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杞憂

エニカという、DeNAが運営するサービスが終了するニュースに触れた。

最近、車を買って当サービスの利用を検討していたため、まさに青天の霹靂である。

担当者は「サービス開始当初に想定した規模には遠く及ばず、総合的に判断してサービス終了に至った」とした。

と記載がある。

累計91万人の利用実績があったとのことだが、収益が思うようにあがっていなかったという点が気になった。

政府によると、日本国内における直近の国民の総車両所有数は7800万台。

うち、事業用の車両を除いた乗用車は6200万台。

単純計算で、国民の2人に1人は車を保有していることになる。

仮に全員が車を月に一度カーシェアとして貸し出したとすると、TAMを算出できる。

貸出平均価格を1万円とすると、総流通金額は6兆2000億円。

うち、サービス提供者の手数料を5%と見積もると、310億。

概算だが、TAMは310億/月となる。

営業利益を少なく見積もって2割としても、毎月60億円近い利益が見込める。


だが、サービス終了の理由に立ち返ってみたい。

「サービス開始当初に想定した規模には遠く及ばず、総合的に判断してサービス終了に至った」

ここが肝要。

恐らく、田舎などにおいて、クルマの所有の目的が日常生活においての移動手段として必要不可欠なものであるからするに、田舎でのサービスの親和性はそこまで高くないはずだ。

(リゾート地など、観光地の需要はありそうなのだが…。)

レンタカー屋さんとは違い、貸し出したいと考えるユーザーの数が、在庫の数に直結するため、貸し出すことによるインセンティブが、貸し出し側のユーザーに上手く刺さらないと在庫が増えず、借りる側も増えないという力学が働いている可能性がある。

田舎だと、駐車場などの維持費があまりかからないため、人に貸し出して、維持費をケアしたいというユーザー心理が上手く醸成されなかったのだろう。

若干精度を上げたTAMの算出にあたっては、少し極端かもしれないが、シェアリングとの親和性が高いと考えられる、東京の車の所有率で改めて算出してみたい。

東京都の所有台数は383万台。
うち、乗用車は162万台。

リンク
https://tokyo-ap.net/?page_id=114#:~:text=東京都の自動車保有,万台となった%E3%80%82

(裏を返せば、東京都は2台に1台が事業用車両ということになる)

貸出平均価格を1万円とすると、月間の総流通金額は162億円。

同様に、サービス提供者の手数料を総流通金額の5%と見積もると、3.2億/月。

営業利益を少なく見積もって2割とすると、毎月の利益は6400万円。

たしかに、DeNAの企業規模を考えると、小さな事業かもしれない。

しかも、これは東京都の乗用車を全部貸し出した場合の数値。

サービスが新しいため、イノベーター理論上のラガード層とレイトマジョリティ層を除外すると仮定すると、多く見積もっても6割ほどの利用に留まる。

毎月の利益でいくと、約3000万円ということが予想される。

たしかに、あまり収益性は高くないんだろう。

数字ばかり見てきたが、車を見ず知らずの人に貸すことに抵抗があるといった、ソフト面の要因もいくつか想定される。

ごちゃごちゃ書いてきたが、便利なサービスなのは間違いないから、事業譲渡でも良いので、他社が継続してくれたら良いのに。

似たような競合サービスがないかと思って調べてみたら、なんと他のサービスも軒並み撤退済だった。

車をシェアするっていう概念は、日本では根付かないのかな。

ユーザー側というより、貸し出す側のインセンティブがより強く効かないと浸透しない気がする。

残クレとか、ローン会社と提携してサービスやったら上手く行くかもなと思った。
高級車でも維持費抑えてお得に乗れます的なね。


追伸

経営者の端くれの独り言。

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