追想〈#15.前篇〉
#15
部活引退直前の夏のあの日、部活の同級生と所謂恋バナになった。「実は飛鳥ちゃんのことが保育園時代を含めて9年好きだった」という話を同級生にした。迂闊だった。悔やんだって後の祭りだけど、きっと死ぬまで後悔するのだろう。
その同級生は、僕のいないところで、「その話」を晒したのだった。飛鳥ちゃんにも伝わったし、悪意のある人たちにも伝わった。──あれは彼女たちにとっては揶揄いでも、僕はとにかく厭だったから、イジメだったと受け止めている。
飛鳥ちゃんの上履きが僕の下駄箱に入れられたり、飛鳥ちゃんの体操服が僕の手元に投げ込まれ泣きながら飛鳥ちゃんが取りに来たり。ある日には飛鳥ちゃんを騙った偽りの手紙で人気のない校舎に呼び出され、容赦ない攻撃を受け続けた。
全校生徒が帰路に就くなか、正門前で彼女たちに取り囲まれて「女々しいんだよ!お前は」などと罵詈雑言を浴びせられた。隣には彼女たちに呼び出された飛鳥ちゃんも居た。異様な光景であったはずなのに、庇ってくれる存在は皆無だった。
飛鳥ちゃんには当時好きな人がいて、それは僕も知る他校のY君で、決して僕なんかじゃなかった。好きでもない男子の片想いに巻き込まれて、さぞ迷惑だっただろう。飛鳥ちゃんは「学校がしんどい」と僕の前で涙を流していた。
僕が一方的に片想いを募らせたばかりに、飛鳥ちゃんの学校生活を破壊してしまった。ただでさえ片想いが破れたばかりなのに、その事実が重なったことで死にたくなった。以降、僕は学校に行かなくなった。行けなくなったのだ。