Make Full Use of Your Dictionary – 辞書を使いこなそう
作家の開高健は「人間の全てが書かれている」と、旧約聖書を常に持ち歩き愛読していたそうです。氏の言葉を借りるなら、英和辞典には英語の全てが書かれているのです。そう言っても過言ではないくらい、英語についての情報を事細かに教えてくれます。
ところが、僕らのほとんどは、その一部しか使えていません。使い方を教わらなかったと言うのが、実際のところではないでしょうか。
ケンシロウ(北斗の拳)によれば「人間は自分の潜在能力の30%しか使うことができんが北斗神拳は残りの70%を使うことに極意がある」とのこと。辞書の使い方についても、概ね同じことが言えます。多くの人間は英和辞典の30%しか使うことができんが真の英語学習は残りの70%を使うことに極意がある…のです。
この記事は、そこまでを求めるものではありません。「少なくともこれくらいは活用してほしいな」という話をします。35%、40%、50%と、徐々に100%に近づいていくための、案内ガイドと思って読んでいいただけたら幸いです。
手引き
英和辞典の本編、つまり語義検索ページが始まる手前に、その辞書の使い方についての説明があります。手引きのページ数は、おそらく20前後ではないでしょうか。一度は必ず通読してみましょう。いざやってみれば、そんなに面倒ではないと思います。あらためて試してみたら、僕自身は30分ほどで読み終えました。
内容を完璧に暗記する必要はありません。辞書を使う際に必要に応じて「この記述は何だっけ」「どう読み取るんだっけ」と振り返れば済むことです。必要を感じるようになったら上出来です。
表現が堅いので構えてしまうと思いますが、できるだけリラックスして、ただの読み物と思って読み進めてください。英語の文法的理解を深める記述が見つかり、「へぇ!」と向学心をくすぐられることもあると思います。
英語学習で肝心なことの一つは、英語の理解を助けてくれるツールがどれだけあるかを知り、それらを実際に活用することです。英和辞典の手引きは、そのことを教えてくれます。
音節と発音
音節(syllable)とは、単語のリズムと考えてください。見出し語 “together” 中の「・」は、音がそこで区切られ、”to・geth・er” 、つまり「タン・タン・タン」と3拍で発音されることを示しています。音節は、品詞の種類によっては、文法的に大切な情報にもなります。
二つのスラッシュ( / )で囲まれているのが音声記号(phonetic symbols)です。どんな音で読むかを示しています。発音記号の読み方は、辞書中にも例が記述されていますが、紙面ではなかなかピンとこないと思います。慣れないうちは、人からちゃんと実際の音声で教わる必要があります。
発音を知り、声に出して読むことで、単語を覚える力が何倍もアップします。そしてもちろん、話し言葉としての英語を身につけるなら、発音は絶対に無視できませんよね。
語によっては、アメリカとイギリスの発音の違いなども示されていて面白いです。ちなみに、英和辞典のほとんどはアメリカ式発音を優先していますが、僕の講座ではイギリス式発音を中心に教えています。イギリスびいきなもんで。
品詞と語形変化
英単語にはそれぞれに役割があります。単語を暗記するだけでなく使いこなしたり文章全体を理解するに、各単語の意味や発音に加えて「役割」を理解しておくことが大切です。品詞(the parts of speech)とは、単語の役割のことです。
上の例では、まず赤字で示された「動」が、”help” が動詞であることを示しています。その下の「他」は、”help” が他動詞である場合の小見出しとして記されています。
品詞(例では「動」)のあとに続く( )内には、語形変化(inflection)が示されています。英単語は、様々な条件によって、その形が変化します。名詞なら複数形、動詞なら三人称単数形と過去形・過去分詞・現在分詞、形容詞なら比較級と最上級などです。ここでは変化についての文法的な解説はしませんが、文章を作る上でとても大切な、あなたの習熟度が上がっていくにつれて重要性が増していく情報なので、しっかり押さえておきましょう。
語義・付加情報・コアイメージ
語義、つまり単語の意味は誰もが必ず見る重要な部分ですが、ここをこなせていない恐れがあります。焦らずちょっと立ち止まってください。
文脈に沿って適切な語義を拾う
多くの英単語は複数の語義を持っています。単語について調べるときは、辞書だけを見るのではなく、その単語が現れた文章と照らし合わせて、どの語義がぴったりと当てはまるのかを判断しましょう。
付加情報も見る
上の写真の例で言うなら「生存する」という語義だけを見るのではなく、その前後にある情報にも注意を払いましょう。
序数(1.2.3…)のあとに記された “S” “D” などのアルファベットは、その単語の文法的な性質(grammatical features)を表しています。それぞれがどんな性質を表しているかについては、辞書の手引きを参照してください。
その後に続く [SV(M)] は、その単語がどんな基本文型で用いられるかを示しています。次の項でお話しする例文を理解し、自分も文章を作ってみる上で、見逃せない情報です。
語義の箇所に同義語や対義語が示されている場合もたくさんあります。同じ意味、あるいは逆の意味を持つ単語や表現ですね。上の例では “be alive” や “be dead” のことです。これも活用すれば、語彙力がグングン向上していきます。
上の写真の3を見ると「Mは場所を表す副詞(句)で、省略できない」とあります。このように、重要単語の多くには用法(使い方の注意点)も示されています。この記述にも目を通すようにすれば、わざわざ別な参考書を開かなくても、辞書だけで片付くことが少なくありません。
コアイメージをとらえる
必ず「1」の語義(definition)も押さえておいてください。いくつもの語義は、その単語のコアイメージに近い順番に並べられています。コアイメージは「単語の中核的な意味」です。もっと噛み砕いて言うなら、状況や文脈しだいで訳語(日本語)が変わっても、それに左右されることのない単語の本質的な意味のことです。上の例では、「1生存する、2生きながらえる、3住む」と3つの異なる語義が示されていますが、英語本来のイメージでは、「生きながらえる」ことも「住む」ことも「生存する」ことに他ならないのです。このように、コアイメージをとらえることで、単語が伝える情報を深く理解し、広く応用できるようになります。
例文・フレーズ例
単語を覚え、使いこなせるようになるには、その単語がどんな場面で、どんな文章の中で、どんな風に使われているかを見るのが大切です。辞書は例文や頻繁に用いられるフレーズ例などでちゃんとそれを示してくれます。単語と語義をリストのように並べるだけでなく、単語に命を与吹き込み、生きた言葉にしてくれています。
せっかく生きた言葉が目の前にあるのです。ぜひ見てください。ぜひ声に出して読んでください。時間が許すなら、それを参考に簡単な作文をしてみてください。そしてやはり、声に出して読んでみてください。それを繰り返していくことで、その単語はあなたの血肉となり、あなたの中で生き続けていけるようになります。
〈僕のおすすめ辞書〉
焦らずじっくり辞書を使いこなす。それだけで学習の成果は飛躍的に向上します。時間がかかるようで、実はとても効率的です。
何度でも言いますが、英語学習に特効薬も魔法もありません。ぜひ王道を歩いてください。僕は王道を照らし、水先案内をします。それが一番の近道だからです。
それでは、I wish you happy learning!
Your support in any shape or form counts!