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宇宙技術戦略のまとめ(②技術開発戦略:衛星)
日本の各省庁においては様々な政策研究会が開かれ、今後の政策が議論されています。そうした議論を経て戦略として公表されるものの中には、広く一般には報道されないものも多数あります。ここではそうした戦略を紹介していきます。今回は2024年3月に公表された宇宙技術戦略を取り上げ、その中から衛星に関する技術開発戦略を細かく見ていきます。宇宙技術戦略の全体概要はこちらをご覧ください。
1.はじめに
近年、宇宙空間の利用は安全保障分野においても重要性を増しています。他国による衛星への攻撃や妨害といった脅威、そしてスペースデブリによる衝突リスクの増大といった課題が顕在化しており、これらに対処するために、より高度な衛星技術の開発が求められています。
具体的には、妨害や干渉に強い衛星測位システムや、高精度かつ高頻度な観測を可能にするリモートセンシング技術、そして衛星の安全確保や寿命延長のための軌道上サービス技術などが重要となります。
2.主要技術分野と開発戦略
宇宙技術戦略において、衛星に関して通信、衛星測位システム、リモートセンシング、軌道上サービスの4つの技術分野が重要技術として特定されており、それぞれにおける具体的な開発戦略が示されています。
2.1.通信
将来像として、衛星間や軌道間、そして宇宙と地上を結ぶ光通信ネットワークシステムの構築が掲げられています。
周波数資源を消費しない光通信は低軌道通信衛星コンステレーション構築に不可欠な技術です。
災害時や有事の際にも、地上システムの影響を受けずに通信を継続できるレジリエンス(強靭性)の向上に貢献します。
2029年度までに 2Gbps 以上の通信速度を持つシステム実証を目指し、標準化を含めた国際動向を踏まえつつ、迅速な開発を進める方針です。
2.2.衛星測位システム
将来像として、準天頂衛星システムの整備による、我が国独自の測位能力の確保が掲げられています。
7機体制の確立により、我が国の衛星のみで測位を可能とする持続測位を実現します。
高精度測位サービスの活用により、インフラ維持管理の効率化、自動運転、スマートシティ等の社会実装を促進します。
妨害・干渉に強い高精度な衛星測位システムの開発が最優先課題として挙げられ、これに対応する開発戦略が示されています。具体的には、ソフトウェア無線等による妨害回避機能の強化、光衛星間リンク等を用いた高精度軌道時刻推定技術、そして主要部品の国産化などが挙げられます。
2.3.リモートセンシング
将来像として、高頻度・高精度な観測を可能にする小型観測衛星コンステレーション技術の活用、そしてデータ解析技術との組み合わせによる新たな価値の創出が掲げられています。
防災・減災対策、地球規模課題への貢献、そして自動運転やスマートシティ等の民間市場におけるイノベーション創出を促進します。
4D情報による「見通せる社会」の実現を目指します。
開発戦略としては、コンステレーション技術、高速・高頻度ダウンリンク技術、スマートタスキング技術、オンボードエッジコンピューティング、そしてデータ解析技術等の開発が重要となります。
特に、政府による支援強化と利用省庁・関係機関によるアンカーテナンシーの推進が求められています。
2.4.軌道上サービス
将来像として、スペースデブリの増加による軌道上の混雑化に対応する技術の開発、そして燃料補給や軌道上修理といった新たなサービスの創出が掲げられています。
宇宙空間の安全保障、宇宙経済の発展、そして持続可能な宇宙利用の実現に貢献します。
開発戦略としては、軌道環境・物体の状態監視・遠隔検査技術、デブリ除去・低減技術、燃料補給・修理・交換等の寿命延長技術、軌道上製造組立技術、宇宙太陽光発電システム、そして宇宙環境観測・予測技術などが重要となります。
また、国際的な規範・ルールの整備も重要です。
3. 防衛分野への応用
上述の衛星技術開発は、防衛分野においても幅広い応用が期待されます。
高精度な衛星測位システムは、ミサイル防衛や部隊の精密誘導に不可欠です。高性能なリモートセンシング技術は、敵の動向把握、災害状況の把握、そして国土監視に役立ちます。軌道上サービス技術は、自国衛星の安全確保、寿命延長、そして機能向上に貢献します。
4. おわりに
宇宙技術戦略は、我が国の宇宙開発の方向性を示す重要な指針であり、衛星技術開発は安全保障分野においても極めて重要です。
以上の内容は次の内容を参考にまとめたものです。皆様のお役に立てれば幸いです。
出典:内閣府 宇宙技術戦略
https://www8.cao.go.jp/space/gijutu/siryou.pdf