【推薦コメント】魂のはいった校内居場所カフェの実用書(早稲田大学 文化構想学部 准教授 阿比留久美さん)
パノラマ・フェスティバル2022でもお世話になった早稲田大学文化構想学部准教授の阿比留久美さんに、「校内居場所カフェ養成講座テキスト〜基礎知識編〜」の推薦文をいただきました。
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この本は、「校内居場所カフェをやりたい!」と思いつつも「学校に入りこむのはハードル高くて無理でしょ……」と思いつくはじからあきらめそうになっている人たちに読んでほしいと思うような実用書です。
もう今や日本中のあらゆる人が知っている「こども食堂」という名前を掲げた活動が登場したのは2012年ですが、実は校内居場所カフェも同じ2012年に大阪府の西成高校で産声を上げているのです。
その後、子ども食堂はどんどん新しく立ち上げられて2021年には6014か所にもなっています(「NPO法人全国こども食堂支援センターむすびえ 全国個所数調査2021」2022年2月10日発表)。一方の校内居場所カフェは、注目はされつつも、未だ大阪、神奈川、東京など一部の自治体の高校で実施されてはいるもののそんなに広がっていないのが現実です。
それは、校内居場所カフェはこども食堂と比べてはじめるハードルがだいぶ高いからでしょう。第一に、学校に受け入れてもらうという壁、第二にソーシャルワークにつなげていけるような場にしていくという壁。この2つの壁は、ともすると「絶対超えるの無理!」と思われてしまうようなものですが、難しいからといってあきらめてしまうのは勿体ありません。
なぜなら「まだ所属を失っていない高校生のうちに若者に出会う」(テキスト8頁)ことを一番しやすいのは学校だからこそ、ありとあらゆるいろんなタイプの若者と会えるのは学校だからこそ。ハードルは少し高いけれど、校内居場所カフェが広まっていったらいいなとわたしは思っています。
このテキストでは、そもそも校内居場所カフェってどういうところ?(第1章校内居場所カフェの「そもそも」を押さえる)という部分からスタートして、校内居場所カフェの哲学や魂の部分を伝えてくれています。
そのうえで、実際に校内居場所カフェを運営していくために必要な視点(第3章カフェを機能させるために)、自分を含めたスタッフやボランティアそれぞれがいる意味ってどういうこと?(第4章自分を機能させるために)ということが、書かれているのですが、それがまた心憎いくらい実用的なのです。
第3章の「カフェの機能を発揮するために学校組織を理解する」では「カフェを起点に、学校の中で生徒ファーストなソーシャルワークを行おうとするなら、学校の中の誰に何を言えばどう動くかを知っておく必要があると同時に、誰に何を言ってしまうと、できるものもできなくなるということもあり得る、ということにも敏感になっておかなければなりません」(36頁)なんていう「学校あるある」が説かれていて、やる気や熱意や善意だけではうまくいかない校内居場所カフェの現実と、そこで押さえておかなければならないことがさらりと書かれています。
実際に学校内部のことを知っている人からすると「当たり前」のことも、外部にいる人にとっては意外に知らないものです。実際いくらかかるのか、なんていうお金の話も説明されています。そんな大きな枠組みについてはもちろんのこと、高校生たちにカフェにきてもらう方法について「ホームルームで担任から『今日はカフェの日だから時間ある人は放課後ちょっと寄って行ってみてください』というアナウンスが、実は一番効果的です」(41頁)なんていう細かいけれどとっても大事なアドバイスも載っていたりして、とにかく運営・実施のノウハウを惜しみなく披露してくれています。
でも、ただのノウハウ本ではなく、「うるさいことを何も言わずに、ただ一緒に過ごしてくれる大人は、生徒にとって貴重な存在」だからこそ、「何気ない、なんでもない時間に生徒たちとの信頼貯金がたまって」(60頁)いくことの大事さを繰り返し強調し、校内居場所カフェとはどういう場所か、ということを決してはずさないのが心憎いところです。
ともすると、校内居場所カフェというと、石井さんみたいに帽子をかぶり、アロハシャツを着て、ギターなんかも弾いてしまうかっこいい大人じゃないとできないようにも感じてしまいそうですが、「そんなことないかも!」と感じさせ、一歩踏み出すきっかけをつくってくれる、そんな本です。
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お買い求めは以下のパノラマのオンラインショップ『大安眺望』より。
https://npopanorama.stores.jp/items/62d6010fa06d5c65615bbf25