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令和元年度特許出願技術動向調査ー3Dプリンターのまとめ
特許庁は新市場の創出が期待される分野、国の政策として推進すべき分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、特許出願技術動向調査を実施しています。その中から、令和元年度特許出願技術動向調査ー3Dプリンターを取り上げ、その結果をご紹介します。
1.はじめに
3Dプリンタに代表される三次元積層造形技術の進歩は、軽量でこれまでにない機能や複雑構造を有する製品の開発を加速してきました。新たな付加価値を持つ製品の創製、商品企画から設計・生産までの時間の大幅短縮、地理的・空間的制約からの開放など、ものづくりに革命を起こす潜在力を秘めています。そんな3Dプリンタの研究開発の動向を見ていきましょう。
※本調査は2019年に実施され、2020年に結果が公開されていますので、2025年現在から見ると古い情報となります。
2.3Dプリンタとは
3Dプリンタは、材料を付着することによって物体を3次元形状の数値表現から作成するプロセスを指します。技術的な要素としては、付加製造材料、共通システム技術、付加製造方式、方式別個別技術があります。
3.市場/政策動向
3Dプリンタ関連の世界市場は、2022年までに約2兆5,300億円に達すると予測されており、急速に成長しています。一方、日本市場は世界市場に比べて規模は小さいですが、着実に成長を続けています。各国政府は、3Dプリンタ技術を重要な成長分野と捉え、研究開発や標準化を積極的に推進しています。
日本は2010年から金属造形を対象とした技術開発プロジェクトを開始し、2014年からは本格的なプロジェクトを推進しています。 また、米国や欧州、中国も国を挙げて3Dプリンタ技術の開発に取り組んでいます。
4.特許出願動向
特許出願件数は中国が最も多く、生産性や形状に関する技術開発に力を入れていることがわかりました。一方、日本、米国、欧州は、造形物の特性向上に関する特許出願が多い傾向にあります。論文発表件数は欧米が先行している一方、中国も存在感を増しています。
論文発表のテーマは、造形物の構造や特性、設計に関するものが多く、特許とは異なる傾向が見られます。
5.提言
3Dプリンタ技術は、様々な産業分野で活用が期待されていますが、克服すべき課題も残されています。3Dプリンタ適用の目的を類型化し、産業分野ごとに目的と課題を整理した結果を見ると、 特に重要な課題として、低コスト化、高信頼性、材料開発、データ生成・処理の高速化・知的処理、大型3Dプリンタ、高付加価値化、適用分野の開拓、連携強化と拠点整備、新たなビジネスモデルや設計手法の考案などが挙げられています。今後、これらの課題を解決する研究開発を進めることが重要になると考えられます。
6.おわりに
本記事は以下内容を参考に構成しました。
出典:特許庁 令和元年度 特許出願技術動向調査 結果概要 3Dプリンタ
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/2019_06.pdf
上記内容を参考に動画も作成しております。こちらからご覧ください。