「キャリアの『計画』なんて、立てられません…」本音のキャリア相談室#02
仕事とキャリアの悩み、プロに直接きいてみた
面接に落ちたくない。「会社に合った私」になるのは間違い?
💡まずは「私に合った会社」を探すのがいい
「私に合った会社」に出会うことを大事にした方がいいと思います。
特に就活の時は、選考「される」立場でもあるので、会社の求める像に無理やり自分を合わせようとする気持ちはよくわかります。ただ、結局入社してからが本番ですから、自分を繕って入るのは、「自分を偽って人と長く付き合う」ということと変わらない、構造的に難しいことなのだと感じてしまいます。
もちろん選考に受かる努力はすべきです。ただ、どんなに優秀に見える人でも落ちるところは落ちます。優劣ではなく相性なんです。 なので、この前提に立って、自分に合った会社を探すことを大事にした方がいいと思います。
相性である以上、ある程度数を当たることも重要です。みなが知っている有名企業、大企業だけにとらわれる必要もないと思います。
ただ、就活生の方で結構多いのは、自分に合う合わない以前に、自分が大事にしたいことが曖昧なケース。その場合、自分が大事だと思うことを仮置きして、行動してみてください。考えるのは大事ですが、考え込みすぎないこと。途中で変わったら変わったで、全然いいんです。
そして、誇れるものがないとのことですが、多くの方のキャリア相談を経て感じるのは、誰にだって何かしら強みや良さは絶対にあるということ。
むしろ、それをちゃんと言語化してみるのが大事です。1人でわからなければ勇気を出して友人や、もし可能なら先輩の社会人の方に聞いてみてもいい。自分の欠点が目につくかもしれませんが、足りないところを満たそうと思うときりがないので。私だってそうです。
私は仕事上、数々の企業で経営陣の方とお話ししますが、いま活躍されている方も「新卒の時は、自分より優秀な人は周りにたくさんいた」と多くの方がおっしゃるのです。結局、大学生の時点でのスキルの高低は誤差なのだと思います。だからこそ、とにかく機会を作り続けて行動することを大事にしましょう。
最後に、選考に落ちることもあるでしょうが、「落ちてもしょうがない」と思えるくらいに私のことをはっきり伝えること。それで駄目なら、あなたが悪かったのではなく相性が良くなかったということです。一喜一憂する必要は全然ありません。
自分の伸びしろがどこにあるのかわかりません
💡キャリアは「仮決め」の連続。客観視⇔行動のサイクルを回そう
まず、完璧にわかっている方はほぼいません。そこで焦らなくていい。その前提で、キャリアを「仮決め」していきましょう。
自分が大事にする価値観や要素を、たとえば『キャリアづくりの教科書』の2章で書いたような方法を使って、少しずつ行動し、ときには他人も巻き込んで壁打ち相手になってもらうなどし具体化していけばいいのではないかと思います。
避けた方がいいのは、「わからない」ことを理由に行動せず悩み続けることです。学生の方なら就活で、社会人の方なら「エア転職」(転職しないけど転職活動だけして自分を客観視してみる)などの形で行動してみて、違和感があったり、ピンと来たりしたところを言語化してみましょう。
いろいろな会社を見て、「ここはいいな」と思ったら 「なぜそう思うんだろう」とか、「ここの人たちはなんかしっくりこないな」と思ったら、「どこに違和感あったんだろう」といったように、行動と言語化のサイクルを回すことが大事だと思いますね。
「仲良く楽しく働きたい」って、甘いですか?
💡「仲良く仕事ができる」もスキルの1つ
自己認識がしっかりできているのがいいですね。そこがすべてのスタートですから。
その前提で、「許される」とか「許されない」とか、そんなことは全然ないですよ。周りの人と仲良く仕事ができればいいと思えるということはともに働く人と仲良く仕事ができているのだと思います。それも、素晴らしいスキルの1つです。
拙著の3章でも、人が大切にする要素として
「社会目的志向」
「コト志向」
「ヒト・環境志向」
の3種類があると書きました。ご相談者の方はきっと、その中でも人への感度が高い「ヒト・環境志向」なのではないでしょうか。それも1つの才能でありスキルです。
ただ、周りからどう思われるか「だけ」を重視して仕事をしてしまうと、結果として自分のスキルや市場価値がなかなか高まらない可能性もあります。
自分の特性を認識したうえで、「自分としてはどのような力をつけていければいいか」「そのためにどんな機会を掴みにいけばいいか」を常に考えながら機会を選択していけるとより良いかとは思います。
正直、会社の「看板」で仕事をしています。外に出るべき?
💡足りない部分を明確に。意外と社内に活路があるかも
まず、自分のことを客観視できていること自体、すごいと思います。誰にでもできることではありません。会社の看板で仕事をしているけど、看板だと気付いてないこともたくさんあります。なので、とてもいい状態でもうスタートラインに立てている。
だから、もし看板に依存した営業をしているのであれば、今の会社の中でも、たとえば別の商材、もう少し競争力が弱いものや、ソリューションを含めた提案が必要なものなど、違う営業スタイルを確立する機会を掴むことから始められると良いのではないかと思います。
必ずしも「すぐに転職するのが正解」とは言い切れません。
もちろん、社内でそのような機会を作るのがどうしても難しいのであれば、社外でそういう機会を探すのもありだとは思います。いずれにせよ、ずっと「看板」に甘え続けて「個」で戦わないと成長は止まるので、どこかで「個」で戦う経験は積んだ方がいいでしょう。
また、「自分1人の営業力だけで活躍するイメージがわかない」とお話しされていますが、まだ挑戦はしていないわけで、やってみたら意外と今まで見えていなかった自分の良さが見えてきて活躍できるかもしれませんよね。
実は提案力があるのかもしれませんし、顧客のニーズを掴んだりする力もあるかもしれませんし。そこにさらに商品力が強いと、もはや看板がなく商品力が高くないものでも売れるのかもしれません。まずは新しい機会を掴んで、今の自分に何ができて、どこが足りないのかは、より明確にすることを優先する方がいいかもしれませんね。
選考で落選続き。なにがいけないんでしょう?
💡理由を明確に。落ち着いて、長期視点でのアクションを
書類を提出している会社や職種にもよりますが、落ちているということにはきっと理由があるはずです。
ときには、客観的な意見をもらえる他人の手も借りながら、「何が理由で通過できないのか」を言語化して具体的にすることから始めてみてはどうでしょうか。同じ理由で繰り返し落ちているのであれば、やっぱり変えないといけないですし、希望する待遇や条件に合っていないのかもしれないですね。
嘘を書いて書類選考に通過しても、結局面接でそれは見抜かれてしまいます。万一入社できても活躍できずすぐ退社ということにもなってしまいかねません(拙著第6章「何が転職後の成功と失敗を分けるのか」参照)。
「何が今自分に足りないのか」を見つめるのは苦しい作業かもしれません。しかし、成長はそこからしか始まらないのも事実なので、身につけたい力、ありたい姿が描けたら、もう少し長い時間軸で考え、たとえば自社内で成長できるような機会を掴みに行く手もあるかと思います。
給料を理由に起業に踏み切ってもいい?
💡起業が最も給料が下がるリスクが高い。市場価値の観点だとプラスも
やはり人生は先に進むにつれ給料を下げづらくなる傾向はあるので、たしかに下げるのであれば早い方がいいでしょう。
ただ、起業は誰も成功を保証してくれないので(失敗も相当多いのが現実です)、実はいちばん給料が下がるリスクがあります。借金を背負う可能性すらありますから……。
一起業家として起業は魅力に溢れているとは思いますが、一方で、何もないところから何かを創造するのは、プロダクトにしろ、組織にしろ、そんなに生易しいものではないですよね。それでも意志と覚悟がある、というのであれば早めにやってみてもいいと思います。
起業は給料を上げる手段としてはリスクが高いことは知っておいてもらった方がいいですが、一方で自分の市場価値は高めてくれるものだと思います。最近は、起業して仮に失敗しても、むしろいい経験だと評価されるケースも多いです。失敗しても、 戻って来られる社会になりつつあるとは、キャリアを長く見てきた立場からも思いますね。
気付けば中長期の目標が先延ばし。どうしたら抜け出せる?
💡1人で考えこまずに、一歩先行く人に聞きに行く
まず、さらっと書いていますが、人生のテーマと思える内容に出会えているのは相当素晴らしいことですよね。 見つかっていなかったらダメだというわけではないのですが、「出会えている」と自分で言えるのは、とても素敵なことだと思います。
中長期的なアクションについては、原体験に紐づいた長期テーマがあるのだとしたら、そのテーマにおいて何を達成したいのか、そのために何が大事で、自分には何が不足しているのかなど、必要な能力、その能力を身につけるためにやるべきことを書き出してみてください。
そして、必ず優先順位を決めること。あれもこれもではなく「まずやるべきこと」を明確にすることが大事です。
また、人生のテーマに出会えているのであれば、それを実践している人や、自分より少し先にいる人がどう考えて、どう意思決定しているのかを聞きに行くのも結構大事だと思います。
相談者の方の文面を読む限り、全部自分で考えようとしすぎている部分もあるのではないかと拝察しました。 聞くのはタダなので、どんどん聞いたらいいと思いますよ。
(第3回へ続きます)