ろう者が活躍できる社会を目指して サイレントボイス 尾中友哉さんインタビュー vol.2
NPO法人福祉のまちづくり実践機構ではホームレスや障がい者、ひとり親家庭など職につくことが難しい人たちを就労につなげるしくみづくりとして、「行政の福祉化」の発展につながる調査研究に取り組んでいます。このnoteでは、「行政の福祉化」に関わるさまざまな情報をお届けしていきます。
大阪で活動しているサイレントボイスさんはロジックモデルをつくったことで、大きな助成金を取ることができたり、事業の方向性をより具体的に決めることができたそうです。ロジックモデルをつくることにどんな意義があったか、そこからどんな意義が見えてきたかを、株式会社サイレントボイス・NPO法人サイレントボイス代表の尾中友哉さんにお伺いしました。
現在ではNPO法人としてさまざまな形でファンドレイジングに取り組んでいるサイレントボイスさんですが、代表の尾中さんは最初は寄付をもらうことに抵抗があったといいます。
2回目はコロナ禍での対応についてお伺いします。
聴者(聞こえる人)と聴覚障がい者の働きやすい職場を作り出すことを目指し、法人向けの研修制度を行うために2014年に設立。
近年ではNPO法人を設立し、聴覚障がいのある子ども向けに教育を行うデフアカデミーを運営。営利と非営利の両面から、聴覚障がい者が活躍できる社会を目指しています。
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コロナ禍での寄付
創業間もない頃、メンターをしてもらっていたNPO法人edge(エッジ)の方に「寄付もらうのは恥ずかしい」といったような話をしたことがありました。すると、「何が恥ずかしいことあんねん」と言われたんです。その方は阪神淡路大震災のボランティアで、「神戸に助けに行きたいけど、どうしても行けないから、せめて寄付でも」という気持ちでいろんな人が寄付しているのを見てきたそうです。寄付はお金がないからもらうものではなく、活動の意義に集まってくるものなのだと学びました。
それから、コロナ禍での聞こえない子の孤立が問題になり、オンラインで無償授業を提供したり、透明マスクを配るプロジェクトを立ち上げた際には、たくさんのご支援をいただいくことができ活動を継続することができました。
2019年にWEPの研修で、ロジックモデルをつくるというワークショップに参加しましたが、それがコロナ禍での資金調達にとても役立ちました。
命を守るためという目的に事業なら、すでに必要性が理解されると思うのですが、聞こえない子の困りごとはあまり認知されてないんです。だから今社会がこういう状況なんで、これが課題だと訴える必要があります。そのためにはデータが必要なのですが、まず課題として、聞こえない子どもに対する社会調査を探すことに苦労がありました。
海外の事例や国内の社会調査を引っ張ってきた上で、僕らが目指す社会像を立ち上げ、それを目指すための数値を具体化したり、目標をまず設定するためにロジックモデルは非常に役立ちました。
サイレントボイスだけががんばるだけではいけない
NPOとしてそういった社会的課題に対応していかなければいけないと思う一方で、サイレントボイスだけががんばるだけではいけないと思わされる出来事がありました。先日、某財団さんにオンライン教育事業の成果報告する機会がありました。その財団が目指しているのは、特別支援学校や手話の在り方を国レベルで刷新していくというものでした。
だから、サイレントボイスのオンライン教育事業が1つだけめちゃくちゃいい質になってもよくない。特別支援学校や文部科学省から、サイレントボイスがあるからいいだろうと言われたら困る、というご意見をいただいたんです。
最初はびっくりしたんですが、でもたしかにそうなんです。サイレントボイスの自己満足の活動は社会に求められていない。自分たちもそれを望んでいない。だからこそ、どのような生態系になっているのかを知りながら、お互いにシナジーを求めながらやらないといけないとわかったのは、NPOとしてめっちゃ大きい発見でした。
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コロナ禍をなんとか乗り越えた尾中さんが描くのは、聞こえない人が活躍できる社会の姿でした。3回目はそのきっかけになったフィンランドでの体験についてお話いただきます。
合わせて、第1回目、3回目の記事もごらんください。