日本人の給料が安すぎる理由
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では、ここから本題です。
早速ですがこちらの図をご覧ください。
上図は、1997年を100とした場合の先進諸国の実質賃金の推移です。
先進諸国の実質賃金が伸び続ける中、日本では緩やかに下がり続けています。
なぜなのでしょうか?
この疑問に対し、オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏は「モノプソニー」が原因と指摘しています。
モノプソニーとは「買い手独占」という意味です。
労働者に対し雇用者(企業)の方が立場が強く、低い給料で労働者を雇うことができる状態を指します。
日本は本当にモノプソニーなのでしょうか?
モノプソニーの特徴が、どの程度日本に当てはまるかを示したものが以下です。
日本は100点満点ですね。
これを見ると、日本がモノプソニー大国であることがわかります。
ではなぜ日本ではモノプソニー、つまり労働者よりも雇用者(企業)の方が強いのでしょうか?
アトキンソン氏によると特に以下3つの理由があるとのこと。
日本では、女性であるとか、高齢者であるとか、そういった理由だけで労働市場での価値が下がる。そのため、そのような人たちは相対的に立場が弱くなりがち。
労働組合の機能が低下したため。労働組合は、労働者のスキルが明確で企業規模の大きい製造業に適した組織。一方で、近年は産業全体に占める製造業の割合は低下し、労働組合が機能しにくいサービス業が拡大していったことが要因。
規制緩和により、非正規雇用者が増えたため。
この結果、
企業側の立場が強くなり、
労働賃金が下がり、
給与が低いので生産性の低い小規模企業も生き残り、
日本では大企業の割合が非常に少なく、
中小企業が乱立するということがおこりました。(下図)
では、モノプソニーを脱するためにはどうすればよいのでしょうか?
アトキンソン氏は、状況打開のために「最低賃金の引上げ」が必要と訴えます。
最低賃金の引き上げにより、生産性の低い小規模企業が淘汰されます。
そして、生産性が高く経営効率の良い中堅企業、大企業に労働者が集約されるていくからです。
大企業にはしっかりとした労働組合があります。
そのため、労働者側の交渉力が相対的に高く、これによってモノプソニーの状況も改善されるだろうと。
ここまでがアトキンソン氏の主張の超概略です。
個人的には、給与が安いのは上記の他に、日本型雇用システムも大きく影響していると考えています。
①終身雇用
最近は転職も増えてきましたがそれでもまだまだ最初に就職した会社に勤めあげるという人が大半です。
労働者側がそもそも終身雇用を前提とし転職を考えていません。
そのため、企業としては新卒で採用してしまえば、あとは賃金の面で他の企業と競争する必要がないのです。
必然的に給与は低くなりがちです。
労働者側も給与が安ければ転職するという発想がそもそも希薄なため、企業側の言いなりになりやすい傾向があります。
②新卒一括採用
終身雇用で企業側の立場が強くなりがちとは言え、新卒採用の時は学生側もやはり給与面で待遇がいい会社に行きたいと思うはずです。
そこは企業側も選別されます。
但し、新卒一括採用システムでは、新卒と既卒では圧倒的に新卒が有利です。
よって、学生としては卒業までに必ずどこかに就職しなければいけないという意識が働きます。
そうすると、条件が悪い企業でもやむなく就職せざるを得ない学生もたくさん出てきます。
なので、ブラック企業が生き残れてしまうわけです。
③年功序列
多くの日本企業では基本的には年を取るごとに給料が上がっていく年功序列です。
給与を決める要素の大部分が”年齢”に依存しています。
会社の業績が悪くても、個人のパフォーマンスが悪くても、年齢に応じてほとんど固定給のように支払われていくのが普通です。
よって、会社側からすれば業績が悪くても給与を下げることが困難です。
そのため、そのような事態に備えて景気がいい時でも給与を上げない傾向があります。これも、給与が低い大きな要因となっています。
このようなことを考えても、やはり日本の経済をがらりと変えていくためには、日本型雇用システムから脱却というのが必須になってくると考えます。
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