1年間の歩みを振り返って
2022年10月から、ひとり親家庭への支援活動を開始して1年が経ちました。今までに133世帯に支援を行い、必要だと判断した家庭には継続的に支援を行っています。
1年間の活動の中で、選手それぞれが目を背けたくなるような現実も多く目の当たりにしました。困っている方は、何を必要としていて、何に問題を抱えているのか、そして自分たちには何ができるのか。
毎月、課題や現状をメンバー間で共有をして、より良い形を模索し続けています。1年経った今、自分たちの活動の意味について改めて考えてみたいと思います。
代表理事 田口潤人
なぜ私たちは支援活動をするのか
沖縄県内でひとり親家庭への支援活動を行っている「ゴージャス理枝」さんの存在を知ったのがきっかけに、個人的に活動に協力したことが「ひとり親家庭」について考えるようになったきっかけでした。
継続的に協力をさせてもらっていましたが、ある時個人で支援活動に協力することへの自分の無力さを感じ、ならば組織を作って自分がアクションを起こそうと思い、その想いに共感してくれたメンバーが集まりました。
当法人メンバー、田口潤人(FC琉球)杉本大地(名古屋グランパス)毛利駿也(ツエーゲン金沢)武沢一翔(FC琉球)は、サッカー選手として生きています。いや、沢山の方の支えがあって生きることができています。
サッカー選手としての私たちにとって、良い時も苦しい時も寄り添ってくれる存在というのは、ファンサポーターの皆さんだと思っています。応援は、ものすごく力を与えてくれます。特に苦しい時、うまくいかない時、何度も応援や後押しによって救われた経験があります。
普段応援されている自分たちも、競技とは違った形で誰かの力になれるのではないか。少なからず社会的な影響力を持った自分たちが仲間を巻き込んで行うことで、より大きな力で何かを生み出すことができるのではないか。
このような想いとメンバー自身や身近な人がひとり親家庭で育った経験も背景にあり、「ひとり親家庭」への支援活動を私たちは行なっています。
必要な人に必要なモノを
私たちの支援内容は、主に食料品や生活用品の支援です。寄付いただいたお金で品物を購入してご自宅へお届けしています。
支援の流れは、まず各選手がそれぞれの家庭の担当につき、電話もしくはビデオ通話で10分ほどのヒアリングを行います。そして生活環境や健康状態等から支援の可否や支援時期、支援頻度を判断しています。
そして支援内容は、一律ではなく、家庭ごとに必要なものを選んでいただくオーダーメイドの形になっています。家庭状況やお子さんの年齢によって、その時に必要なものは違います。その時に、本当に必要なものを渡す方がより意味のある支援になるのではないかと考えました。この体制はメンバーでこだわりを持ったポイントの1つです。
支援の可否の判断をする際に難しいのは、同じ「困っている」という状況でも、実際の状況はさまざまだということ。困っているというものさし、自分は大丈夫だというものさしは、人それぞれ違います。
どこで線引きをして、支援対象者を決めるか。線引きは必要ないのか。その場合どのように対象者を決めるのか。
いただいた寄付金をどのように使うのか、メンバー間での議論が続きました。とにかくひとり親家庭の現状を知り、そこから自分たちに何ができるのか。できることの中でどのように接点を持っていくか。より本質的な活動になるようにメンバー間でのミーティングを重ねました。
モノより大切なもの
当法人では、1度の支援で5,000円分の品物をお渡ししています。継続支援対象の場合の月に1度の支援でも、生活を支えることができないことは分かっています。それでも何かのきっかけになればという想いで始まった支援活動ですが、やりとりを行う中で大きな私たちの存在意義に気付かされました。
ある時、やりとりをしてる方のヒアリングの中で職場内での人間関係についてお話しました。そこで一言。
「こんな話をできる大人がいません」
すごくハッとさせられました。この方は、自分には身近に悩みや相談を打ち明けられる大人がいないと話していました。仕事が終わって家に帰って、小さな子供と少し話して1日が終わる。
「私には話を聞いてくれる存在が1番必要だった」と言って、涙を流して感謝の言葉を伝えてくれました。
物資の支援という「物を届ける」という、物理的なもの以上に力になれることがあるのではないかと感じた経験でした。やりとりをする中ですごく感じることは、生活環境や家庭環境をひとりで抱え込んでしまったり、相談できる相手が少ないのではないかということです。
「話を聞いてもらって解決はできないけど、何か力になってもらえた気がして、スッキリした!」そんな経験は誰にでもあるはずです。
話をして支援をする過程で、「自分には味方がいる」と感じてもらうことができていたら嬉しい。活動を始めてみて感じた事は、私たちの支援活動の本質は、果たして「物資を届ける」ということなのか、ということです。
心に寄り添える存在になる。自分たちも応援をして勇気を与えられる存在になりたいです。
活動のこれから
私たちは、自分たちが感じた課題や問題に対して、アクションを起こせる人間でありたいと考えています。いくら勉強していても、いくら考えていても、それだけでは本当の課題は見えてきません。活動開始前に色々なことを想定して準備してきたことも、単なる想像でしかありませんでした。
実際に向き合わないと分からない現状から、私たちが活動をしていく意義や必要性、継続することの重要性を改めて感じています。
現状の支援は、食料品や生活用品をお渡しして電話やメッセージのやりとりを通して精神的な繋がりを持つことですが、それだけでその家庭の自立に繋がるかということは考えていかなければいけない点です。
今後は更に、その家庭の今の生活環境にあった就労先の案内や人間関係を広げるための環境作り、お子さんの習い事の支援などにも協力できる体制を作っていきたいと考えています。
支援規模や支援体制はまだまだ小さいものではありますが、目の前の方の現状に寄り添い、継続的に活動を行っていきます。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事を読んでいるひとり親家庭の方がいましたら、いつでも私たちにご連絡ください。また身近にそのような境遇の方がいましたら、ご周知いただけたら嬉しいです。
困っている状況を、人に打ち明けられない方も多くいると思いますが、私たちができることがあればお力になりたいと思っています。
そして私たちの活動に共感いただき、私たちに想いを託してくださっている方々に改めて感謝いたします。
多くの方の支援と、企業パートナー様のおかげで少しずつ活動の規模を広げられています。今後ともNPO法人ツナグーFootballerをよろしくお願いいたします。
活動を支援してくださるみなさまの想いも含めて、私たちはより積極的・継続的に活動を展開していき、1人でも多くの方への支援を実現をしていきたいと思います。
※寄付はこちらから
NPO法人ツナグーFootballer 田口潤人(代表理事)