古着屋の憂鬱
高尚な古着屋に初めて入る時。あれってすごい憂鬱だ。下北沢とか原宿とかにあるような人がたくさん出入りしてて常に賑わっているような古着屋じゃなくて、学芸大学とか代々木八幡とか、そういうところで一人で細々とやっているような、そういうところ。雑誌とか口コミとかインスタとかで気になっていたところのお店の近くにたまたまいる時、ああそう言えば気になってた古着屋さんあったな〜ぐらいのテンションでちょっと立ち寄ってみる時があるんだけど、そういう時はまず一旦その店の前を通り過ぎることが多い。通り過ぎざまに一旦その店の店員さんの雰囲気をまず見る。大体そういう店って全然お客さんがいなくて客層が掴みづらいから店員さんの雰囲気で確認してみるんだよね。通り過ぎてみて、でもやっぱり可愛いな、気になるな、よし入ってみようの二段階でついにその足を踏み入れる。
お店のドアを開けると大体おしゃれ可愛いお姉さんがこんにちはって言ってくれる。これは完全に偏った見方かもしれないけどこういうお店ではいらっしゃいませじゃなくてこんにちは率が高い気がする。「こんにちは」の挨拶って、全く知らない人となかなか初対面ですることってこの時代ない気がするからなんだか温かい気持ちになる。そんなほっこりしているのも束の間、店員だかオーナーだかとりあえずそのお店の人の友人が来店したときと来たら、それはもう憂鬱だ。「えー久しぶり!来てくれたの!!嬉しい!!」なーんて会話が繰り広げられて私の存在は一気に空気と化す。さっきまで確かにお客さんとしての地位があったはずなのにもうそこに私はいない。後で見たいなーと思っていたラックの前で彼女たちの話が盛り上がってしまえばその間に割り込んで悠長に服を見るなんてことはできず、あたかもちょっと私の好みのものはなかったかなーなんて雰囲気を出して店を出るしかない。
さらにいうなら、こういう古着屋さんに入る時、心なしか頭からつま先まで見られているような気がする。この人はどれくらいのおしゃれさんなのだろうかと審査されているような気持ちになる。そんなにたいしたものは着ていないしスタイルも良くないんだからそんなに見ないでくれ!といかにもこういう店はいつも来るんです慣れていますよ風に装っている裏で思っている。
でも結局そんなのは全部私の妄想なわけで、勝手にあれこれ考えてしまってるだけなんだよな。その店に見合うほどの女になれてる自覚があったらそんなふうに思わないんだろうな。すごいダサいだけなんだよな。でもさ、やっぱりそういう店に初めて入る時ってさ、すごい憂鬱だよ。
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