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航空燃料供給不足に対する行動計画のまとめ

 日本の各省庁においては様々な政策研究会が開かれ、今後の政策が議論されています。そうした議論を経て研究会の考えが報告書としてまとめられます。しかし、報告書として公表されるものの中には、広く一般には報道されないものも多数あります。ここではそうした報告書を紹介していきます。今回は2024年7月に公表された航空燃料供給不足に対する行動計画を取り上げます。


1.はじめに

 この行動計画は経済産業省が2024年6月から7月にかけて開催した航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース(全3回)の結果を受けてまとめられたものです。
 航空燃料供給不足の現状と日本経済への影響を背景に、官民タスクフォースが設立され、行動計画の策定が行われました。官民タスクフォースでは短期・中長期的な取り組みの詳細を設定し、今後の対応と継続的なモニタリングを行っていくこととされました。
 日本政府は航空燃料供給不足問題を深刻に受け止め、具体的な対策を講じています。短期的な対策によって、喫緊の需要に対応できる体制が整いつつあります。中長期的な取り組みによって、将来の需要増にも対応できる安定的な供給体制を構築しようとしています。この内容を要約しました。

2.背景

 インバウンド需要の急回復に伴い、航空燃料の供給不足が深刻化し、新規就航や増便が困難になっている現状があります。このことは日本経済の発展を阻害する要因となる可能性があります。

3.対策

 これを受けて、政府は関係省庁、業界団体、事業者からなる「航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース」を設立し、短期および中長期的な視点から行動計画を策定しました。

3.1.短期の取組

 需要量の的確な把握を行います。具体的には、空港会社は就航・増便に関する情報を収集・整理し、石油元売会社に提供します。これによって、石油元売会社は燃料供給計画を策定し、航空会社からの需要に対応できるようになります。
 供給力の迅速な確保を行います。製油所におけるエネルギー供給構造高度化法の特例的な運用により、必要分の増産体制を確保します。商社や石油元売会社は、空港会社と連携して航空燃料を輸入し、空港の給油タンクに直接搬入します (7月に成田空港向けに第1船入港によりアジア便300便相当の供給力確保)。
 輸送体制の強化を行います。製油所から空港へのローリー直送を増やし、地方空港向けの配送力を強化します。内航船への転用や新造船の導入により、輸送能力を強化します。給油事業者における人材確保・育成の取り組みを強化します。

3.2.中長期の取組

 安定的な供給体制の構築を行います。石油元売会社は、将来のジェット燃料需要増を見据え、既存タンクのジェット燃料タンクへの転用など、計画的な設備投資を行います。また、ジェット燃料専用のローリーの追加的な確保を検討します。
 輸送インフラの強化を行います。石油元売会社と内航海運業者は、運賃や契約期間といった取引環境の改善に関する対話を行い、船腹量の計画的な確保を行います。老朽化した荷役設備の更新・機能向上により、荷役の効率化を図ります。空港会社は、空港のジェット燃料タンク容量拡大等の必要性を検討します。
 人材の確保も重要です。サプライチェーンに関わる人材の処遇改善を図るため、航空会社、石油元売会社、内航海運業者、給油事業者、関係省庁間でコスト負担を含めた対話を行います。船員の確保・労務負担軽減策を検討し、荷役の効率化を図ります。

4.今後の対応

 今後も継続的にモニタリングを行いながら取り組んでいきます。実施事項としては、本行動計画に基づき、各空港における新規就航・増便状況の改善状況をフォローアップします。また、更なる改善策を継続的に検討していきます。

5.おわりに

 政府は航空燃料供給不足問題を深刻に受け止め、具体的な対策を講じています。短期的な対策によって、喫緊の需要に対応できる体制が整いつつあります(例.2024年7月にアジア便300便相当の供給力確保)。中長期的な取り組みによって、将来の需要増にも対応できる安定的な供給体制を構築しようとしています。
 以上の内容は次の内容を参考にまとめたものです。皆様のお役に立てれば幸いです。

出典:経済産業省 航空燃料供給不足に対する行動計画
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/aviation_fuel_tf/pdf/20240719_2.pdf

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