「昔の音楽」至上主義おじさんの話
今回は、ドラムの話というより、音楽の聴き方、もう少し広く、文化の話と言ってもいいかもしれません。
昔の…と書きましたが、要はある程度の時点から、音楽の根本的趣味が変わっておらず、且つそれを絶対として人に勧めてしまうタイプの人種のことを指しています。
…そうですね、僕の事です。
特に音楽をアウトプットする活動をされている方は、こういう先輩(あるいは後輩?老い若いはあんまり関係ないですね)に出会ったことがあるのではないでしょうか。そして、この手の話を聞かされ、うんざりしたことのあるバンドマンやミュージシャンの方々も多くいらっしゃることでしょう。
僕は元々自分の親世代の音楽で育ってきましたから、そういった話を先輩方から聞いて、興味深くどんどん音楽史を遡って掘り下げていけました。
ところがそれと同時に、僕と同い年や年下の子達が白目を剥き、口から泡を吹いて聞いている(というか、聞いていない)光景もしばしば目にしてきました。
たしかに、興味をそそられないものの話は退屈極まりないですね。僕がもし音楽を「聴くだけ」の立場ならば、こう主張するでしょう。何を聴き、また何を聴かなくても勝手ではないか、と。
ところが、音楽を「やる」側に立つ方々には、僕は断固として昔の音楽を聴くことを勧めます。
音楽で人の心を掴みたいと考えている方、あるいは僕と同じ、または近い意見を持っている方、それをうまく伝えたいのにどう言えばいいかわからない方、ちょっとこの話を聞いていってください。
例え話です。
あなたは友達と、最近流行りの食べ物である
「チーズ坦々カレーうどん」
を食べに行きました。(そんな食べ物あんのか?)
そしてその友達はハマってしまったのか、何度か足を運び、温玉トッピングやら、パクチートッピングやらを試して、色んな食べ方をしたそうです。
そして友達は、
「オレもカレーうどん界に旋風を巻き起こしたい!」
と言い出し、カレーうどん屋を志し始めます。結構な事です。
ところが、この友達。
普通のベーシックなカレーうどんはおろか、カレーライスも、インドカレーも、うどんも食べたことがないというのです。
一応それくらいは知っといたら?と言っても、
「興味がない」
ということで食べる気がなさそうです。
この友達の商売、うまくいくと思いますか?
きっとルーツミュージックや、ある程度古い音楽を勧めてくる人たちは、こんな気分を抱いているハズだという話です。
つまり、言うまでもなく現代音楽は「チーズ坦々カレーうどん」です。
ハイブリッドのハイブリッドのハイブリッドなんです。
たしかに音楽ジャンル、などという区分けはグローバルに、自由に音楽を楽しむ上ではむしろ邪魔になりつつあります。演奏のルールにジャンルの定義を盛り込むのは堅苦しいとしてとっぱらわれ、そこに明確な区切りを設けることは野暮になっていると言ってもいいです。それ自体は否定しません。僕も、各ジャンルの定義をここでつらつら語りたいわけではありません。そこまではよく知りませんし。
ただ、混ざり合う前のもののほうが、シンプルに吸収できるのは間違いないはずです。これはこっちが出どころ、これはこっちということがわかれば、自分なりの音楽の交配が楽しめます。これは大きいです。
きっと、白黒の時代の音楽を知ってる人からすると、それを知らない人が作る音楽は、トッピングを変えてるくらいの小手先の変化に聴こえてしまっているのかもわかりませんね。
味変と創作料理は全然違うということです。
では本題です。
僕は冒頭で、遡って聴いた、と書きましたが、結論からいくとこれは大失敗でした。
「古い方から順に聴く」
これが僕の中では正解です。
そしてこれが今回一番勧めたい事柄です。
音楽の歴史の追体験です。
音も混ざりますが、思想も混ざるし、変わるし、時代や場所が反映されてそれが音楽にフィードバックされていく様を感じていくんです。まさに追体験です。この聴き方はめちゃくちゃ楽しいです。
具体的なことは書きません。好きなように調べたらいいと思います。
個人的には、僕はビートルズが大好きですが、1910年代くらいからビートルズ登場くらいまでが衝撃的で、いかに自分がチーズ坦々カレーうどんしか食べていなかったのかを思い知ることになりました。
例えば新しい音楽を作るんだといって前衛的な作り方で売れた音楽があったとしても、必ずこの話に共感してくれる人の手が加わってできているはずですし、知らず知らずのうちに混ざったものと混ざったものとを混ぜているのです。何を言っているかわからなくなってきました。
古い、新しいで良し悪しが決まるものではないですが、ジャンルや起源が明確だった時代の音楽は、アレンジやら演奏やらを考えるに当たって、めちゃめちゃ材料が整理された倉庫だと捉えることが出来ると思います。とにかくわかりやすいわけです。
聴くだけの方でも楽しめると思いますし、プレイする方にとっては、引き出しにインデックスがつけられるような感覚があると思います。
とにかくおすすめの聴き方の話でした。
どの分野にも当てはまる考え方じゃないでしょうか。