【コラム】まふまふ「逮捕されたりもしない」は本当か? ツイートを解説してみる
・・・・・・間違ったことは言っていない。
でも、「言葉の意味がわからない」という声が知り合いから聞こえてくる。
たしかに、前提知識が無いと何を言っているのかサッパリだと思うので、分割して細かくわかりやすく解説してみよう。
■みけねこが“刑事告訴”した
裁判で訴えている相手とは、当然のことながら“みけねこ”のこと。まふまふは1月28日の公式サイトで、「現在もA子さんを相手に、誹謗中傷を訴え、民事裁判は進行しています」と書いている。裁判所、おそらく東京地裁で、損害賠償請求訴訟が進められているとみられる。
ただ、わかりにくいのが続きの部分。
前段の流れからすると民事訴訟を起こされているように勘違いしそうだが多分違う。続きで「告訴状がきたら警察は受理して捜査する義務がある」と書いていることからして、警察に刑事告訴されたことを言っている。
・・・・・・何のことかわからない人の方が多そうだ。
前提として、裁判には刑事裁判と民事裁判の2種類がある。
前者は殺人とか詐欺とか罪を犯した際のもので、裁判になれば「懲役●年」とか判決が出る。一部例外はあるが、たいていは警察が捜査して証拠を固め、検察が起訴して裁判に至る。(検察が起訴しないことを、不起訴という。そうなれば裁判にはならない。)
一方、民事裁判は個人(法人や自治体も可)が個人に対して起こすもの。「精神的苦痛を受けたから慰謝料払え」とか言って訴えるもので、基本的に誰でも起こせる。※原告適格とかややこしいものもあるけどね。
刑事告訴とはこのうち、刑事裁判に至らせようとする手続きの一つ。具体的には、警察に「私はこういう被害を受けたので、警察さん捜査してください!」と訴える告訴状を提出することを指す。これを受けたら、警察は捜査する義務が発生する。
みけねこはまふまふに対し、この手続きをとったのだろう。
■刑事告訴は基本的に全て受理する
あれ、警察動いてるのか?まふまふやばくない?と思ったかもしれない。
でも、この手続きがとられたところで、その時点ではとくに心配はいらない。
それを説明しているのが、
の部分。
・・・・・・実は、実際に罪に問えるかどうかはともかく、告訴状は全て受理しなければならないと「犯罪捜査規範」というものに定められている。あまりに事実無根であれば無理だが、よっぽどひどくない限りは受理される。
例として、津地方検察庁は今年3月、三重県に対して過大請求をしていたとして、詐欺の疑いをもたれた近畿日本ツーリスト支店幹部を不起訴(罪とならず)とした。
これも告発事件(告訴と似たようなもの)だが、地検は「関係各証拠を精査した結果、被疑事実が犯罪構成要件に該当しないものと判断した」と説明している。
犯罪に該当しなくとも、こうやって告訴・告発は出来てしまう。捜査をさせることは可能なのである。
だから、受理されたからと言って、たいしたことは無い。
■(多分)逮捕はされない
ただ、受理した以上、警察は捜査をする。そうなると、「え、警察が捜査をするってことは逮捕されちゃうじゃん」って心配する人もいるかもしれない。
だが、おそらく心配はいらない。
それを言っているのがこの部分だ。
警察の捜査の仕方には、任意捜査と強制捜査というものがある。任意捜査はその名の通り任意での捜査で、対象者は日常生活を送りながら、ときたま聴取を受けたりする。一方、強制捜査は逮捕で被疑者の身柄を警察署などに拘束して取り調べる。
このうち、捜査はなるべく任意捜査の方で行われるという原則が、刑事訴訟法で定められている。強制捜査は罪証隠滅、つまり証拠隠滅や逃亡の恐れがある時にだけ使うもので、基本的には任意が推奨されている。
・・・・・・まあ、実際の運用は、捜査指揮をする人間の裁量によるところも結構あるのだけれども。
とはいえ、まふまふの場合は、告訴されている罪名は「名誉毀損」「侮辱」「偽計業務妨害」あたりの軽いものだろう。この程度の罪名では、よっぽど悪質では無い限りは、逮捕はされない。ガーシーくらいやらかさない限りは。
今後も任意で捜査が行われ続けるだろう。
逮捕の心配は、よっぽどの事でも無い限りいらない。
そのうち捜査が終わり、検察へ捜査結果が送られる=「書類送検」されることになる。そして、検察が起訴、不起訴、略式起訴の判断を下すだろう。
余談だが、捜査が終われば基本的に必ず書類送検される。すなわち、「刑事告訴・告発は何でも受理≒誰でも書類送検」となる。だから、書類送検されたからといって、その人が悪いことをしたとは限らない。
まあ、既に書類送検されたらしいみけねこにも、同様のことが言えるが。
■情報開示=違法?
この部分の前段は主観なので、とくに解説はいらないと思う。後段のところだけ説明しておく。
「情報開示の裁判は簡単には通らない」という記述通り、掲示板の書き込みの開示請求に対して、いちいち発信者を開示されては匿名掲示板の意味は無い。
だから、開示されるには犯罪に該当しそうとか、一定のハードルが課せられている。
そして、それが「されたなら違法であるケースが多い」=裁判で相手の責任が認められる可能性が高いとまふまふは言っている。
いずれの文意もちょっと読み取りにくいが、そういうことだろう。
■「正しい」情報戦略
まふまふの言う通り、裁判は今後も長い時間をかけて続いていく。民事裁判はいくらでも引き延ばせるから、いつまで続くかわからない。
まふまふには今後も、適度な情報発信をしてほしいと思う。
おそらく多くは発信できない。そのたびに、みけねこ側からの新たな訴訟リスクを抱えることになるし、スポーツ紙での記事にもなってしまう。
リアルタイムで多く発信して得なことは、当事者にはあまりない。記事のネタを提供する必要も無い。だから政治家はノーコメントを多用するわけだ。
でも、ファンとして、行方は気にはなる。人生を懸けて応援している相手がどうなっているかは、気にならないと言えば嘘になる。それは心配の気持ちだ。
だから適度に、適切に情報発信をしてほしいと思う。
この言葉を、信じて待ちたい。