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はじめに——STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか#1

『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』は、17人の起業家たちへの直接インタビューから作成した26のケーススタディを収録。体系化された「知識」と、生々しい「実践」の往復によって、起業の定石を浮き彫りにする1冊です。

私たちNewsPicksパブリッシングは新たな読書体験を通じて、「経済と文化の両利き」を増やすことを目指しています。


はじめに 

スタートアップ業界の内側に閉じたノウハウを開放する

「どうやったら起業できますか?」

最近そう質問してくる学生が増えた。起業がキャリアの選択肢の1つとしてメジャーになってきたからだろう。
厳しい言い方をすれば、「起業したいのなら誰かに教わるのではなく、自分で調べて学びなさい」と回答するのが正しい。起業は人に言われてするものではないし、受身な発想で成功するものでもないからだ。

しかし、冷静に考えてみると、たしかに会社設立・登記のハウツー本は存在するものの、どうやったら成功にたどり着けるか、詳しく解説している本は見たことがない。
本屋に行っても、Microsoft、Apple、FacebookやAmazonといった米国企業の創業記はあるものの、国も次元も違い自分ごとにならない。日本でいえば、ソニーやホンダなど、創業が自分が生まれる前の企業だったりして親近感が湧かない。
日本国内でここ2〜3年以内に上場やM&Aでエグジットした会社に関する書籍はなかなか見つからない。インターネットで調べてもニュース記事やブログがある程度で、起業する上で押さえるべきポイントが体系的にまとまっていない。起業したいと思っても、どうやったら成功確率が高まるのか学びようがないのが現状だ。

一方、スタートアップ業界を内側から眺めると、そのコミュニティがとても狭いものであることに気付かされる。実は、優れた起業家は同じコミュニティで互いにノウハウを交換している。しかし、コミュニティの外にいる人にとっては、中でどのようなノウハウが交換されているのか知るよしもない。

そこで、筆者(堀)はYJキャピタル(ヤフーの投資子会社)の代表という立場を利用して、業界を代表する起業家のみなさんを招待し、これから起業する人に成功のノウハウを共有してもらうイベントを頻繁に開催した。
どの起業家も信じられないくらい親切で優しく、これから起業を志す人のためならと無償で自身の経験を語ってくれた。とても忙しいにもかかわらず、何度も何度も時間を割いて自らの経験談を共有してくれた起業家のみなさんには本当に頭が上がらない。

「Pay it forward(誰かからの親切を他の誰かにつなぐ)」の精神がスタートアップ業界にはある。先輩起業家に教えてもらった成功の秘訣を、これから起業する人に伝えなくてはならない。そう思い、初めて起業する人を支援するアクセラレータプログラム「Code Republic」をYJキャピタルと共同運営するEast Venturesの衛藤バタラさんに、先輩起業家のケーススタディを講義形式で伝えるプランを相談した。
バタラさんはすぐさま賛同し、「堀さん、それ絶対本にしたほうがいいですよ」と本書執筆のきっかけとなるアイディアを出してくれた。

講義に書籍というキーワードが加わった瞬間、反射的に経営学者である慶應義塾大学の琴坂将広准教授に連絡を取り、本構想を話した。ケーススタディからの示唆をアカデミックにまとめること、そしてその示唆を一人でも多くの学生に届けることで起業をキャリアの1つとして当たり前にしたい、と伝えたところ琴坂先生は身を乗り出して快諾し、本書を共同執筆することになった。

ベンチャーキャピタルであるYJキャピタルとEast Venturesが実践的な事例を投資の最前線から入手し、アカデミアを代表する経営学者が分析し、法則性を見出す。「体系的な知識」と「豊富な事例」が両方揃った本を読者のみなさんにお届けすることに本書はこだわり抜いた。事例だけだと学びが薄いし、知識だけだと具体性がなく実践的ではないからだ。

本書に掲載した事例は、インターネットに落ちている文献の寄せ集めではない。今回、YJキャピタルとEast Venturesの投資先を中心に、スタートアップコミュニティの中でも一目置かれている16社の起業家たちに独自インタビューを行った。上場経験組(ユーザベース梅田、フリークアウト[ヘイ]佐藤、BASE鶴岡、Gunosy福島、ラクスル松本、メルカリ山田・小泉)、M&A、エグジット組(エウレカ赤坂、コーチ・ユナイテッド有安、ペロリ中川、nanapi古川、Fablic堀井)、未上場・累計資金調達額30億円超(ミラティブ赤川、ヤプリ庵原、ココン倉富、dely堀江、ビジョナル[ビズリーチ]南)といった面々である(順不同・敬称略・現在は代表を退いている場合も含む)。

この本でしか語られていないエピソードはたくさんある。普通のインタビューでは教えてくれないことも、筆者の投資家という立場を悪用(?)して裏話を聞き出した。起業家は誰もが魅力的で、どのエピソードも学びにあふれている。膨大なインタビューからケーススタディを作り上げる大役は、琴坂研究会の井上大智さんが担ってくれた。

本書はただのケース集ではない。アイディアの見つけ方からチームビルディング、プロダクト作りやその検証方法、ユーザー獲得・グロース方法、そして資金調達まで、起業してからロケットスタートするまでに必要なアクションを、16社の起業家たちから共通項を可能な限り見つけ出し、体系的にまとめ上げた。

本書を手にとった起業家予備軍のみなさんには、ぜひとも起業への一歩を踏み出してほしい。

お待たせしました。
一緒に「スタートアップ」のリアルを覗きに行きましょう。

堀新一郎

目次
はじめに
第一章 │ アイディアを見つける
第二章 │ 最初の仲間を集める
第三章 │ プロダクトを作り、ユーザー検証する
第四章 │ ユーザーを獲得する
第五章 │ 資金を調達する
第六章 │ 起業するということ
巻末特典 │ 起業家への直接アンケート─491

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