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蛯原ゼミ 「テクノロジー地政学」 シンガポール特別編 旅行記風レポート

2019年の春に行われた蛯原ゼミ。同年秋に約15名のゼミ生が蛯原先生の拠点であるシンガポールに訪れ、特別ゼミが行われました。

期間は2019年11月22日(金)〜2019年11月24日(日)の3日間。(今振り返ってみますと新型コロナウィルス感染拡大の少し前の時期でした。あのタイミングにシンガポールに行けてラッキーだったと思います)
現地集合、現地解散。
宿泊先はホテルの人もいれば、Airbnbで部屋を借りる人もいてそれぞれ。
この特別編についてゼミ生の金子がレポート致します。

はじめに

この企画が出てきたのは、2019年春ゼミの最後の打ち上げ時に「蛯原先生のいるシンガポールまで行ってBQQをしよう!おー!」という声が上がり、無茶ぶりだったのにも関わらず蛯原先生が快諾してくれました。
ただその時点ではまだ日程は「秋ぐらいかな」としか決まっていませんでした。
それから何ヶ月か経ち、8月頃にアカデミア ゼミスタッフの方がシンガポールツアーについてゼミ生にアンケートをとったらそれなりに人数が集まり、本当に実現しました。

ちなみにFacebookグループのタイトルは
「蛯原先生と行くシンガポールツアー!!!!!」
で、そのヘッダーの画像は以下でした。まるで勉強する気配が感じられません 笑

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シンガポール1日目 (2019年11月22日)

1日目は、私がそうでしたが早朝にシンガポールに着く人が何人かいて、朝7時〜9時の間にAirbnbで借りた部屋に少しずつ集合し、近くのローカルレストランに朝食を取りました。
下2つの写真は、Airbnbの部屋に着いた7時頃の部屋からの景色とローカルレストランでとった食事です。

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食事を取り始めた時はまだ10時頃だったと思いますが、既にかなりの気温の高さでした。「この暑さ、30度近くあるのでは!?」と思ったくらいでした。

食事が終わった後残った4人でそのまま円卓を囲みながらAI事業の可能性、日本の教育と付加価値評価論、個人が持つコアバリューについて議論が自然発生的に始まりした。
シンガポールは日本から近過ぎず遠過ぎずという距離感で、多国籍な人々で形成されているせいかニュートラルな空気感が漂い、シンガポールで抽象度の高い話を議論するのにはちょうど良い、と思いました。

この議論の後、Airbnbで借りた部屋に一旦戻ってからJETROシンガポールに移動。ここでさらに何名かのゼミ生と合流。JETROさんからはシンガポールの国としての経済の概況、スタートアップ事情のご説明頂きました。

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以下は、説明頂いた内容の内、私が気になったキーワードです。

・人口564万人
・経済成長率 2020年は1%以下まで下がると予想されている
・政府支持率が急降下した時期があるが、1970年代以降の移民受入の反動
・将来の海面上昇によって水没エリアが広く、温暖化対策が重大な課題
・カジノ2つの税収が大きい(2019年度 約27億シンガポールドル)
・政府の投資ファンドの利益が大きい(2019年度 約170億シンガポールドル)
・サービスが中心だが、製造業も重要と位置付けられている
・石油化学産業、航空産業、医薬・医療にも力を入れている
・金融政策としては政策金利を設定せず、為替管理政策を実施
・シンガポールの左半分で自動運転レベル3の実証実験が行われている
・AI事業に注力

JETROシンガポール訪問後は一旦解散となり、それぞれ別行動に。
私はシンガポールナショナルギャラリーに行き美術鑑賞するグループに加わりました。シンガポールナショナルギャラリーでは、審美的に美しいというよりはシンガポールの歴史に関する作品が多い印象でした。美術品を見ることでシンガポールの文化的背景や懐の深さを少し知ることができたと思います。下の写真は美術館の外観です。元は裁判所だったそうです。建築物としては壮大という形容がぴったりな外観と内観でした。

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美術鑑賞の後は、再び8名ほど集まり夕食を共にしながら、再び自然と議論タイムに。場所はMakansutra Gluttons Bayというところでした。物価は日本よりも安く感じるところもあれば高いと感じるところもあり、ここは少し物価高めな印象でした。

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食事をして少しするとまた自然発生的に議論タイムに。シンガポールの歴史と日本との関係、日本がどれだけ住みやすいか、美術館、絵画の良い悪いの見方などについて議論。Airbnb組は戻ってからも議論は続き、長い夜に…

シンガポール2日目 (2019年11月23日

午前中は、蛯原先生とMicrosoft アジア太平洋地区ライセンスコンプライアンス本部長の岡田兵吾さんの著書対談イベントに参加しました。
参加者は我々ゼミ生の他、シンガポールに駐在している日本人の方も多く参加し、全部で50名くらいいたのではと思います。会場の雰囲気としてはNewsPicksのイベントとほぼ同じな印象でした。

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上の写真は対談イベント開始直後のものです。多くの質問が寄せられました。
対談の中で私が個人的に気になったフレーズは以下でした。

英語もポジティブな表現が基本だが、以外とその事が知られていない
英語も敬語と気遣いが大事。英語も機微を伝えられる
重要フレーズ:let me finish.., by the way
透明性が大事。考えをオープンにする。上に対して改善を提案する
自分の意見を言うことが大事
カリスマ経営から共感力に。日本人は共感力は低く、インド人は高い
会話する時の姿勢 Hungry Humble Proactive Comprehensive
常にポジティブに捉える
活躍している人はアートに精通し、コンテキストを紐解く能力が高い
海外では、ミッションを言わないと成功しない
オピニオンを持つのが大事
自分を応援してくれる人を信じ、大義を信じる
世界を良くするやつ、変態を認めてナーチャする

午後はゼミ生みんなで国立博物館に行き、ガイドの方の詳しく素晴らしい説明を聞きながらシンガポールの歴史を学びました。どのような経緯でシンガポールが成り立ったのか、各時代の工芸品や、リー・クアンユーの「涙の演説」の動画、各時代のリーダーの肖像画等、多くの資料がありました。自分の中の「シンガポール」というコンテキストが分厚くなりました。

国立博物館の後は一旦解散し、レストランに再び集合し夕食をとりました。その時に出て来た甘辛味の蟹料理を下の写真に掲載しました。ただ、どこに行っても1分もすれば、ゼミ生はすぐにテクノロジー地政学的な話をするのが好きなようで、色々な問題に対して、抽象度の高い言葉でそれぞれのグループで議論していていたような気がします。
そして、1日目に感じたようにこういう議論をするのに、シンガポールという国は、文化的にも物理的にも日本のことを完全に忘れない程度にいい具合に遠い、日本からいい感じな離れ具合だと思いました。お互いの主張や指摘や気づきがなんの淀みなくスッと入って来て、議論がスムーズに進むことができたような気がして、単純にただただ議論するのが互いに楽しいという雰囲気だったと思います。

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シンガポール3日目 (2019年11月24日)

3日目がいわゆるゼミ特別編の当日でした。午前はみんなそれぞれでゆっくりし、午後のゼミ開始の前に何人か集まってランチ。以下の写真はランチで入ったお店と料理です。男ばかりが8名集まりラフな格好で写真のようなスープをすすっていて、ビジネス系ゼミというよりはムエタイ合宿っぽい絵でした。

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ランチの後に会議室のあるビルへ移動。次の写真はビル付近の風景です。日曜日ということもあって、行き交う人はまばらでした。
そこでまず最初に行われたのが、前日の著者対談に一緒に参加されていた方を急遽講師としてお招きし、外需グローバルについて講義頂きました。その講義では「内需完結」「内需グローバル」「外需グローバル」「大内需外需連結グローバル」の4つの考え方について学びました。詳細は記載できませんが、シンガポールや東京を例にして分かり易く説明頂いた「外需グルーバル」という考え方は、テクノロジー地政学を学ぶゼミ生としては大変有意義な内容でした。詳細を知りたい方、興味のある方は別途お調べ頂けたら幸いです。

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「外需グローバル」論の後、テクノロジー地政学シンガポール特別編が始まりました。大きくは以下の2部構成で、どちらもゼミ生が企画したものでした。

1.   2020-2025の投資環境とベンチャービジネス
2.  シンガポール from my eyes(シンガポールの印象)

1. 2020-2025の投資環境とベンチャービジネス

4, 5人のグループ3つに分かれて15分間議論、グループ発表2〜3分、蛯原先生の講評、キーフレーズを決定という流れのグループワークでした。
15分間の議論では、藁半紙に各チームで話し合いながらキーワードを記載し、それを使って発表を行いました。

短い時間で直ぐ議論に入ることができ、きっちりプレゼンが発表時間も意識してコンパクトになされたのはあまりに自然に行われましたが、今振り返ってみるとなかなかあり得る話ではない。それができるくらいに、ゼミ生同士でお互いの理解が深まり、元々不要だった忖度のバーが自然消滅され、また、おそらく春ゼミ後もみんなそれぞれで春のテクノロジー地政学ゼミで学んだ様々な考え方のフレームワークを持って様々な仕事に当たって来たんだなとそう思いました。このゼミ、卒業後に益々伸びて来ているなと。ちなみにFacebookグループは春ゼミ中は静かなものだったんですよね。春ゼミ最終日ぐらいから盛り上がって来たような気がします。

3つのグループ発表の結果をさらに纏めたのが以下のホワイトボードの写真2つです。

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上のホワイトボードの写真はグループ発表で出たキーワードです。一番のポイントは、2020〜2025年という向こう約5年間という短めのスパンでは、社会にインパクトを与えるようなプロダクトやサービスというのは、Uberのような過去の例を考えると、それはブレイクはまだしていないが実は既に今世に出ている、という蛯原先生の指摘でした。
このグループワークとして、個人的に特に気になったものとして、グループ発表のキーワードにもある「地方」、この地方のビジネスがこれから急速に拡大していくというものでした。現在の地方ビジネスは以前のものと様相が異なり、イノベーションが地方起点に流れつつあるとのこと。それは地方の問題がより深刻な状況になっていることと、既存事業の拡大が一般的に簡単ではなくなって来ているのと、その両方によるもののようです。ゼミ生の中には地方問題にビジネスとして取り組んでいる人も何人かいますが、私も先延ばしせずに直ぐにでも取り組んで行きたいと思いました。

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上のホワイトボードは、グループ発表の内容を纏めてワンセンテンスとキーフレーズで表したものです。

(2020〜2025年においては)「データビジネスが社会に定着・実装が進み、既に芽生えているスタートアップ が世界に普及する」
(投資環境としては)「バラマキから回収へ」

2. シンガポール from my eyes

休憩後に行われた2つ目のグループ発表では、各自シンガポールの印象を振り返り、1人2〜3分で個人発表し、蛯原先生の講評という流れで行いました。

この発表では、発表者が各自のシンガポールに来て得た気づきや印象を語りながら、聴いている方はリアルタイムにそれをワンセンテンスで言語化する、ということを行いました。聴いている側から言語化するのは瞬発力を問われるのでそういった意味でも良いトレーニングであり、なかなか面白いセッションでした。

言語化されたものをさらに纏めたのが以下のホワイトボードの写真です。

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シンガポールでは自然がある風景の方が人工的である世界が同質化している、といった興味深いキーワードが出た他、ここでも日本の地方の話が浮かび上がっていました。

ゼミ特別編の後は締めイベントとして、蛯原先生とゼミ生でバーベーキューをしました。やっぱり仲間同士でワイワイと食事するというのは何にも変えがたいものだなと思いました。

最後に

その後は、それぞれのタイミングで帰国をしました。
シンガポールに行く前から少しそういう雰囲気があったのですが、このシンガポール特別編の蛯原ゼミは分かりやすい言い方すると「大人の修学旅行」でした。中学か高校の同級生が集まり、引率する先生と一緒に時間を過ごしているような、本当に愉快な修学旅行そのものでした。

NewsPicksゼミはあくまで最初のきっかけで、大事なのはその後の個々の活動そのもので、ゼミ生それぞれで社会に良い影響を与えることが最高の結果だと思います。一方で、ゼミで知り合った仲間と関係を深めて行きながら、何か面白いものが何かできたら最高だなと感じました。

執筆、編集:金子周次

<これまでの蛯原ゼミレポート>

第1回:テクノロジー地政学 思考のフレームワーク1

第2回:テクノロジー地政学 思考のフレームワーク2

第3回:中国

第4回:データ

第5回:「次の」そして「最後の」超大国【インド】

<プロフェッサープロフィール>

蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー。1994年、横浜国立大学経済学部卒、㈱ジャフコに入社。以来20年以上にわたり一貫しスタートアップの投資及び経営に携わる。 2008年、独立系ベンチャーキャピタルとしてリブライトパートナーズ㈱を創業。 2010年、シンガポールに事業拠点を移し東南アジア投資を開始。 2014年、バンガロールに常設チームを設置しインド投資を本格開始。 現在シンガポールに家族と在住し、事業拠点はシンガポール、インドと東京の3拠点。

<ゼミ詳細>

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