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社会復帰後の孤立を防ぐ重要性―NPO法人マザーハウス会報「たより」2023年1月号Pick Up

NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。私たちは会報誌「たより」を毎月発行しています。
塀の中の受刑者から寄せられた手紙(便り)や絵、社会にいる私たちから送りたいメッセージなどを掲載しています。今回は2023年1月号の内容をご紹介します。


光りんさん「道化師G・・屏の上の老ピエロ」

コロナ禍の感染対策が男性長期受刑者にもたらした影響の研究論文が完成

看護師の中谷こずえ先生より、マザーハウスが調査に協力した研究論文「コロナ禍における感染対策が矯正施設の男性長期受刑者にもたらした影響の検討」完成のご報告をいただきました(学会誌への掲載は2023年3月予定)。
受刑者を対象としたアンケート調査により、刑務所での生活歴・刑期も長い受刑者は、「自分と自分の家族への感染不安」を顕著に抱いていたこと、受刑者に施設内の感染状況に対する情報提供がなされないことが不安要因のひとつとなっていると考えられることなどが示されました。

元受刑者による特別講義 学生たちが感じたこと

マザーハウス代表の五十嵐が国士館大学で今年7月に行った講演に、学生さんたちが感想を寄せてくださいました。その一部をご紹介します。

再犯率が高い理由として身寄りの存在がないからだと考える。
なぜなら、身寄りの存在がいれば自分以外の生きがいや楽しさを見いだせると考えるからである。
(中略)
犯罪をしたから見放すのではなく、犯罪をした過ちを真摯に受け止め社会復帰のきっかけにしてほしい。

刑期を終え刑務所を出所しても、社会に居場所がない、受け入れてもらえる場所がないことから再び犯罪をしてしまう、この点、社会の犯罪者に対しての考え方として改めることも重要になると考えます。
確かに、前に罪を犯し、刑務所に入った人を受け入れることはリスクや恐怖心からスムーズな受け入れや、理解することは困難であると考えます。しかし、元受刑者側の立場に立ち考えた時、社会に受け入れられない、支援してくれる人がいないことは辛く、苦しい状態であると予測します。再犯率が高い理由も、そのような社会の体制にあると思います。

受刑者の多くが孤立であり、社会とのコミュニティがないことが原因で再犯を繰り返してしまうことが分かりました。そのため、ボランティアとの文通を通して、コミュニケーションを交わすことで、更生や社会復帰をしやすい環境を構築されているところに印象が残りました。


エイル・Nさん「2022年の世界的大混乱」

「塀の中のたより」~受刑者からの手紙~

受刑者から私たちのもとに届いた手紙のうち一部を抜粋してご紹介します。なお本人の許諾を得て掲載しています。

受刑生活は、社会の中でルールを守り、人様に迷惑を掛けず暮らし、ゆくゆくは人から受けた恩を社会に返していけるようになるための(将来のための)時間だと考えていますが、事実として懲罰になって信頼を裏切った私を再び信じようとしてくれた工場担当さんや、折に触れて声を掛けて下さる工場主任さんをはじめとする職員さんに対して、日々、基本動作や勉強をし続けること、刑務作業で努力し続けることをとして、その姿を見せ、ひいてはこの目標を達成するための第一段階に立つことで、恩を返す時間であるとも考えています。
 返さなくてはならない恩がたくさんあり、そうして背負っているものは大きいので、プレッシャーはあります。ですが、20年以上生きてきて、裏切ったのにも関わらず、手を差し延べてくれた経験が家族以外では初めてなので、決してマイナスな影響はなく、むしろ鼓舞してくれており、日々が充実しています。この経験から、自分のことを好きでいられて、周囲の人から私の存在を認められて、活躍できる場所があれば、「再犯する、しない」という次元ではなく、積み上げた実績や責任から「犯罪なんてできない」という次元になり、再犯することは無くなるのではないかと思いました。

M刑 Oさん


編集後記

読者のみなさん、新年あけましておめでとうございます。本年もマザーハウスの活動をより多くの人に知っていただけるよう、編集部一同尽力してまいります。

2023年最初の「たより」を読みながら感じたことが、たとえ罪を犯してしまったとしても、その先に「出所者を受け入れる場所」や「つながり」があれば、再犯率は圧倒的に下がるのではないか、ということでした。

マザーハウスは「たより」や「ラブレタープロジェクト(受刑者との文通プロジェクト)」を通じて、また、出所者ひとりひとりにできる限り寄り添える形で、「受刑者や出所者を受け入れるつながり」をつくろうとしています。

まずは現状を多くの人に知っていただくことが、受刑者・出所者の方々の社会復帰の一助につながります。
今年も編集部で「たより」をはじめとする様々なマザーハウスの活動を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

執筆:田代智美

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ご支援の方法③マザーハウスオンラインショップでの、フェアトレードコーヒー「マリアコーヒー」等のご購入支援

マザーハウスでは活動の一環として、「マリアコーヒー」を販売しております。マザーハウス事務所にて、元受刑者が販売に携わっており、収益金は受刑者の更生・社会復帰支援等に使用いたします。
ルワンダから仕入れたフェアトレードのコーヒーであり、生産地ルワンダの生活や産業の発展にも貢献しています。マリアコーヒーが使用しているルワンダコーヒーは、日本国内のコーヒーシェアにおいて大変貴重な希少種でありながらも、近年の世界中のカッピングコンテストでは上位入賞の常連です。
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