【鑑賞ログ】「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―
箱根の岡田美術館を訪れた。
『「東海道五十三次」で旅気分 ―富士に琳派に若冲も―』を観るためである。以前、『広重ぶるう』というドラマを観てから、私は広重の虜なのだ。
事前に電子チケットを購入してあったので、受け付けで半券を受取った。
注意事項に、展示室内へスマートフォン・カメラの持ち込み禁止という項目があったため、入口のロッカーへ預けた。
持ち込み禁止って珍しいなと思いながら、1階の展示をさらりと見て回って気付いた。岡田美術館って広すぎる。広すぎるから監視の目が回りきらないのだろうと思った。
広重の展示は3階だと教えてもらっていたので、1階の展示室奥にあったエスベーターで3階へ。
朝早くから来ていたこともあり、ときどき他の客と出くわしたくらいで、ほとんど貸切状態で観ることができた。
この企画展のメインは歌川広重の『東海道五十三次』なので、日本橋から終点の三条大橋まで、何点かピックアップして、思うことを書いていこうと思う。
そもそも『東海道五十三次』とは何か、私もよく知らないので調べてみた。
東海道というのは、現在の東京と京都を太平洋沿いに結ぶ街道のことで、江戸時代には主に大名の参勤交代を目的として利用された。その東海道にある53の宿場と、始まりの日本橋、終わりの三条大橋を含めた、55枚の歌川広重による浮世絵のシリーズ作品が『東海道五十三次』なのだそうだ。
55枚もあるので、数点ピックアップして思うことを書いていこうと思う。
まずは、16の宿場、『蒲原(かんばら) 夜之雪』。
『蒲原 夜之雪』は『東海道五十三次』の中で最も売れた一枚だと、以前何かで知った。
しんしんと雪の降る夜中、人がすれ違う瞬間が描いかれている。すれ違ってから数歩歩いたところで、右側の後方の人だけがちらりと顔を覗かせている。すれ違った人に声をかけたのか。それとも右足が雪に持っていかれたから、足元を見ているだけなのか。どうしたんだろう。
蒲原は、現在の静岡県静岡市。富士川の河口に広がる温暖な地域で、滅多に雪は降らない土地なのだとか。
広重は実際に東海道を巡りながら『東海道五十三次』の図を完成させたそうなので、蒲原を訪れたとき、「ここに雪が積もったら、どんなに美しいだろう」と思ったのかな。
雪景繋がりで、次の1枚は『亀山 雪晴』。
『東海道五十三次』の中で、雪を描いているのは2枚だけ。
どうしてこの2枚を雪景に選んだのだろう。とても気になる。うーん、ちょっと、ありのまま描いても映えないなとか思ったのかな。
実際に東海道を巡りながら、自分でもやってみたいなぁ。
同じ景色を見て、自分がどういうふうに景色を切り取るのか知りたいし、広重はどうしてこの画角を選んだのか知りたい。
『亀山 雪晴』では、参勤交代の一行が、急斜面の山道を登る様子が描かれている。
空のグラデーションに赤が昇ろうとしているから、早朝なのだろうか。朝からご苦労様である。
亀山は、現在の三重県亀山市。この急斜面の先には、亀山城の京口(きょうくち)門が見えている。ちなみに、亀山は雪が降るそうだ。
とりあえず、今回はここまでにしようと思う。