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刑務所でできる文化的暮らしを考える―NPO法人マザーハウス会報「たより」2022年9月号Pick Up

NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。私たちは会報誌「たより」を毎月発行しています。

塀の中の受刑者から寄せられた手紙(便り)や絵、社会にいる私たちから送りたいメッセージなどを掲載しています。今回は2022年9月号の内容をご紹介します。

受刑者の絵(光りんさん「いつも瞳キラキラ!金目鯛)

元受刑者による特別講義 学生たちが感じたこと

マザーハウス代表の五十嵐が専修大学法学部で昨年12月に行った「法社会学Ⅱ」での特別講義に、学生さんたちが感想を寄せてくださいました。7、8月号に続き、その一部をご紹介します。

犯罪をした人としていない人の差はほんの些細なものだと感じました。犯罪被害者ばかりに注目されがちですが、犯罪加害者も苦しんでいるということが切にわかりました。

犯罪をしたことは悪いことだし、反省することも必要だけど、「社会に出てきてもあなたを受け入れるよ」という意思を受刑者に示して、ちゃんと受け入れてあげた方が再犯の可能性は下がるのかなと思いました。

これから社会に求められるのは元受刑者を受け入れる環境作りだと思います。私は以前、受刑者を根本から拒否していました。しかし、年を重ねるにつれて、更生しようとする元受刑者に対して寄り添う活動が必要だと考えるようになりました。

刑務所を出所したあとの社会復帰に対する国からの支援がほとんどなく、受刑者にとっては社会に居場所がない、とても大変な環境であるのが現状で、これらは変えていかないといけないなと講義を聞いて感じました。

受刑者の絵(S刑 Kさん)

「塀の中のたより」~受刑者からの手紙~

受刑者から私たちのもとに届いた手紙のうち一部を抜粋してご紹介します。なお本人の許諾を得て掲載しています。

特別教育(※)を受講する前までは、「自分には必要ない」「時間を無駄にしたくない」と思っていましたが、受けてみて最終的に良かったと思っています。考えたこともなかった「認知の歪み」を知り、自分の問題点を見つけることができ、対処法も考えられたので、自信に繋がりました。

(JSアフロさん) 
※「特別改善指導」のこと。薬物依存離脱指導や、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた指導などがある。受刑者の罪状に合わせたプログラムを受けるために、刑務所を移動することがある。

幼い頃を思い浮かべ、無邪気だった頃、何もかもが素直だった頃の私、いつの日か罪を犯し、何度も厳しい受刑生活を繰り返す人生になろうと思ってもいなかったはずの私を思うと、色々と自問自答せずにはいられなくなります。

(F刑 Sさん)

私は自分の私利私欲だけを求め、自分の欲望だけを考えて生きていましたが、いいかげん嫌になり、今回の受刑生活にて本当に最後の刑務所生活にしようと固く決意しました。(中略)仕事をしようとか勉強をしようとか、誰かの役に立とうなどとは考えたこともありません。しかし、その代償はとてつもなく大きなものでした。(中略)ですが、今からでも自分の努力や考え次第で、将来と自分はいくらでも変えられると思っています。

(F刑 Sさん)
受刑者の絵(一兵さん)

「刑務所アート展」情報

NPO法人マザーハウスも協力している、刑務所アート展プロジェクトの続報です。
8月6日に、公開会議「刑務所でできる文化的暮らしを考える」を開催しました。

前回の会議では、刑務所で表現活動ができる時間は、主に「余暇時間」だということが指摘されました。

今回の会議では、刑務所で表現活動をするうえで、刑務所で使える文具や物品にはどのようなものがあるのか、それらを使ってどんなことができるのかを考えました。

会場には、実際に刑務所で所持できるとされている物品を並べ、これらを「誰でも使えるもの」、「許可されれば使えるもの」、「使えないもの」に参加者とともに分類していきました。

結果として「許可されれば使えるもの」が多く、その使用方法までこまかく指定されていることに、参加者と驚きを共有しました。刑務所で所持できる物品を工夫して表現に使うというのは難しそうです。

「たより2022年9月号」では、刑務所でできる文化的な暮らしについて、対談形式で考えています。ぜひご覧ください。

刑務所アート展の詳細は以下の記事をご覧ください。

受刑者の絵(光りんさん「道化師Ⅰ:呵々大笑」)

編集後記

今回の「『刑務所アート展』情報」を読んで、刑務所の生活は思った以上に厳しいんだなと感じました。

「自分が使っているノートの表紙に好きな模様を描いたりできない」など、使用用途を外れて物品を使用することができない環境のなかでアートを行うことには、かなりの制約があるだろうと思います。

「厳しいルールや環境の中で、自分のしたいことを要求することを忘れちゃうっていうのが、一番怖い」とおっしゃっていた方がいました。刑務所の中でも、より人の尊厳や人権が重んじられるようになっていってほしいと思います。

執筆:黒木萌

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マザーハウスでは活動の一環として、「マリアコーヒー」を販売しております。マザーハウス事務所にて、元受刑者が販売に携わっており、収益金は受刑者の更生・社会復帰支援等に使用いたします。

ルワンダから仕入れたフェアトレードのコーヒーであり、生産地ルワンダの生活や産業の発展にも貢献しています。マリアコーヒーが使用しているルワンダコーヒーは、日本国内のコーヒーシェアにおいて大変貴重な希少種でありながらも、近年の世界中のカッピングコンテストでは上位入賞の常連です。

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