クリエイティブリーダーシップ特論I 第12回(9.27.2021)

【講義内容】
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダーシップコース

クリエイティブリーダーシップ特論I 第12回
2021年9月27日(月)

【登壇者情報】
株式会社fog 代表取締役/一般社団法人530 理事  大山 貴子さん

プロフィール:
米ボストンサフォーク大にて中南米でのゲリラ農村留学やウ ガンダの人道支援&平和構築に従事、卒業。ニューヨークに て新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経 て、2014年に帰国。日本における食の安全や環境面での取組 みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフー ドウェイストを考える各種企画やワークショップ開発を実施 後、株式会社fogを創設。循環型社会の実現をテーマにしたプ ロセス設計を食や行動分析、コレクティブインパクトを起こ すコミュニティ形成などから行う。
*参照: fog.co.jp

●違和感に気づき、行動することの大切さ

大山さんの現在におけるご活躍はWebを調べるとたくさん出てくるので、あえてここで書くよりも、既存の記事を読まれた方が伝わるので、ここでは大山さんという人の魅力について語りたいと思います。

まず大山さんのお話を伺っていて素晴らしいと感じたのは、「気づく力」と「行動する力」でした。

大山さんは高校時代に米テキサス州ダラスへ交換留学をします。そこでアジア人への人種差別を受けてしまいます。帰国後も留学時に受けた差別という違和感を受け流さず、「アメリカとはどういう国なのか?」という問いを持ち続け、大学は米国のSuffolk Unversityを選択し、社会学を専攻するのです。

そして大学ではウガンダでのフィールドリサーチや、エルサルバドルでの農村留学などの経験を経て、卒論は「ウガンダ紛争における帰還自動兵のPTSDについて」というテーマでまとめられています。

まずここまでの経験が、現在の大山さんを形成する大きな礎になっていると感じました。キャリアを切り拓くきっかけは、誰かの後押しや推薦なんかではなく、自ら気づき、自ら考え、自ら行動することにあると感じさせられます。

”日々の暮らしの中で起こる小さな違和感に気づけるか。そしてその違和感に好奇心を持てるか。その好奇心を行動に移せるか”
これって人生を面白くするための原理のような気がします。そして大山さんはこの原理に従って動いている方なのだと思います。それはとても魅力的なことです。

また、大山さんが大切にしているキーワードとして「目線」という言葉がありました。場に溶け込み、目線を合わせ、共に見ることを大切にしているとのこと。
例えば大学在学中にウガンダに訪れた際は、地元に暮らし、溶け込み、地元の言葉を覚えられたそうです。

私はこのお話を聞いて、とても面白いと思いました。「目線」とはいわば「ビジョン」なのだと思います。企業における「ビジョン」とは、得てしてトップが"掲げる"ものです。しかし大山さんは現場と目線を"合わせる"のです。アプローチは真逆ですが、結果として見える景色を共有するという点では同義だと感じました。

ここで見えてくるのは、大山さんはコレクティブ・インパクト的な視点を持った方なのだなということです。コレクティブ・インパクトとは、大きな社会的イシューに対して、出自の異なる多種多様なプレイヤーを巻き込みながら解決を目指していく活動です。
この場合、圧倒的なリーダーシップだけでは利害の異なる人たちを動かしきれません。むしろひとりひとりの価値観を知り、同じ目線に立って愛されることが重要になると考えられます。

もう一つ、大山さんの発言でハッとさせられることがありました。それはサステナブルに対する捉え方です。

例えば、一般論として割り箸=非エコというイメージがありますが、必ずしもそうとは限らないという事実です。日本の森林を健康的に維持するためには、定期的な間伐が必要で、切り倒された間伐材は適切に処理をしないともったいないのです。従って国産間伐材で作られた割り箸であれば、むしろ積極的に使った方がエコだったりします。

また別の例を挙げると、一部の海外サステナブル系ファッションブランドについて、これらは製造過程では確かに環境負荷の低い手法を取っているものの、それを日本に輸入している時点で大量のコストとエネルギーを使ってしまっているという視点です。確かにこういう本末転倒な事例は、身の回りのそこかしこにたくさんありそうです。

つまり「サステナブル」とか「エコロジー」という言葉を、単なるトレンドやマーケティングの手段として使うと、本質を見誤ってしまうということ。これもやはり冒頭で挙げたとおり、自ら違和感に気づき、自ら考えることで本当のゴールを見据えて判断するべきなのです。

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