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アリストテレスの四原因説
アリストテレスの話を何回か断続的にお話ししていきます。今回は四原因説についてお話しします。四原因の中でも、以前は「目的因は興味深い」と題して、目的因を取り出してお話ししていました。
四原因とは、質料因・形相因・作用因・目的因の四つから構成される諸原因のことです。
例えば家を例に四原因が何に該当するのかを考えてみます。
家の質料因は材木や板金、断熱材、内装のクロスなどなど、家を作るために必要な材料が相当します。
家の形相因は質料因となった材料を形作る枠組みのことです。個々の部品の図面や、内装のデザイン、もう少し抽象的な考え方をすれば、家の構成をどうするか打ち合わせすることも形相因も含まれるかもしれません。
家の作用因は、家を建てるために動いてくれる大工や左官、セメント屋、電気配線を行う業者、もう少し抽象的に考えれば、住宅ローンの融資を行う銀行など、家が具体的に実現するために働きかける要因のことを差します。
家の目的因は、なぜ家を建てるのか、その最終目的のことです。例えば、将来の家族構成を考えながら、二十年後の家族の姿を思い描きながら部屋の数を考えます。家族のビジョンが目的因で、部屋の間取りや数などは形相因に相当します。
四原因説で腑分けすることは他にも応用可能です。例えば会社の四原因を腑分けしてみましょう。
会社の質料因はオフィスやそのロケーション、はたまた仕入れたものや在庫商品・商材などが考えられます。
形相因は会社を会社たらしめている組織図、事業構造、はたまた供給業者を束ねるサプライチェーンまで広げることも可能でしょう。
作用因は従業員や外注業者の活動、また従業員を採用する求人活動、社内の業務執行、そして経営者の個々の場面に応じた決断などが挙げられます。
目的因は社是や企業理念、ミッションステートメントが最も抽象的なものが考えられます。
物事には基本的に原因があります。私たちが経験的に無意識になんとなく分かっているものの、言語化できていない暗黙知を分析するときに、この四原因による腑分けは役に立ちます。
子どもはしばしば「なんで?」の問いをもちかけますが、この4つに切り分けて説明すると回答もしやすくなるのではないかと思いますし、子どもの探求心を高めるのにも有効であると思います。
これで四原因説の基礎的な説明は終わります。次回以降では、もう一度目的因の話に戻り、その深いところをお話していきます。