
Photo by
npol
二番星は二度輝く : 代役騎手とシンザン・有馬記念の栄光 松井俊堯
専業の作家さんや競馬記者さんではなく、大田市出身の筆者が同郷の松本善登騎手について書いた伝記。そのため、松本騎手や当時を知る競馬関係者からの直接取材はない。それが少し残念ではあるのだが、そもそも伝記というのはそういうものだものな……。
大田市ご出身ということもあり、序盤の大田市にまつわる部分が詳細で、意欲を感じる。物部神社、そしてシンボリ和田共弘氏との関わりを詳細に描写しているのが特徴。
物部神社のパーソロン像はいつか見に行きたいと思っているのだけれど、松本騎手か松本家の痕跡はあるのだろうか。
松本善登騎手はシンザンの有馬記念、そしてカツラノハイセイコのダービーと、歴史的レースを2勝しているのにもかかわらず(しかもシンザンという日本最強の呼び声が高い顕彰馬の、シンザンが消えた!で有名な有馬記念に騎乗しているにもかかわらず)マイナーな騎手である。
自分も、この両馬の有馬とダービー勝利騎手として名前は見るが、失礼ながら、名前を見るだけであった。そんな騎手に光を当てたのは本当に素晴らしい。
但し、繰り返しになるが、執筆者は競馬記者さんではない(もちろん、競馬ファンではある)のでこの2レースに関する記述はわりとあっさりしていて拍子抜けする(有馬の騎乗ぶりについてはみんな気になると思うのだけれど……)
とはいえ、松本騎手を取り上げ、その最期までを追ったこの本は唯一無二。
同郷などの事情がなければ商業的にもこういう本は出なかった可能性は大きく、その意味でこの本が世に出たことが素晴らしい。