指令
"己の真のパワーを隠して生きる苦痛を強いられる"
人という名のつく前の、人間というカテゴリを作って安心する前の
ホモ・サピエンスという檻に入れられる前の
惑星の生命の絆のひと群れ
凍りついた大気をレンズに満天の星が輝く
そして深い闇の指令がささやきかける
カンブリアの海の太古に生きた生物が化石という棺桶から見つかる
人はため息とともに彼らを愛でる
人類は数百万年も進化した肉体を持つ哺乳類かつ霊長類
複雑な頭脳、複雑な感性
完璧なまでの創造種は神に近すぎると
絶滅した奇妙な醜い海の生き物たちよ
お前達の霊魂とも呼べるものはどこに行った
繁栄を謳歌した時間は
知的生命体とは程遠かったおそろしく長く怠慢の時間
訴えるがいい
一度も死んだことなど無いのだと
煮えたぎる海をかいくぐり、何度でも地に満ち、地表深く眠り、繭を作り、
目覚めの大気が満ちた時
無数の昆虫種は復活した
その絶対知性の裏づけの複眼に
絶え間なく流れる指令が映る
いまだ限界の中でもがく人類種が
いつか到達して知るべき宇宙座標
変化は死という「さなぎ」をまとうと
闇は光の生まれる生命のみなもと
絶滅も死もない無限よりまたたく指令を、人は受信する器官を傲慢ゆえに
眠らせておく
知的生命体には届かない指令が
今日も地球を通り過ぎていく
#現代詩 #生成流転 #カンブリア大爆発 #不死