このレポートは、地域における孤立・孤独対策に関するNPO等の取組モデル調査研究業務に取り組む釜ヶ崎支援機構の「孤立・クローゼットの奥にある新世界ジェンダーフリーシェッド事業」を記録し、最終的に報告書として紹介する目的で作成したものです。
プロジェクトをご一緒している山王訪問看護ステーションでは以前からすでに「にしなりベンチプロジェクト」をはじめておられます。
山王訪問看護ステーションの患者さんは高齢の方や障害をお持ちの方が多く、ちょっと街中を出歩くにしても座って休憩したい方が多いので、「界隈を休憩できるまちにしたい」と商店街のお店などに協力してもらって小さなベンチを置くプロジェクトをコツコツと募金ベースで活動されています。
そのベンチをつくる作業が孤独、孤立の解消につながるのではと考えて、シェッド西成ではベンチプロジェクトとコラボさせていただく運びとなりました。
釜ヶ崎支援機構の松本裕文さんはその背景を振り返ります。
そこでチラシを配布し、大工仕事ができる人も関心があるけどこれまで経験がなかった人も集まって楽しめる天下茶屋北健康広場のテーブルとベンチをみんなでつくるプロジェクトを開始。
実際、週に1〜2回の木工ワークショップを企画してみると、毎回10人以上の人が参加するワークショップとなりました。
ここからは12月に行われた取り組みを、写真をもとにダイジェストでご紹介します。
1回目は材木を切ったり、寸法に合わせて切っていく作業です。好川拓建築設計事務所の好川さんを講師に迎えました。好川さんはこう解説してくれました。
2回目も材木を切り、やすりがけなどをしています。
作業のあとにご飯を食べて、集まった人たちが仲良くなったり、顔見知りの関係になることが狙いのひとつです。
ひと花センターの2階で寸法どおりに切れなかった木の修正カットをしています。
これはニスを塗るなどの作業をしている様子です。
インパクトドライバーは人気のある工具です。
3個目のベンチの組み立てをしています。
ストーブを持ち込んで、お餅やパンを焼いています。
単管にクランプを入れてテーブルの脚を組み、脚の先を土に埋めています。
天板を載せて完成。山王訪問看護ステーションのblogも写真が豊富なので、あわせてご覧ください。
全体のワークショップを通じてみんな顔見知りの関係になり、自分が得意な作業ができるのでわくわくもしている。大成功だったので、この活動が継続できるように地道に続けていきたいです。
ただ順調だったわけではなく、ひとつの学びがあったと松本さんは言います。
この学びは釜ヶ崎界隈に限らず、高齢男性の居場所をつくる上での重要なことではないでしょうか。大工仕事を通じてコミュニティを居場所にする試みが、これからの釜ヶ崎でどんどん広がっていきそうで楽しみです。
文/狩野哲也