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GX2040ビジョン脱炭素成長型経済構造移行推進戦略改訂のまとめ ①全体概要

 日本の各省庁においては様々な政策研究会が開かれ、今後の政策が議論されています。そうした議論を経て策定された戦略の中には非常に影響力の強い戦略があります。2025年2月17日に閣議決定されたGX2040ビジョン脱炭素成長型経済構造移行推進戦略改訂を取り上げます。


1.はじめに(概要)

 本戦略改訂は第7次エネルギー基本計画と同日に閣議決定されました。本戦略改訂は日本がGXを通じて経済成長と脱炭素化を両立させ、世界の課題解決に貢献していく決意を示すものです。
 地球規模の課題である気候変動に対し、日本は2050年カーボンニュートラルという高い目標を掲げ、GXを推進します。GXによって、日本経済の新たな成長エンジンとなる産業構造を構築します。企業の投資を促進し、GX市場を創造し、地域創生にも貢献します。
 しかし、現実的な視点も重要です。経済成長と両立させながら、各国の状況に合わせたトランジションを進めます。日本はアジアをはじめとする世界の脱炭素化に貢献します。GXを加速させるための政策を実行し、その進捗をモニタリングしながら、より良い社会の実現を目指します。

2.改訂の背景

 気候変動問題への対応として、世界中で脱炭素化と産業競争力強化の動きが加速しています。日本は2050年カーボンニュートラル達成に向け、2035年度に温室効果ガスを2013年度比60%削減、2040年度に73%削減という野心的な目標を設定しました。GX(グリーントランスフォーメーション)を推進し、エネルギーの安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指します。このような状況の中、不確実性の高まりを踏まえ、GX2040ビジョンを策定し、長期的な視点からエネルギー戦略、GX産業立地、GX産業構造、GX市場創造を総合的に検討しました。

3.GX産業構造

 1990年代以降の日本経済の停滞を打破するチャンスとしてGXを捉え、GX分野への投資を通じて、新たなGX事業の創出、サプライチェーンの高度化を目指します。
 世界市場で戦うことを念頭に、スピードとスケールを追求し、高付加価値製品を担うレイヤーマスターの存在が不可欠です。既存産業の構造転換を促し、新たな産業創出に障害となる規制の見直しを行います。企業の成長投資を後押しする制度改善、国内外の学術機関との提携、大企業からのカーブアウトを促進します。
 GX市場創造のための制度的対応を進め、規制と支援一体型の取組を推進します。中堅・中小企業のGXを支援し、サプライチェーンからの排除リスクに対応します。
 GX価値の見える化(CFP、削減実績量、削減貢献量等)を推進し、GX製品・サービスの積極的な調達を促進します。具体的には公共調達、民間調達、くらし分野での需要創造を促進します。
 新たな金融手法(GX経済移行債、トランジション・ファイナンス、ブレンデッド・ファイナンス)を活用し、GX投資を促進します。

4.GX産業立地

 脱炭素電源等の活用を見据えた産業集積を加速します。
 脱炭素電力を利用した製品・サービスが産業競争力上の重要性を増すという認識のもと、「エネルギー供給に合わせた需要の集積」を推進します。
 脱炭素電力の利用を促すインセンティブ措置を検討し、企業の投資を呼び込みたい地方公共団体を支援します。
 AIとDC(データセンター)の立地を促進し、産業構造の高度化を図ります。
 地域裨益型・地域共生型で地方創生に資する地域脱炭素(地域GX)を推進します。

5.現実的なトランジションと世界の脱炭素化への貢献

 欧米の情勢を踏まえ、現実的なトランジションが必要です。
 経済成長との両立を大前提とし、エネルギーコストの上昇を抑制します。 
 アジアの視点も加えたルール形成及び世界の脱炭素化への貢献を目指し、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)等を通じて政策協調を進めます。
 エネルギーを始めとする個別分野(省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力、火力発電、水素、CCS、サーキュラーエコノミー等)での取組を加速します。
 成長志向型カーボンプライシング構想に基づき、GX投資を促進する支援策と規制・制度的措置を一体的に講じます。
 公正な移行を推進し、新たな産業への労働移動を支援します。
 GXに関する政策の実行状況の進捗をモニタリングし、必要に応じて見直しを行います。

6.おわりに

 以上の内容は次の内容を参考にまとめたものです。皆様のお役に立てれば幸いです。

出典:経済産業省 GX2040ビジョン脱炭素成長型経済構造移行推進戦略改訂
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218004/20250218004-1.pdf

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