この記事は九州大学医療管理・経営学専攻(MHA) 22期 Advent Calendar 2022 8日目の記事です
はじめまして。九大MHA22期の本田と申します. 私は現在、臨床現場で診療看護師(NP)として活動しながら大学院で学びを深めています. 今回、Advent Calendar 2022の機会をいただきましたので、2022年を「初心を振り返る」というタイトルで記録に残したいと思います.
*MHA(Master of Health Administration): 医療経営・管理学修士(専門職)
自己紹介
私は、長崎県で生まれ育ち、幼少期は長崎県の離島で暮らした経験を持ちます. 人懐っこい性格と看護師である母親の影響で看護師という仕事に興味を持ち、「生まれ育った長崎県の住民に貢献(離島と本土の架け橋となる)することを目標に看護師になりました. 5年間の看護師経験を経て、2014年に看護学修士 (MSN : Master of Science in Nursing)とNP資格(一般社団法人 日本NP教育大学院協議会の定める認定資格)を取得. その後の2年間(2014-2016年)は、急性期から慢性期、新生児から高齢者まで幅広い分野の医学知識を習得するため、初期臨床研修医の先生方と共に、救急科6ヶ月、総合診療科6ヶ月、小児科+新生児科NICU6ヶ月、形成外科1ヶ月ローテートをしました. 2016年に脳神経外科(脳卒中領域が主)に所属し、離島を含めた地域住民への貢献をビジョンとした臨床実践(離島患者の帰島支援など)を担ってきました. また、2018年には、離島医療の実情を肌で感じるために、長崎県の離島(高齢化率約40%)に移住し、内科・在宅ケア領域で経験しました. 現在は、再び長崎医療センター脳神経外科の復職し「離島と本土の架け橋」を目標とした実践を行いながら、日本NP学会副理事長として日本全国の診療看護師(NP)の活動推進に向けた国内外での活動に励んでいます.
九大MHAを志した動機①
「地元の医療を守るため」
私の愛する長崎県は、離島数全国第1位という背景から離島振興を県政の最重要課題として掲げています . 医療においても離島在住の人々が安心・安全な暮らしを継続できるような医療提供体制(救急航空医療搬送・遠隔画像コンサルトシステム・医師の派遣など)が古くから構築されてきました.
しかし近年、医療技術の進歩と医療ニーズの変化・複雑化により専門医の不足と偏在が起こり、さらに 「医師の働き方改革推進」「人口減少」などの医療周辺環境が変革期を迎える中で「脳神経外科医(専門医)の不足」や「離島の医療・介護に関わる人的医療資源の確保困難」「本土で治療を終えた高齢者や重症者が住み慣れた地域に帰ることができない」など喫緊の課題も生じています.
このように、特に離島の多い長崎県の人的医療資源は必ずしも充足した状況にはなく、限られた人材で質の高い医療を格差なく提供し、管理・維持していくことが困難な状況になっていました.
そんな現状を私はとても深刻に捉えており、家族の住む長崎県の離島を支える方法がないか悩み続ける日々でした. その対応策として、専門医の充足促進もさることながら、医師以外の人的医療資源を有効活用した、新たな医療提供体制を構築する必要があると考えたのです.
九大MHAを志した動機②
「新たな医療提供体制に必要な人材について考える」
諸外国では、医師不足等を背景に、最新医療へのアクセスと医療の質を担保するために「ナース・プラクティショナー(以下、NP)」という医療職種が数多く養成され、医師と協働する人的資源として有効活用されています. 欧米のNPは州によって異なりますが、開業権や処方権・診療報酬請求など広い裁量を持った看護師として役割を果たしています. NPによって提供される医療の質や患者満足度は医師と同等であるという研究報告もあり、限られた人的医療資源の活用・財政面における人件費削減・チーム医療推進という観点からも有用であり、諸外国と同等の役割や裁量権のある「NPの導入」を日本でも推進すべきであると考えています.
日本でも、2008年から日本版NP =「診療看護師(NP)」の養成が開始されており、現在670名の診療看護師(NP)がいます. 私もその一人です. 診療看護師(NP) に対する昨今の社会的ニーズは、医師の働き方改革の後押しも受けて高まってきていることを実感しますが、診療看護師(NP) を「新たな医療提供体制」の仕組みの中に浸透させていくためには、大前提として「日本のみならず諸外国の医療制度や医療政策、等の知識」を学ぶ(知っておくこと)とが必要です. さらにその存在価値を証明していくための多角的(疫学、医療財政学、医療経営学、医療経済学、等)なエビデンス構築力と視点と、それをどのように広めていくかといったマーケティングの知識も必要です.
その学びができると思い私は、九大MHAに進学を決めました!
九大MHAに入学して
「この9ヶ月間で、何が変わったのか(2022年 ver)」
前期では、外科学、内科学、分子医学概論、医療政策学、医療財政学、医療管理学、医療コミュニケーション学、医療統計学、医療行政学、医療経済学、社会保険労務論の単位を取得しました. 講義は、毎週火曜日終日と金曜日半日、さらに時々ある土日の集中講義が中心でした(オンライン中心).
1. タイムマネジメント力・タスク管理と処理力が向上した.
時間がなければ時間を作る. 人の2倍3倍の効率性で講義に挑む工夫.
仕事をしながら大学院の講義を受けることは容易ではないです. ですが、不可能ではないです. そのため、私は、職場に自身のビジョンを言葉でしっかり伝えながら相談することにるよって、大学院講義に参加できる時間を捻出することができました. 具体的には、日曜日に夜勤をし平日に休みをいただき講義に出席する時間を捻出し、さらに土日にある集中講義の時間は、家族にも多くの我慢をしてもらいました…
スケジュール管理は基本的にGoogleカレンダーを使用し、職場のスケジュール/タスクと大学院のスケジュール/タスクを整理し、かつAppleのメモ機能を使って科目一つ一つをプロジェクトと捉え管理し、PDCAサイクルに当てはめてプロジェクト推進/学習効果を高めました. さらに、自信の日々を評価(振り返る)ためにAtrackerを活用し楽しみながら乗り越えることができました.
2. 知識と「考察力」が圧倒的に増した.
外科学・内科学(心身医学・精神医学等)の治療法のみならず、その治療に関わる医療制度および社会制度上の問題点とその解決方法について考察する力が増した.
日本のみならず諸外国の医療制度・医療政策について歴史や制度の特徴から学び、それぞれのメリット/デメリットについても考察できる力が増した.
医療統計学・医療分析学、疫学の基礎知識と実践の基礎を学び、評価したいことに適した研究手法について考える力が養われた. 研究実践力の向上はこれから「ゼミ: Life Study」を中心にさらに学びを深める.
医療経営学、医療経済学、マーケティング、労務管理の基礎知識を学び、医療という市場の考え方や組織/人材マネジメントについて考察する力が増した.
3.素敵な先生方と一生大切にしたい素敵な仲間と出会えた, 幸福感と活力が増した.
職業や専門領域、目指すビジョンも異なる同期との出会いはかけがえのない貴重な機会となりました. 目指すビジョンは違えど「医療や医療を取り巻く環境をより良くしたいという情熱」は共通しており「仲間を大事にする協調性」「ユーモア」のある同期は本当に今の私の活力になっています. また、何より私たち学生の成長と活躍を願い、厳しくも優しく支援してくれる大学院の先生方、事務の○石さんに本当に感謝していまています. そんな貴重な時間もあと一年で終わると思うと、ちょっと寂しいですが交流できる時間を大事にしながら2023年も頑張りたいと思います.
4. 家族、職場、仕事の関係者の方々への感謝の思いがさらに増した.
平日や休日に新たな学びをすること、大学院に通うということは、私自身を支えてくれている家族や職場の人に負担をかけてしまうことにもなります. そのため、自分自身の努力だけでなく、支えてくれる家族や職場の方へどのように還元していくか、を常に考えるようになりました. 気持ちに余裕がない時こそ、家族や職場の方、仕事の関係者の方々に感謝の思いを伝えるようにしています.
そのような、気持ちの「ゆとり」が生まれたことは今年の大きな変化かもしれません.