シリア難民キャンプの過酷な現状、活動するNGOが語る
シリア難民について報告したパレスチナ子どものキャンペーン(CCP)の講演会には、立ち見がでるほどの人が参加した。
■シリア難民の現状
「シリア難民は約460万人、パレスチナ難民は約510万人、二つを合わせると世界の難民の半分以上となる」と説明するのは、CCP職員の中村哲也さん。CCPは、1986年からレバノンでパレスチナ難民支援を行うNGOだ。シリア危機に対しての支援も2013年から開始した。シリア危機は、かつてない規模で拡大している。死亡者は23万人、国内避難民は700万人を越え、元の人口が2100万のシリアでは半数以上が難民か国内避難民となっている現状だ。
シリアから逃れた人々は、報道されているようにヨーロッパを目指す人もいるが、多くはレバノン、トルコなど周辺5ヶ国に避難している。CCPが活動するレバノンは、人口400万人ほどという小さな国だが、そこに100万人のシリア難民が入ってきた。難民キャンプの95%が食料不足となり、1日1食で生活する人は、45%もいる。67%の難民が貧困ラインの一日300円を下回った生活を強いられている。
■希望を持てないシリアの避難民
レバノンには、1948年の第一次中東戦争で避難をしたパレスチナ人の難民キャンプがある。CCPは設立のときから、子どもへの教育支援、給食などの配布、燃料の配布、母親への支援などを続けてきた。シリア危機以降は、パレスチナ難民キャンプで培ったノウハウを活かし、シリア難民への支援を行う。
教育支援では、補習クラスを設け、約1200人の子どもたちに国語や算数を教えてきた。楽しそうに学ぶ子どもたちの姿も見られるが、レバノンは難民たちにとって、勉強する意義を見出すことが難しい場所だ。難民に対して、就労権を限定しているため、70種以上の職に就くことができない。どれだけ努力して勉強をしても医者や先生にはなれない現実がある。「子どもたちは、こんな仕事がしたいという夢を抱くことができないから、勉強する意義も感じられない。将来に希望を持つことが難しい」と言う。
シリア危機は、なぜこれほど拡大したのか。中村さんは、「シリアで覇権争いを繰り広げるイランやサウジアラビアなどを、裏側で支える国の影響が大きい。中国・ロシア、アメリカ・フランスなどの大国が、それぞれの国を支援することが長期化を招いている」と話した。また、中東情勢が混乱していくなか、ISも台頭してきた。様相は泥沼化している。
CCPは、「中東地域に生きる子どもたちが希望を持って成長できる」ことをミッションとして活動しているが、根本的な解決にはまだ時間がかかるだろう。それでも、日本だけでなく世界中のNGOが、草の根の難民支援を行っている。まず、私たちにできることは一人ひとりがシリア危機の現状を知る必要がある。国際社会が一丸となり、難民となった人たちが希望を持てる世界に変えていかなくていけない。
http://nponews.jp/column/ccp-ngo/
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