「僕の心のヤバイやつ」は僕の心をヤバくする
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ、とニーチェが言ったか言わなかったかは知らないが、マンガ「僕の心のヤバイやつ」を読むとき、僕の心はヤバくなる。
最近3巻が発売され、それを読んでもう立ったり座ったりしている。
「僕の心のヤバイやつ」の内容を簡単に説明すると、中学校内カーストの頂点でモデル業をやっている美少女・山田と、中二病の陰キャ・市川の恋愛模様をコメディタッチで描いている作品である。
市川と山田。性格も全く違うこの二人、最初は同じクラスというだけで関わり合いも少なかったが、山田が市川のテリトリーである図書室に来るようになったことと、天然ボケな部分がある山田を市川がフォローするように動いたことから、二人の距離は縮んでいく。
1巻から2巻にかけて徐々に仲良くなっていき、2巻の終わりまでには、読者にとっては明らかに相思相愛の関係になる。あくまで読者にとっては、だが。
告白するような、直接の行動を二人はしない。少なくとも今はまだ。
しかし、好意と「好きだ」と発する声の間には、これだけ甘酸っぱいやりとりが生まれるものかと、僕は愕然とする。
まさか、感情にイチゴ味があったとはな・・・・・・。
そう呟いて、静かに血反吐を吐いて倒れる。そのくらいの甘酸っぱさだ。
「はよ付き合えよ!」と思うような、「いやでも待ってくれこの時間を少しでも長く続けてくれ・・・・・・」と思うような、穏やかな夢に抱かれた気分を味わえる、極上のやりとりが、話数を重ねるごとにパワーアップして繰り出される。
この二人が距離の縮めていくのを、ずっと見ていたくなっている自分に気づく。
これほど応援したくなったカップルは初めてだ。
すれ違いがある。勘違いがある。ほんの短いひと時、距離が離れる時もある。でもそれはほんのスパイス。あっという間に甘々展開だ。でもそれでいい。この二人が傷つくところは見たくない。
なんだろう、父性であり、母性であり、ファン意識であり、保護欲であり、愛であり、慈しみであり、まったりとしてコクがありながらもいくらでも飲めてしまうこの感じ・・・・・・。
そうか、これが“推し”ということなのか? “尊い”ということなのか!?
何か、初めての感情に目覚めた。感情を“開発”された。
ただ大切というだけでは説明できない、この二人を温かく見守りたい、できれば生涯をずっと見つめていたい・・・・・・。
あれ、もしかして気持ち悪い奴かコレ?
正直「推し」なる存在に関して熱く語る方々に冷ややかな目線を送るときもありましたが、なるほどな、皆さんが感じていたのは、こういうことだったのか・・・・・・。まったくの同じものかはわかりませんが、ようやく少し、理解できたかもしれません。
いま自分が何を書いているかよくわからなくなってきたのでこれまでにしますが、とにかく続きが楽しみな作品です、はい。
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