循環の活性化
政府の科学技術関係予算を拡充します。
民間投資環境の整備を進め、研究開発投資の拡大を促します。例えば、大学ファンドの活用、研究開発税制の拡充、ESG金融、インパクトファイナンスの推進が挙げられます。
4.2.官⺠連携による分野別戦略の推進
AI、バイオテクノロジー、マテリアル、量子技術、健康・医療、宇宙、海洋、⾷料・農林⽔産業等の分野において、戦略に基づき研究開発を推進します。これらの分野において、ムーンショット型研究開発制度も活用します。
4.3.総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の強化
「総合知」を活用し、未来に向けた政策を立案・発信します。エビデンスシステム(e-CSTI)の活用による政策立案機能強化と政策の実効性の確保、第6期科学技術・イノベーション基本計画に連動した政策評価の実施と統合戦略の策定を行います。
5.おわりに
第6期科学技術・イノベーション基本計画では第5期科学技術基本計画の反省を踏まえ、デジタル化の加速、総合知の活用などを柱に、より現実的で具体的な政策を提示しています。 これによって、Society 5.0の実現に向けた取り組みを加速し、より良い未来社会を創造することを目指しています。
以上の内容は次の内容を参考にまとめたものです。皆様のお役に立てれば幸いです。
出典:内閣府 第6期科学技術・イノベーション基本計画
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index6.html