よしもとばなな「みずうみ」、シーンと溢れる
よしもとばななの書く恋愛って、甘くて、本人たちは十分幸せでラブラブで、だけど他人から見たら陳腐に見えるような話にならない。
本の中で恋愛している女の人は、相手に対して説明できないどうしようもない愛情も持ちつつ、相手のことを人間として冷静に見ている。
甘ったるい部分をその冷静さで少し冷やしてくれるから、人間としてのその人の素晴らしさがより引き立って、私も彼のことが好きになる。
恋愛って表現したけど、きっと恋愛とかじゃなくて、2人にしかない特別な関係なんだと思う。人と人とのそこにしかない繋がり。読んでるとそんな感じがする。そんなところも好き。
そして、大抵の場合、彼が抱えている何かちょっとひやっとするようなところもしっかり描く。
彼に対する、甘さと愛おしさ、冷静な観察眼が絶妙なバランスなんだろうな。
女の人が客観的に自分の感情を捉える姿と、でも抑えきれなくて溢れてくる愛情が真っ直ぐそのまま描写されている。
真っ直ぐそのまま描くって本当はとっても難しいことなのに。
好きとか、いい人とかいくらでもある表面に漂う言葉をかき分けて、深く自分の心に潜って、掴みきれないけどぎりぎり息の続く範囲で掴めた言葉を書き起こす。
そして、そんなことを丁寧に積み重ねているからこそ、よしもとばななの「好き」という言葉がより生きる。
私も必死に潜って潜って、言葉がこぼれないように書き留めてみた。
よしもとばななさんのおかげで、自分の心の奥にあるものに耳を傾けて、捕まえて言葉にしたい、と思えるようになった。
言葉選びに苦戦しながらも、私も丁寧に積み重ねていけば、私らしい文章を書くことができるのかもしれない。
今のところ、書けば書くほどこれじゃないなってなったり、薄っぺらくて嫌になったりするけどね。
よしもとばななさんの作品にある、私の考える余地がある、余白があるところが好きなのに、ぎゅぎゅっと詰め込み過ぎてしまった....
よしもとばななさん、いつか会ってみたいな。