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【動画ブートキャンプからブランド人へ】タカオミインタビュー(前編)/こぶしで殴り合った合宿

7月7日、NewsPicksアカデミアのゼミ合宿、動画ブートキャンプが小田原にて行われました。
プロフェッサーを務めたのは動画クリエイターのONE MEDIA代表 明石ガクトさん。

明石さんといえば、Facebook、Twitter、 LINEなどの公式動画パートナーとして動画コンテンツを日々配信する他、ショートフィルムやデジタルサイネージでのコンテンツ展開も行っています。

そのブートキャンプに一般参加し、見事チーム優勝を勝ち取った動画クリエイターの吉田貴臣さん(以下タカオミさん)はその後、NewsPicksやZOZO TOWNから動画制作の依頼を受けるようになり、自身のサロン「タカオミ動画編集室」を開設しました。

まさにNewsPicksアカデミアをきっかけに、今、ブランド人として大きく飛躍しようとしているタカオミさん。そんな彼にインタビューしました。

今回のnoteではブートキャンプの内容を中心にご紹介し、次回(後篇)ではタカオミさんのクリエイターとしての素顔に迫ります。

トロントから、何としても参加したかった合宿

――タカオミさんが動画ブートキャンプの詳細を知った時は、カナダのトロントにいたんですよね。

はい。僕はカナダで映像制作プロダクションをやっていたのですが、ブートキャンプには「何としても行きたい」と思いました。

参加費に加え、トロントからの渡航費用も考えると40万円はかかります。でも何が何でも行きたい。これに行かなかったらもうないぞ、と思いました。

――タカオミさんは、ONE MEDIAの前身、WHITE MEDIAの頃から、明石さんに注目していた流れがあったから、彼の下で学びたい気持ちが強かったのですよね。

春に一時帰国した時に、明石さんにどうしても会いしたいとメッセンジャーを送っていたくらいです。その時は都合がつかずお会いできませんでした。だからこそ、ブートキャンプの話を聞いたときは、どんな手を使ってでも、それこそ借金をしてでも行こうと思っていました。

――その時、箕輪編集室で動画ブートキャンプに行く人には補助金出すよと箕輪さんが言ってくれていたんですよね。

やっぱりそういう存在がいてくれたのはありがたかったです。でも、それがあってもなくても合宿には行っていたと思います。

映像をサイエンスする明石ガクトの講義

――そして、いよいよ合宿へ。初日はどんなことをしたのですか?

合宿所のセミナールームに集められて、動画とは、というような明石さんの講義から始まりました。『ONE MEDIA完全動画マニュアル』というようないかつい書類も全員に配られて。

正直、マニュアルをぱらぱらめくって読んだ時は、結構余白が多くて書いてあることがよくわからなかったのですが、それを明石さんが3、4時間かけて丁寧に説明してくれて。ようやく分かったという感じがしました。

――どんな内容だったのですか。

例えば、動画の構成についてのお話です。
ONE MEDIAの動画は、HOOK、INTRO、BODY、MESSAGEという構成で作られているそうなんです。

これまでは「SNSのタイムラインに流れてくる動画を、ユーザーが視聴し続けるかどうか判断するのにかかる時間は、約5秒」という話がされていましたが、明石さんは「近年さらにその時間が短くなってるのではないか」という仮説を立てています。

明石さんによると、ユーザーが動画を視聴するか判断するのにかかる時間は、0.7秒。まさに一瞬です。

そのためにONE MEDIAの動画は、視聴者がタイムラインをスクロールする指を止めるための取っ掛かり、つまりHOOKが最初の1秒間に含まれているんです。

合宿の課題で僕らのチームが制作した動画では、「おっさんに年齢は関係ない」という言葉がいきなり飛んでいきます。これを見た視聴者は、「えっ?どういうこと?」と感じて思わず動画を見てしまう。これがHOOKです。
また、他におもしろかったのは「2S(Stance, Style)」というメソッドですね。

――2Sとは、どういうことですか?

自分がどういう立場から物事を発信するか、ということがStanceなのですが、そのStanceによってStyleが決定されるという話です。明石さんはいくつかの世界的に有名なWEB動画メディアの作品を用いて、そのことを説明してくれました。

例えば、僕らが作った動画は、LINEの通知が来たときのように、ぽこんぽこんとメッセージが下から上に流れるStyleでした。高校生が、友達からLINEが来た時のノリで画面を見るような。

そこでの発信者としての僕のStanceは、その子の「クラスメイト」です。そのStanceを決めたから、動画のStyleはLINE風になったというわけです。

――動画づくりだけでなく、ライティングや図解など、いろいろなクリエイティブに共通する話しのようですね。

そうですね。テクニックやスキルの話というよりは、動画制作の本質的な話しがほとんどでした。

――教え方には明石さんらしさを感じましたか?

すべてが明石さんらしかったです。

明石さんご自身は、動画に対する熱意が凄まじくて、僕ですら狂気じみていると感じる程です。動く映像で、何かを伝えることに対しての執着心みたいなものが、もうイッちゃってるなと。

でも、それをロジカルに、すべてに理屈をつけて納得するところまでやるのが明石さんなんじゃないかなと。これ以上細かくできないというところまで動画を分解しているんです。

――アートでありながら、サイエンスという感じですね。

限界まで追い込んだ課題制作

――話を戻して、合宿では講義の後、4人チームでの動画制作の課題に取り組んだのですよね。テーマは何だったのですか。

さよなら、おっさん」です。このテーマをどう料理しようが自由。NewsPicks CCOの佐々木さんにインタビューする時間が各チーム20分程度与えられていました。

――チームではどんな分担で制作を進めたのですか。

最初は、4人でバーッと意見を出し合いました。もうこれ以上出ないというぐらい。そして、「何も考えずに有名大学に行って、有名企業に就職するような人は、時代が見えてないんじゃないか、未来のおっさんなんじゃないか」という観点で、若者に警鐘を鳴らすような映像にしようと意気投合してテーマを決めました。

その後、佐々木さんにインタビューし、メンバーには素材探しをお願いしつつ、僕は一時間程度の仮眠を取りました。

そうして目覚めた後は、朝の6時ぐらいまで一人でぶっ通しで編集して、完成させました。

――完成した動画を見てどうでしたか。

それがまったく面白くなかったんです。「若い人は恋愛や読書や仕事をして、脱おっさん化したほうがいい」ということを語る動画だったのですが、その内容がおっさんぽいし、佐々木さんのインタビューだけで動画が続いているのも、見ていて飽きる。

その時、僕以外のメンバーは全員寝ていたのですが、これはいかんと思って部屋を出てひとりで散歩しました。

会場の外をぐるーっと歩きながらふと、「新しいことをやったら脳が活性化して若返る」というようなエビデンスがあるかもしれないと思いついて、検索したらそれが出てきたんです。

これだ、と思いました。これを埋めれば、主観的な主張を医学的に、ロジカルに説明できると。

その時、これは絶対優勝できると確信しました。

――その時メンバーは全員寝ていたんですよね。

はい。時間がなかったので、寝ている人たちには何も言わずに動画の作り替えを始めました。9時すぎの発表の時間まで、あと2時間少しというところです。

そして起きだしてきたメンバーに新しい骨子を見せて、これで作ろうと話したら、みんなもこっちの方がおもしろいと賛成してくれて。そこからはフル稼働で、朝ご飯も食べずに、とにかく素材を探せ、写真を探せとチームで動きました。

――そして、朝9時から明石さんへの発表が始まったわけですね。

他のチームの発表が押していて、僕らは1時間半ぐらい遅れたんです。それが功を奏して。直前10秒前まで編集していたものを何食わぬ顔で、これです、と見せました。

――滑り込みセーフ(笑)。制作した動画を見せていただけますか?

こちらです。

1位を取りにいったから、1位を取れた

――明石さんからはどんなフィードバックでしたか?

内容としてはかなり高い評価をもらいました。もちろん、作り込みが甘いところは指摘されましたし、僕もそれは感じていたので、動画の演出について細部に至るまでフィードバックをもらい、最終の全体発表会までメンバー全員で必死に修正を続けました。その時も発表の数分前まで編集をしてましたね。

――そして、優勝できたのですよね。正直、優勝は取りにいっていたのですか。

最初から優勝は取りに行っていました。絶対に優勝したかったですね。

――ほとんど寝ずに発表の10秒前までぶっ続けの作業をされて。そこまで頑張れたのはなぜですか。

やっぱり相手が明石さんだったから。こいつただものじゃないと思わせるには、結果で勝負するしかない、優勝しかないと思っていました。合宿参加者の中で「僕が誰よりも動画をやっている」という意地みたいなものもありました。

それに、箕輪編集室ではトップクリエイターと言われていたから、「持ち上げられて調子に乗ってる」と思われたくなかったんです。

明石さんからも、かっこいいだけの中身がない動画は駄目だと、思想が感じられないのは単なるカラオケビデオに過ぎないと言われていたんです。暗に僕の作品のことを指しているのはわかっていました。それで、中身も作れることを証明してやると本気でぶつかったのです。

(後編に続く)


写真:池田実加
編集:柴山由香

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