人生のターニングポイントは

天気にも恵まれたゴールデンウィークだというのに、
こちとら誰とも一切会わず、家で韓国の惨たらしいヤクザ映画をかたっぱしから観ている始末だ。

今年のゴールデンウィーク期間で、こんなにたくさんの血を目にしているのは日本で私くらいだろう。
とにかく毎日、大量の血をテレビ越しで観てる。どうにかなりそうだ

どうにかなりそうなので一旦テレビを消すと、
次は色々余計な事を考えてしまう。

人生のターニングポイントはどこだったんだろう?というのがここ数日のテーマだ。

気が早すぎるんじゃないかという冷静なツッコミは置いといてほしい。こちとらとにかく時間を持て余しているんだから。理屈じゃねんだわ。

そこでレンタルビデオ屋のことを思い出した。

実は私は4歳の時に、迷子のふりをして18禁コーナーののれんをくぐったことがある。
しかもしっかりと、罪の意識を持った上でだ。

今となってはTSUTAYAくらいしか存在してないけど、私が幼稚園生の頃はたくさんレンタルビデオ屋があった。

そこへ毎週父と、おジャ魔女どれみや東京ミュウミュウなど、変身する系のアニメを2本ずつ借りては返しに行っていた。

私は当時、固く信じていた。
自分もいつかは、どれみみたいな可愛い魔法使いになれる事を。

今後小学生になり、学校の帰り道に不気味な店を見つけて、そこで変なカエルと出会う事を。

そのためにはどうしたらいいかを参考にするために、熱心におジャ魔女どれみを観ていた。
いわば参考書のような感覚で。

でも、寝室で変身の呪文を何度も唱えてみたところ、この話は真っ赤なウソだということが判明し、
自分は魔法使いになれないという事が分かってからは、魔法使い系のアニメに対して一切興味を失った。

そこから、建前としては魔法使い系のアニメを継続して借りに行ってたが、本当の興味は違う方向へと進んでいた。

それは両手をひろげた絵の真ん中に「18」と書かれた真っ黒なのれんの向こう側だった。

でも、その世界へ私は足を踏み入れてはいけない事を子供ながらに分かっていた。
18というのはおそらく年齢のことを言っていて、私は4だから、入るためにはあと14年かかる。
小学校受験の塾に通っていたので、これくらいの計算はできた。

とはいえ4歳の感覚からして14年というのは経験した事のない年月だ。
もうその頃にはシワシワのお婆さんになってるよ、くらいの気持ちだ。

どうしても今、入りたい。
だけどお父さんという監視員が常に居る手前、この夢も、かつての魔法使いへの夢のごとく、儚く砕け散ることだろうと諦めていた。

そんな矢先、父が返すはずだったビデオを家に忘れてきた。
「取りに帰るから、あんたは待っといてや」

こんな偶然のチャンスが、私に突然舞い降りたのだ。
MAHO堂には行けなかったけど、18禁ののれんはくぐれる状況になってしまった。

林修先生より何年も先駆けした
「いつやるの?今でしょ!」が自分の中で出た。

一応、迷子の演技をしながら、なんだかよく分かんない間に迷い込んじゃった〜感を出しながら入る事を決め、いざ出陣。
今思えばこのやり方は童貞の学生さんが恐る恐る入っていく様子とほぼ同じだ。

のれんをくぐった瞬間、そこは未だかつて味わった事がない異様な重苦しい空気に包まれていた。

スーツ姿の男の人が数人、私を一目見てギョッとしたが、またビデオに目を戻した。
どうしていいか分からなすぎて、とりあえず皆見てみぬふりをしてくれたのだ。

時間が限られているので出来る限り多くのビデオを物色しようとした。
まるでディスクユニオンでお気に入りのレコードを一枚一枚探すように

人体の不思議すら感じるような規格外の大きさのおっぱいや、どす黒い色の乳輪が目に飛び込んできた。

なにかグロテスクなものを見てしまった感覚になった。
だけど好奇心に取り憑かれて手が止まらず、いつしか時間を忘れてしまった。

正気を戻した時にはもう全てが手遅れだった。
のれんの外に出た瞬間、父に当時ハマってた固いおかきで頭を思いっきりしばかれた。

おかきがあんなに固いのは、きっと私を戒める為に神がそういう風に創造されたのだ。

ちゃんと生きよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?