なんでもないようなことが

幸せだったと思う話ではありません。
なんでもないようなフレーズが一番難しいというお話です。

四拍目によくやる、「タタトン(スネア16分スネア16分タム8分)」というおかずがありますね。
ロックやポップスなら、一番最初に覚えるおかずだと言ってしまってもいいかもしれません。
中級者くらいになってくると、むしろダサく感じてしまって、あえて避けるようになったりするかもしれません。

しかし、メジャーな曲の中では結構よく出てきますよね。ルーディメンツとしては基本中の基本でも、このおかずですらカッコよく聴かせるドラマーかどうかというのは、いいドラマーかどうかの一つ大きなボーダーと言ってもいい気がします。

たくさんの曲の中から、この「基本中の基本」のおかずを堂々と入れるのに必要な要素を考えてみます。

僕は音楽を聴く時、勉強や材料として聴く場合は特に、「分解する」という聴き方をします。つまんねー聴き方だなと思う向きもあるでしょうが、どこかでやらなければならない聴き方なので、耳のモードの一つとして搭載しておくといいでしょう。

1.タイム感
簡単な方から考えていきます。
これはこのフレーズだけを聴けばわかることですが、まぁズレたりハシったりしていないかという基本的なことですね。曲によっては、疾走感が出ていたのにフィルになるとブレーキがかかってしまったり、逆にフィルだけハシっていたりといった、ノリにも気をつけなければいけないときもありますね。
2.ゴーストノート
ゴーストノートというのは譜面に書いてあったとしてもニュアンスがどうしても演奏者のさじ加減が大きいため、流れの中で自然で正確にできているはずなのにヤボったい、ダサい感じがする時は、ゴーストの入れすぎ、入れなすぎということも考えられますね。よくあるのは四拍目に入れるスネアの前に32分で2つとかでしょうか。これは譜面に書いてあるか……

3.ボリューム
これは、アクセントについての記事を書くときに詳しくやりますが、強弱の二種類だけでは大味で、少し弱いです。
誰よりも目立つ音量でやるか、少しアクセント気味にするか、それまでと同じ音量でやるか、むしろ小さくやるか、おかずだけでもこれくらいは扱いたいところです。

4.使う場所
これが一番難しく、かつ今回の主題に近いです。
一曲、またはワンステージの中でどうしても自分の演奏力の上限ギリギリの、というか持ち味を出そうとすると、そのポイントは、曲のピークのポイントに合わせがちです。
でも、意外とお膳立てされた上でソロっぽいフレーズを入れるの、やってても聴いてても気恥ずかしい時があるんですよね。笑

一つの案なんですが、これを逆転させ、一番ドラムを聴かせないところにさらっと一番複雑なフレーズを入れ、聴いている側にわざとそこを「流させ」ます。
その上で、いざここはドラムの担うべき瞬間!(ラスサビの前のブレイクなど)という時に、この「タタトン」
を使ってみます。
ここまでの流れをフリにして、というところで俯瞰的な目線も求められます。七並べなどで、手札が強くなくても、うまくカードを切る順番で上がってしまうという感じですね。

ドラマー目線ですけど、ここでこれをカッコよくキメられちゃうドラマーは、相当なもんだと思います。自信の表れって感じですよね。度胸も要りそうな気もしますが、とにかく難しいことをしなくてもコレで感情表現できるし問題ないよ、というドラマーとしての器の大きさを感じます。

深みを出すために必要な要素というよりは、深みのあるドラマーであれば無意識に入れている、ややマニアックな遊びと言えるかもしれません。

何曲か似たようなアプローチの曲になってしまったなーというときなど、こんなふうにどっしり構えられることも大事ですし、フレーズを弄くり回す前に、最低限のフィルで乗り切れちゃうドラムを研究してみるのも面白いかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!