立ちはだかる壁を、諦めずに叩くことによって、必ず道は開ける―五十嵐弘志さん社会復帰10年の歩み
NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。代表の五十嵐弘志さん自身も、前科三犯で累計およそ20年の服役経験がある当事者です。
このたび、社会復帰10年を迎えた五十嵐さんが、出所からマザーハウスの立ち上げに至るまでの道のりを振り返る動画を公開しました。
このnoteでは、動画で五十嵐さんが語った内容を要約してお届けします。
信徒さんから学んだ「目の前の人を大切にする」ということ
五十嵐さんが岐阜刑務所で服役していた当時、名古屋のカトリック布池教会の信徒さんたちが、五十嵐さんのもとを訪れます。そのなかで、五十嵐さんは「目の前の人を大切にする」という学びを得たと言います。
五十嵐さんは刑務所の中で聖書を読み、その学びを実践に移していきます。「キリストと出会って、福音(キリストの教え)を伝えたいと思った」と話します。
受刑中に聖書と出会い、考えたことが今の回復の道の土台となり、それが現在のマザーハウスの活動につながっています。
「帰る場所がない人が多い」 日本の出所者の現実
日本の出所者は帰る場所がない人が多いそうです。たとえば生活保護の申請や身元引受人について、受刑者が出所前に教わることはありません。出所しても、社会的に孤立した人は、行く場所がなく、結局刑務所で知り合った人のところへ行ってしまい、犯罪を繰り返してしまうのだそうです。
一方、欧米では受刑者の部屋に受刑者支援の冊子が置いてあるそうです。「再犯防止のためには、刑務所が変わらないといけない」と五十嵐さんは話します。
出所後すぐにカトリック布池教会へ
受刑中に神父さんと出会った五十嵐さんは、身元引受人が決まっており、出所したら生活保護を受けると決めていました。身元引受人と会う前に、行きたいとずっと思っていた名古屋のカトリック布池教会へと向かいます。
そこで10日間、ホームレス支援の越冬活動を行います。夜回りをしているとき、使い捨てカイロを手渡した方から「ありがとう」と返され、心動かされて涙を流したそうです。
この布池教会での体験が、出所してから回復の道を歩む原点となり、常に社会の底辺にいる人たちのために自分の時間をささげる神父さんの姿から学ばせてもらった時間だったと五十嵐さんは振り返ります。
「今後、自分が故意に犯罪に関わることはしない」五十嵐さんの決意
「絶対に刑務所に戻らないことは、人間だからあり得ない。明日交通事故を起こすかもしれない」と話す五十嵐さんは、その一方で、「今後、自分が故意に犯罪に関わることはしない」と言い切ります。
その裏にあるのは、犯罪に巻き込まれそうな危険な場所に行かないという工夫、なぜ事件を起こしたのかという原点を常に振り返るという習慣、そして、信じている神様が守ってくださるという感覚があり、人を大事にするという大前提があると話します。
立ちはだかる壁を、諦めずに叩くことによって、必ず道は開ける
出所後、五十嵐さんは仕事をしようと100カ所くらい面接に行きますが、仕事は決まりません。そのときに司教さん、身元引受人の佐々木弁護士、シスターに相談したところ、「あなただからできることだから、あなたがやりなさい」と言われ、受刑者への支援活動を始めました。
まさかその活動がここまで広がるとも思っていなかったと振り返ります。出所した当時の所持金は9万円しかなく、お金のない状態でも活動ができたのは、支えてくれる人がいるからだと感謝の気持ちを話します。
これまでの経験を振り返り、五十嵐さんは「立ちはだかる壁を、諦めずに叩くことによって、必ず道は開ける」と語りました。動画では、かつて服役していた岐阜刑務所から始まり、出所直後に滞在したカトリック布池教会、身元引受人となってくれた弁護士さんのいる東京まで、各地を実際に訪ねながらインタビューを行っています。ぜひご覧いただければ幸いです。
(執筆:黒木萌)
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マザーハウスでは活動の一環として、「マリアコーヒー」を販売しております。マザーハウス事務所にて、元受刑者が販売に携わっており、収益金は受刑者の更生・社会復帰支援等に使用いたします。
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