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【活動報告】シグマ熱中症労災死事件の裁判傍聴支援をおこないました
■自販機企業「シグマベンディングス」で起きた熱中症労災事件
Aさんは、コカ・コーラ社の下請企業であり、自販機に詰め込みなどをおこなう「シグマベンディングス」で、トラックドライバー助手および駐車禁止の声かけに対応する要員として働いていた。2020年8月に他社への業務引き継ぎのための作業をするためにコカ・コーラ社の社員がともに働いていた。その日は最高気温36℃という猛暑の日であったが、Aさんは自販機と自販機の間を歩いて移動させられた。コカ・コーラ社の社員と、もう一人の労働者はトラックに乗っていたのにも関わらず、トラックが一台しかないからという理由で、Aさん一人歩かされたという。猛暑のなかで歩けば危険であることはわかっていたはずだが、もう一台トラックを用意するとコストがかかるからという理由で、Aさんは歩かされたのだ。
また、他の労働者とコカ・コーラの社員が自販機に飲み物を詰めている際に、Aさんはトラックのなかで待機していたが、トラックのエンジンとともにエアコンが切られている状態であったという。そのようななかで、Aさんは一日で合計2時間以上待機させられていた。そして、この日仕事が終わった直後に、体温が39℃以上になり、倒れてしまったのだ。Aさんは病院に救急搬送され、長期入院を余儀なくされた。
この労災事件は、適切に休憩を取れていたり、トラックをもう一台用意してそれに乗って移動していたり、待機中のトラックのエアコンをきちんとつけていたり、どれか一つでも企業側がおこなっていれば、起きなかったであろう事件である。しかし、休憩を取れるようにするためには人手を増やさなければならず、それだけお金がかかる、トラックをもう一台準備したり、トラックのエアコンをつけたりするためには、それだけお金がかかる。だから、利益を追及する企業は、コスト削減を優先して安全対策を怠った。その結果、Aさんは倒れたのである。
■遺族と労働組合の闘い
入院したのちに、Aさんは妻と兄の助けのもとで労働組合に入り、二人が代理で企業に対して労災申請の手続きをおこなうよう要求し、団体交渉をおこなった。その結果、Aさんの熱中症の発症は労働環境が原因であるとして、労災認定を勝ち取っている。しかし、労災認定がなされたのちに、Aさんは熱中症の後遺症が原因で亡くなってしまった。遺族は労働組合に加入し、企業に対して損害賠償や謝罪を求めて闘ってきた。会社側は回答拒否を続けたため、総合サポートユニオンの自販機ユニオンとも連携して団体交渉をおこなってきた。しかし、企業側は「遺族に団交権はない」などと繰り返し、回答拒否を続けたため、遺族は企業を提訴することを決意したのだ。
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■第3回シグマ熱中症労災死裁判
12月21日(金)11時30分から、東京地裁705法廷にて、シグマに対して熱中症労災死を引き起こした事実を認めさせ、損害賠償を支払わせるために、裁判が開かれた。今回で3回目の裁判である。裁判傍聴席には、学生、過労死遺族、記者、労働組合員など、支援者20人ほどが集まって、席を埋め尽くしていた。POSSEからは、学生メンバー3人とスタッフ1人が駆けつけた。
裁判では、遺族側はAさんが倒れた当日の様子を詳しく知るために、コカ・コーラ社に対する聞き取り調査を含めておこない、事実を開示するよう要求した。また、事件が起きる以前にもAさんのみ猛暑のなかで歩かせるということが起きていたのかと問いただした。しかし、企業側はこれらに対する回答を準備してこなかったのである。私達はこうした企業側の対応に対して強く抗議の意思を示した。私達は、これからも裁判傍聴支援をおこなって、この闘いに連帯していく。
■気候危機のもとで広がる熱中症労災
熱中症労災は、昨年明らかになっているだけで死傷者1106人、死者31人にものぼる。今後、気候変動の深刻化のなかで、熱中症労災によって倒れたり亡くなったりする労働者が増えていくに違いない。労災事件は、長時間労働や過重労働など、過酷な労働環境によって起きやすくなることが知られている。また、熱中症労災の多くは、企業が安全対策を怠らなければ防げた事件であろう。労災を引き起こした過酷な労働環境を変えていくため、そして企業に対して責任を追及していくために、闘いを広げていくことがまずは何よりも重要なのである。今回の事件は、気候危機のもとで水面下で広がる熱中症労災を象徴する事件である。この闘いを契機に、熱中症労災に対抗する労働運動を広げていきたい。
✭次の裁判は、3月3日(月)16時ー@東京地裁522法廷でおこなわれる。裁判傍聴支援に参加したいという方は、ぜひ連絡してほしい。