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タバコのあれこれ

 タバコと聞いて、思い出すのは冬景色。
大学2年生のころ、友だちとワゴン車に乗って草津温泉へ旅行に行った。10人の大所帯での楽しい一泊二日だった。帰りは大雪になるとのことで、午前のうちに草津を出発するも、雪はどんどん降り積もり、高速は通行止めに。東京に戻るまで、下道10時間の長旅になった。下道をゆっくり車は進む。ゆっくりなのは、渋滞のせいだけでなく、夜になって凍った道路がつるつる滑り、スピードが出せないからだ。途中、休憩もかねてコンビニに寄る。外に出ると、冷気が当たってすぐに顔が赤くなる。温かい飲み物とおやつを買って店内を出ると、雪を頭に積もらせた喫煙組の姿が見えた。こんなに寒い中そこまでしてタバコを吸いたいのか。あきれつつ、車内ではタバコを吸うのを我慢してくれているマナーのある友だちに感謝した。寒がりの私でも、タバコのためになら雪の中、外で一服なんてことができるようになるのだろうか。

最近自転車で出勤しているのだが、朝駅前を通ると喫煙所で厚手のコートを着て、白い煙を吐き出している集団を目にする。角地にあるタバコ屋の自動販売機の前にずらっと。正直、喫煙所と呼べるような立派なものではない。
そもそも、あそこは喫煙所なのだろうか。灰皿があったようななかったような。今まで何度も通っている場所なのに、タバコの煙を吸わないように足早に通り過ぎるのでよく見たことがなく思い出せない。朝の冷え込む時間、日の当たらない屋根の下で、仕事に行く前なのかなんなのか、肩を寄せ合ってタバコを吸っている。電車に乗るまでの、会社に行くまでの貴重な時間をタバコに捧げている。私は朝少し早く起きて、出勤前に本を読むのが幸せな時間。もちろん、暖房の効いた部屋の布団の中で。

私も、本が外でしか読めなかったら、寒さを堪えて読書をしようと思えるのかしら。好きなもののためになら我慢できるのかもしれないけれど、私は寒さには勝てない気がする。

草津旅行に話は戻るのだけれど、最後まで車を運転してくれた男友だちは、10時間の足場の悪い状況での運転にも関わらず、一言も文句をいうことなく快く運転を引き受けてくれた。
疲れや途方もない道のりに、少しぐらいいらだつこともあっただろうに、オレンジレンジの替え歌を全力で歌い、誰よりも車内を盛り上げてくれた。今でも、思わぬハプニングのあった草津旅行を楽しい思い出として笑って話せるのは彼のおかげだと思っている。

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